「漂流伝説クリスタニア」著:水野良 出版社:メディアワークス
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いよいよ進軍を開始した数万のベルディア軍、獣の牙はこの土壇場に来てレイルズの采配によりその真の力を発揮します。
今回は前夜ということで、本格的な戦闘には入りませんけどね。
レイルズは獣の牙初の軍師とばかりに短い間に出来る限りの準備をこなしていきます。
オルゲンスなんてレイルズに全権を委ねたようなもんです。
レイルズが何か言う前に先手を取って「とにかく、承認してやるぞ」だし(笑)
本当にこの二人の会話は面白い、一種異様な漫才の雰囲気すら醸し出しています。
レイルズは獣の牙の存在をベルディアと戦う為の象徴のように捉えています。
実際、各部族がもっと連合関係を深めて戦わないとベルディアに武力で勝つのは難しい。
現在のベルディアを構成しているのは暗黒の民と妖魔と猛虎の民に加え、屈服した双面の民、沈黙の民、悟りの民なんですから。
単一の部族がチマチマ戦ってたら勝てるものも勝てない、そうして本来揃うはずの戦力が削られていくだけです。
この獣の牙の存在意義がもっと広く認知されないと防戦一方、まして向こうには神王がいるし。
レイルズは脆弱ながらも獣の牙の組織化を進めました。
これまでバラバラだった傭兵たちを20の部隊に分けしました。
11人の百人隊長+9人の戦士の計20名が隊長でそれぞれ50名ほど部下がいます。
もちろんそれぞれの傭兵の能力も生かしています、孤高の民は弓兵兼見張り、銀狼の民は機動力の高さから遊撃隊です。
ちなみに腕に巻いた布で所属部隊の識別が出来るらしい、それぞれ色が違うらしいけど私なら黒希望です(笑)
他にも色々あるんでしょうが、この短期間でよくもまぁここまでやったものです。
親父さん(ラッセル)も知略に長けているといいますし血は争えない、やはりファザコン恐るべし(笑)
ダナーンを旅立って早一年、大白鳥の兄弟と呼ばれるレイルズは益々砦で株を上げています。
バッソーやシャイロン達も幸か不幸か雑用から戦士に格上げされたらしい、勿論危険を伴うんですけどね。
あとレイルズとマリス、そしてサイアはその関係がハッキリしてきましたね。
レイルズとマリスはほとんど恋人ですよ、シレーネから帰ってきたマリスを高い高いするし(笑)
他人は入れないフィールドが出来ていましたよ、それはもうイチャライチャラと。
そしてサイアはレイルズとマリスの仲を認めてしまうらしい。
完全に身を引くつもりなんですね、確かにヒロインの座は完全に奪われてはいますけど・・・・・。
随分と大人しいですが、ガーシュンからナーセルの事を聞いたときの押しの強さは凄いものがあった。
その勢いをレイルズに向ければ大分状況は変わってたと思う(苦笑)
今回はバッソーの働きが目に付きました、流石は盗賊って感じです。
砦に潜入していたディラントの密偵を見つけ、グレイルの密偵を葬るというスカウトならではの仕事でした。
必殺・仕事人バッソー、初めてスカウトらしいことをした気がする(笑)
このクリスタニアではスカウトの技術は生かしにくいですからねぇ、街や団体あってこそのスカウト家業だし。
あと賭け試合も注目です、それも20人の隊長全員参加のトーナメントです。
賭けの胴元にはやはりバッソー、スカウトというのは手練のギャンブラーでもあるんですね(苦笑)
確かに神獣の民って博打には疎そうだし、ある意味博打は文化ですから受けがいいでしょう。
その賭け試合でレイルズはついにターニルに勝利しました。
まぁ疲労が祟って次の対戦であっさり負けちゃうんですけどね。
下馬評によれば、一番人気はターニルで二番はレイルズ、三番はガーシュンだったらしい。
そしてそのガーシュンが優勝です、トーナメントでは組み合わせも実力の内ですから。
それにしても孤高の民のビーストマスターは敵の動きを知るにはうってつけですね。
軍の動きを知るのに遠見の水晶球とかを使うのは見たことありますが、クリスタニアにはタレントがある。
こういう風に各部族のタレントをフルに使えるのが本来の獣の牙の有効性です。
恐らくは4レベルの"クレアボヤンス"を使ってたんですね。
このタレントは瞑想により自分が見たことのある場所を見る事が出来ます。
天からの視点が遮られる場所、つまりは屋内は見えませんけどね。
大体砦から2〜3日の場所を見ていようですが、術者がその場所に行った事があるのなら問題ないです。
いよいよ迫る決戦の時、次はいよいよ戦争です。
そうそう、なんか機を逸した気もしますが冒頭にチラっと書かれていたのでここで触れておきましょう、
新しき民がロードスから脱出してきた経緯を。
灰色の魔女や破壊の女神の教団に打ち勝ち、"解放された島"と呼ばれるようになったロードスはおよそ100年は平和でした。
しかし、さる国の皇太子が侵略戦争を始めたのを機にロードスは戦国時代を迎えたのです。
パーンやカシュー陛下達が必死で掴んだ平和を踏み躙るとは、長い平和はその価値を忘れさせるものですね。
その時とある国は滅びてしまいましたが、第二王女のみ千人ばかりの人々と共にロードスを脱出したのです。
彼らは「神王伝説」にある暗黒の民同様に漂流を経てクリスタニアに辿り着きました。
最も王女達を導いたのは一羽の白鳥でしたけどね、バルバスみたいに肉体を要求されたりはしてません。
その経緯がこの「漂流伝説」の1巻の冒頭に書かれています。
その第二王女の子孫がレードンやハーヴェン、そして今マリードに幽閉されているジェシス王女ですね。
ちなみにその王女は建国女帝ミュート一世として知られています、決して精霊魔法ではない(笑)
王女は当時明らかにフーズィーに導かれていました、ではフーズィーと新しき民はそれ以外縁が無いかといえばそうでもない。
王族にはクリスタニア共通語が伝わってますし、少なからず王族とは接触があったと思います。
ワールドガイドの記述によれば王族はフーズィーの従者であるとなってますし。
一つ確かなのは、新しき民はフーズィーが認めた民だということです。
ファンとして気になるのは余計な事をやらかしたさる国が何処で、新しき民の祖先であるとある国が何処なのかということです。
100年平和だったというのだから、新ロードスの状態から国の興亡があったとは考えにくい。
アラニア王ロベスなんて何をやらかすか怪しいものでしたが、どうやら表面上大人しくしてたらしいですね。
ただ統一戦争を起こすからにはそれなりの強国であったと思いますよ、アラニア級の。
滅びた国は本当に何処なんだろう、竜の名を冠していないようなモスの小国だったとかいうオチかもしれませんけど。
その滅びた国によってレードンの祖先を予想できるんですけどね、レオナーとかレドリックとかいう風に。
まぁ王族には色々あるでしょうから、知っている人物とは直接血縁は無い可能性もあるんですけど。
もう一つ気になるのは、結局ロードスはどうなったのかということです。
多分とある国以外にも滅びた国はあるでしょうし、もしかしたら興った国もあるかもしれません。
統一にまで至ったとは思えないんですよ、根拠はありませんが。
まぁ下手に平和が続くとまた終末が来ちゃうんですけどね、統一にしろ連合にしろ定常が終末を呼びます。
案外戦の発端となった国の皇太子もそのことに気づいたから戦を仕掛けたのかもしれませんよ、ファラリスみたいに。
小説では野心に駆られて戦を仕掛けたとなっていますが、事実が必ずしもそうとは限りません、ファラリスの例もあるし。
カーラのサークレットはレイリアさんが"コール・ゴッド"で解除する予定なので、カーラの仕業ではないはずです。
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3巻のメインイベント、獣の牙VSベルディア軍の始まりです。
砦を死守し、時に守り時に打って出る獣の牙の傭兵達はベルディア軍に予想以上の打撃を与えます。
今回はレイルズの采配が悉く決まるのが面白い、主人公が大軍を動かすという点は他のフォーセリア作品にも無いと思う。
確かにロードスやSWでも大規模な戦争はありましたが、大抵は割愛されて遊軍の様に行動している主人公メインですし。
あえて言うなら、今回のレイルズは「ロードス島伝説」で勇者隊を率いていた頃のナシェルに近いかな。
とはいえ軍勢を手足の如く動かしながらも、自らも前線に立つ様子は「銀河戦国郡雄伝ライ」に近い(笑)
"栄光の勇者"というより戦国武将みたいでしたしね、乱戦の最中敵の大将と一騎打ちしたり。
こちらは千ほどで敵は数万、本当によくふんばりましたよ。
神王やベルディア軍としては、こんな砦は鎧袖一触で吹っ飛ばしてとっととシレーネを落したいんでしょうね。
そしてシレーネに神王の奇跡を使い、会合の時を前に"周期の神獣王"フェネスと銀狼の部族を屈服させたいんでしょう。
会合については4巻のメインイベントなのでこの場では割愛、レイルズ達の冒険の終わりでもありますし。
仲間達もそれぞれ全力でレイルズに協力してました、ターニルなんて前回までとはキャラが違う(笑)
あんなにも虚無的だったターニルがレイルズと出会った事で目的(打倒神王)の為に戦う事に目覚めたし。
サイアとビーンも敵軍に"ライトニング"を撃ち込むとか、片っ端から"ホールド"を仕掛けるとか必死に頑張ってるんだな、と。
マリスも今こそ4桁の回復力を最大限に使う時ですね、こういう時でないとフルに使えないでしょう。
砦の傭兵達のレイルズに対する信頼が凄い強固になっていて、それが一番嬉しいかもしれない。
勿論レイルズの活躍が一番目立ちましたけどね、重要な所は全部掻っ攫っていった感じ。
予め橋に切込みを入れておいて敵を分断した所でレイルズ率いる突撃部隊が一掃。
更には追い討ちとばかりに少ない数で夜襲を仕掛けてやっぱりレイルズ率いる部隊が大奮闘。
グレイルにズンバラリンされてた頃のへたれっぷりが嘘のようです、まるで主人公みたい(主人公だよ―笑)
あんなにも落ち着きのなかったレイルズが敵の挑発にも乗らず悠然と構える芝居を見せたりと、この1年の成長は目覚しい限り。
レイルズ「伝説に謳われる砂漠の傭兵王も、意外に芝居上手だったのかもしれない」
カシュー陛下は・・・・・・どうだろう、あの人は基本的に芝居はあんまり上手くないと思いますよ(苦笑)
まぁパーンとかに比べれば遥かに腹芸は達者でしょうが、結構激情家だし好んでやる事はないと思う。
レイルズは2人もの強者を負かしましてね、それがファザコン・パワー無しでの勝利でカッコよかったです。
一人はあの"剣の牙の公爵"ことグレイルですよ、3度目の戦いもレイルズの勝利でした、これでレイルズは2勝1敗ですね。
レイルズは右目に続いて左腕一本斬り落としちゃいましたよ。
もう一人は若長バディオという男で、なかなかの使い手でしたが普通にレイルズの勝利、強いですねレイルズ(笑)
集団戦闘において敵のボスを倒すのは大きい、ましてレイルズはこっちの指揮官だから味方の士気もウナギ上がりです。
でもグレイルはまだ生きてるんですよね、再戦が待ってますよ。
いっそ"ストライブ"とか使っててくれたらこの場で決着を付けられたんですけどね。
このタレントを使っている間は攻撃技能に+20の修正が入る代わりに逃げ隠れが出来なくなりますからね。
"リーブ"でシュワポンと逃げる事も出来ません、復讐しか頭に無いとは言ってもそれぐらいの事は考えられるらしい。
そういえばグレイルは今回逃げると見せかけて"リーブ"で背面取りという小癪な手段を使ってきましたよ。
以前レイルズはこの手で殺られかけたんですよ、二番煎じは通用しないってことですね。
とはいえあの時のレイルズはグレイル視点では戦士A扱いでしょう、今回の戦いが3度目だというのすら知らないでしょうね。
そうそう、グレイルは前回の戦いでレイルズに右目を奪われましたね。
そしてその目が潰れたままだったのにレイルズが不審を覚えているシーンがあるんです。
猛虎の部族には失われた肉体を再生するタレントがあるらしいのにそれを使ってなかったという話なんですが、一つ謎があります。
というのもそれらしきタレントがデータブックには載ってないのでなんとも微妙なんです、その辺どうなっているのやら。
"リジェネレーション"というらしいんですが、同名の魔法が神聖魔法にもあるし、同じくフェネスのタレントにもあったりします。
神聖魔法の方はデータブックにはないんですが、失われた肉体の再生で小説内で言ってたバルバスのタレントと同じ効果?です。
でも「傭兵伝説」ではヴァレンスがこの魔法で翼を再生させてたんですよね、書いて無いだけで存在はするらしい。
フェネスのタレントの方は、レベル×5ラウンドの間レベル×1点の生命力が回復し続けるというものです。
「3X3EYES」のウーのようなものですね、戦闘中に傷が癒え続けるという効果です。
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獣の牙は圧倒的な兵力の差にも怯まず、奇跡とも言える健闘を見せます。
レイルズはよく頑張りましたよ、イサリの予言を回避しようと必死に戦った。
でも頑張り過ぎました、傭兵達がベルディアを寄せ付けない団結を生んだ時点でこの砦の運命を決していたのかもしれません。
神王は痺れをきらして急遽予定を変更し、この砦に軌跡の力を振るうつもりです。
いままで神王バルバスは何度かこの手で神獣の民の重要な拠点を潰し、軍を進めてきました。
この手段をとっていなければベルディアは未だ断崖を越える事は出来なかったかもしれないし、
こんな内陸まで攻めてくることもなかったかもしれません。
そして本来はシレーネに打ち込むはずだった奇跡をこの砦に使おうというのです、神のくせに情け容赦ない。
中立神は光にも闇にも属さなかったわけですが、全くの隔絶した性質でも無いと思いますよ。
中立神たちは中立とはいってもどちらかしらに偏った性質を持っていると思います。
完全な中庸ではなくて、どちらかといえば光とかどちらかといえば闇とかいう風にね。
ではバルバスは闇の陣営なのかといえば、それは違うと思います、むしろバルバスは光の傾向にあります。
闇の陣営が私の傾向にあるのに対し、光は公の傾向にあると思うからです、ファリスとファラリスの概念から派生した感じですね。
公と私の違いはなにかというと、公を人の定めた法則(国家・共同体)とすると、私とは神々が定めた法則(生死や生活・欲求)です。
具体的な例を挙げるなら、光=ファーン、闇=ベルドです。倫理観で測かれるものではありませんね。
どちらが正しいとかではありません、人は自由や欲求無しには生きられませんが、秩序や法なしにも生きられないのですから。
そして支配を司るバルバスが支配・被支配の関係を否定するファラリスに通じるとは思えないんですよ。
むしろ支配という概念は公の物です、支配・被支配の関係は政治の領域に繋がり、政治とは公の産物に他ならない。
まぁ支配というのは人を支配(公)したいという欲求(私)から生まれることもあります、この辺は異論も色々出そうですね。
バルバスはその点で中立神にならざるをえなかったのかもしれませんね。
支配を司る神の宿命でしょうか、守護対象が公の傾向にあっても精神は私の傾向にあったんですね。
話を戻します、実際にバルバスがどんな奇跡を使ったか、それは砦に四大の精霊王をけしかけるというものでした。
つまり、エフリート・ベヒモス・ジン・クラーケンといった上位精霊たちが次々に砦に力を振るったのです。
新手の地獄絵図でしたね、上位精霊がひとつ所に4体も集まるなんて初めて見ましたよ。
順を追うと、大地震→竜巻→大津波→火事ですかね。
津波や地震はともかく、無数の火球による火事や竜巻は致命的ですね。
竜巻に巻き込まれた結果、幾千万の肉片に引きちぎられて花火を咲かせる死に方なんてゾッとします。
レイルズはサイア・ビーン・バッソー・シャイロン・マリスと一緒に耐え抜きました。
ターニルやオルゲンス他傭兵達は全力で避難したのですが、ヒラ傭兵は多くが死んでしまいました。
ターニルは生きてますし、オルゲンスも多分無事でしょうね。
せっかくレイルズが人材と物資の補充の見通しを立ててたのに、とんでもない事をしてくれましたよ。
ビーストマスターが各部族に帰って訴えるというものだったんですがね。
何しろ人も物も無い、新しい傭兵を募集し、物を手に入れないと持ちませんからね。
あのターニルなんてレイルズの銀狼の部族との協力という方針を理解しないなら、族長を斬り捨てる宣言までしたのにね。
もしもそういった事が思うが侭にいってたら獣の牙はとんでもなく強力になってたと思う、逆にベルディアを落せるぐらい。
あのクールなターニルがレイルズを信頼してたんですよ、本当にレイルズって強力なコネを築いてますね。
ターニルとマリスは次代の銀狼の部族の導き手ですよ、将来ダナーンと銀狼の部族が同盟を結ぶのもこの縁があればこそ。
レイルズ達が生き延びられたのは、ビーン根性のエフリート説得があったからこそです。
どの程度話が通じたのかはよく分かりませんが、直後炎に巻かれた所を見ると完全な説得は出来なかったんでしょうね。
ビーン「分かったよ、炎の上位精霊の心が。次に会えば、きっと心が通じる」
全然懲りてません、むしろ何かを掴んだらしいし、もしかして"ファイアストーム"が使えるとか?
それにしても本当にいい根性してますね、エフリートと正面切って話すなんて並みじゃありませんよ。
これを鎮めるのは超英雄ポイントをもった精霊使いでも難しいと思う。
(ダーク)エルフの最上位種である妖魔王やルマースでも出来るかどうか。
なにしろ神が召喚したわけですから、ちょっとやそっとでは帰ってくれないでしょう。
あとガーシュンが死にました。
津波で片足をやられてしまい、逃げられないと悟って最後の手段を使いました、言ってみればブルーザ究極の奥義です。
ガーシュン「神獣王ブルーザはその無限の槍をもて数多の竜王を屠りたもう・・・・・・」
ブルーザはこの大地に逃げてくるまで、無限の槍を使って中立神を守りながら竜王を滅ぼしたという逸話があります。
そしてその槍を従者にも持たせているのです、それこそはブルーザの9レベルタレント"デスゲイズ"です。
無限の槍とは視線なのです、そしてこのタレントは俗に言うイービルアイ(邪眼)です。
要は視線を飛ばすだけで対象を殺せるのです。
人をゴミのように屠った神王の奇跡に対する怒りが、ガーシュンにこの非情な手段を行使させたのです。
ガーシュンが9レベルだとすれば、90メートルまでの範囲で9人睨めます。
しかし、ガーシュンは10回視線を使っています・・・・・・もしかして10レベル?
だとすればガーシュンは本気になればブルーザを召喚する事も可能ですね。
こうしてガーシュンもまた逝ってしまいました。
もうすぐ周期の時代が終わるというこのタイミングで、ボークスやレードンと再会する前に。
ガーシュンは周期がなくなったらどう思ったでしょうかね、案外適応したかもしれませんけど。
ちなみにボークスやジェノバは今現在混沌界でバルバスと戦ってると思われます、「神王伝説」の話です。
逃走するレイルズ達は例のディラントと面会をする機会を得たりしてました。
ディラントは神王に対しては面従腹背の態度を取っています、神に対しては大した意味は無いことは承知の上ですがね。
人を支配するのはやはり人だと思っているので、バルバスを除きたいという点ではレイルズやレードンに通じる所があります。
実際ディラントは後に獣の牙の盟友となりますしね。
ちなみにレイルズは後にダナーン王となりますが、ディラントはベルディアの騎士王となります。
王となる運命の二人はこれが浅からぬ縁となるんですが、この時には予想もして無いでしょう。
二人とも同じロードスからの漂流民ですが、邪神戦争等の解釈を初めとする歴史観は大分違うようですね。
レイルズ「伝説の自由騎士とかに憧れてね」
ディラント「自由騎士?ああ、砂漠の傭兵王の手下の事だな。」
パーンを下っ端扱いとは、敵とはいえあんまりな解釈ですよ暗黒の民。
こういった伝説と言えばマールですが、流石のマールも暗黒の民に敵対したパーンを称える歌は残せなかったのかも(笑)
他にも吟遊詩人や賢者はいたんでしょうが、やはり歴史観というのは民族によりけりですよね。
他に故郷の島の伝承を残すような人たちはパーンに恨みこそ抱いても敬意を抱くことはなさそうだし。
ディラントは更にレードンとレイルズの関係も知りたがりますが、あまり意味は無いですよね。
サイア「素敵なお兄さんだったわ。強くて、優しくて。村の女の子はみんな憧れてたんじゃないかな」
そうか、やっぱりレードンは人気があったのか(苦笑)
そのレードンは今現在は真紅の皇帝として真紅の部族を率いています、その話は「蟻帝伝説」にて。
こうして獣の牙は落ちました、生き残った傭兵達は全力で逃げるしかありませんね。
このままいくとシレーネも危なそうですが大丈夫です、神王はもうじき活動を停止するのだから。
「神王伝説」の夢幻界での戦い辺りがこの「漂流伝説」のB面なのです、もうすぐアシュラム様が帰ってきますよ。
でもレイルズ達の戦いは決して無駄ではありませんでした。
確かに敗れたかもしれないけど、ベルディアに与えた打撃は大きくシレーネ攻めは成功しないでしょう。
本来シレーネに使うはずだった奇跡をここで使ってしまった訳ですし。
獣の牙はまさに弾除けになったようなものです、お陰で一つの部族が滅びることは避けられました。
もしも獣の牙がアッサリと抜かれていたとしたら、銀狼の部族は滅び、バルバスは会合において優位に立てたでしょう。
そしてボークスやピロテースがアシュラム様を呼び戻して神王の活動を止めていなければ、
クリスタニアは本格的にバルバスの手に落ちていました。
二つのフィールドでの戦いが圧倒的な力を持つはずのバルバスの歩みを止める結果になったのです。
さて、前々から言っていたようにマリスは会合の地に銀狼の部族代表として赴かねばなりません。
そしてレイルズもついて行くわけですね、当然ながら仲間達も。
いよいよゴールが見えてきました、長いこと漂流してきましたが、もうじき漂着しそうです。
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お待たせしました、「神王伝説」以来のナーセルの登場です!!
文庫の裏表紙にもデーンと顔が出ていますね、10年前から歳を取っていないのになんか若さが無い。
ナーセルは《時の果てへと至る崖》につかまった事で10年前から時間移動したような状態です。
もうじきボークスやジェノバも戻ってきますが、ナーセルはそれより少し早くクリスタニアに戻ってきたらしい。
結構歳が離れていたサイアともあまり変わらないし、竹馬の友レードンとは10年の隔たりがあります。
難儀なものですね、まぁ本人はあまり気にしてませんけどね。
ナーセルは"世界見の賢者"としてこのクリスタニアで見聞を広める事を望んでいます。
「博物誌」なんてものも著してますし、アレクラストで言う所のラヴェルナのような役所ですか。
「神王伝説」では使えなかった7レベルの"テレポート"を使ってる所を見ると、いつの間にやらレベルが上がってますね。
あれから何日も経ってないはずですが、それはそれ。
あとMr.貧乏くじことノルヴァも出てきます、レイルズ達のB面で結構苦労してますよ。
ノルヴァはバッソーとシャイロンを捕まえて、レイルズにしかるべき返事を貰わないといけません。
今のレイルズを無理矢理連れ戻す事は彼でも無理っぽいですよね、そうなると適当に手紙でも書いてもらうしかないでしょう。
同行しているのは戦士のコーラルとテディン、魔術師のリーマン、そして影の民のイサリです。
前の3人はバッソーとシャイロンの元冒険仲間です、2人を宰相に引き渡す代わりに免罪と出世が約束されています。
命惜しさに仲間を売るのもどうかと思いますが、多少なりとも良心が痛んでいる様子も見せています。
あと何故にイサリがいるかというと、それが彼の使命だからです。
アルケナは未来を予知しようとしています。その為、従者である影の民には未来変動の要因を見張る役目があるのです。
もう断崖の道は閉じないでしょうから、未来を見極めるためにもダナーンという土地について知る必要があるのです。
イサリはノルヴァに協力する代わりに、ダナーンへ帰る際に連れて行ってもらおうとしてるんですね。
レイルズ達が知らない所でこんなパーティーが出来上がってたんですね、微妙な連携ですが結構強い。
彼らは猛虎の部族に追われている所をナーセルの魔法でバビュンと脱出したわけですが、
この時ナーセルは"テレポート"を使ってるんですよね、しかも自分含め6人分。
クリスタニアRPGではキャラのレベルが上がれば精神力の上限も上がり、呪文も高位になるにつれ消費精神力が増えていきます。
SWでは基本消費精神力をレベルで割る事で拡大をしない限り常に5点以下の消費に抑えられるので、精神力の上限は増えませんでしたね。
ちなみに"テレポート"の消費精神力は16点、6人にかけようものなら96点です。
タレントの中には一度の使用で複数を移動させるものもありますが、"テレポート"はSW同様個人にしか使えませんからね。
でも拡大は存在するので一度に複数を瞬間移動させる事も可能です、精神力が足りれば。
「クリスタニア・コンパニオン」では一応ナーセルの精神力も載っていますが92点しかありません。
しかもこのデータってリプレイのものだし、歳とか設定とかも大きく食い違ってますからアテになりませんね。
ちなみに他のキャラのデータも載ってたりします、グレイルなんてパパイア鈴木みたいにアフロですけどね(笑)
ナーセルのお陰で2つのパーティーの合流が早まりました。
"ロケーション"でサイアの杖を探知する事でレイルズ達の居場所を探れますからね。
ナーセルにとって、サイアの杖はGPS携帯のようなもんですね(笑)
一方、エフリートの炎でうっかり丸焼きにされそうになったビーンですが、シャイロンの"リフレッシュ"で全快したらしい。
"リフレッシュ"といえば8レベルの神聖魔法ですよ、シャイロンってば何時の間にそんなレベルに。
やっぱり他のメンバーもそれなりのレベルになってるんでしょうかね。
レイルズやバッソーは2回攻撃も軽いだろうし、ビーンだって無謀と慢心の精霊が呼べそうです(笑)
こうして各人様々な思惑を抱えながら、クリスタニアには会合の時が迫っています。
会合とは大周期の終わりに全ての神獣が集い、次の大周期を決める集まりのことです。
大周期とは歴史の一循環です、一度の大周期に神獣の民は一度だけ生を受けると思われます。
クリスタニアはこれまで幾度となく大周期というサイクルを繰り返してきました、そしてその節目には必ず会合があったのです。
各部族の代表者は傍聴人としてその場に出席することになっています、銀狼の部族はマリスですね。
そして会合は始まりの地と言う場所で開かれます。
かつて中立神達が降臨し、その肉体を打ち捨てた場所です。今でも石化した中立神達の骸が放置されているらしい。
神の肉体は魂が抜けると石になるようですからね。
カーディスの骸が石化してマーモのウィンドレスト城(コンクァラー)の地下に横たわっているのは有名な話です。
また会合には不審な点も多々あります。
一つは会合の度に次の大周期の世界律と神獣の長を決めてきたという事。
世界律はずっと周期で、神獣の長はフェネスですよね。
周期があるからこそ会合や大周期があるわけですし、決めるだけ無意味という気もします。
決めるのは世界律ではなく、その大周期に起こる万象と人の運命だと思うんですけどね。
もう一つは、会合の度に銀狼と猛虎の部族の代表が決闘をしてきたということ。
つまりはマリスとグレイルですね、二人が大周期の度に戦ってきた事は恐らく事実なんでしょう。
でも決闘をしてどうするんでしょうね、神獣の長を決めるというのなら一つ目の疑問にも関係してきますけど。
それじゃあ初めから長の候補者は二人だけ、しかも毎回マリスが勝ってきたなんて出来レースでは?(笑)
色々不審な点もありますが、きっと大した変更もなく何千年と続いてきた行事なんでしょうね。
でも今回は違います、今までの大周期と違って周期も結界も大きく損なわれているのだから。
いよいよ神獣の民は周期という道標を外れる時が近づいています。
それは時という潮流を漂う漂流といっても差し支えはないでしょう・・・・・・・。
★
二パーティーの合流となりますが、クライマックスが近いのでサクっと終わらせたいです。
レイルズとノルヴァ・イサリ、サイアとナーセル、シャイロン・バッソーとその他と言った具合に再会を果たすわけですが、
ヤケを起こした冒険者3人がサイアを拉致ったのです。
聞いてみればこの3人、ていうかバッソーとシャイロンもですが、王女を助けるなんて依頼自体が嘘だったらしい。
要は宰相の権威に傷をつけるための捨て駒だったんですね、文字通り。
3人は復讐とばかりに近衛騎士と結びつき、地位と引き換えに反宰相派の貴族たちが造反を企てていたという偽の証言をした。
その密約を守るためにもバッソーとシャイロンを亡き者にしないといけないんですね。
何が彼らをそうまで変えたのか、かつての仲間を売り、無関係な少女を人質に取ってまで成り上がりたかったのか。
しかもこの密約に全てを賭けてますからね、下手に刺激すると自分達が死ぬ事も厭わずサイアを殺すでしょう。
ナーセル「不覚だった。私がついていながら・・・・・」
レイルズ「まったくだ」
ザ・八つ当たりですね、そんなこと本人だって分かってるんでしょうが、それほど逼迫した事態でもあります。
下手に姿を見せたら速攻でサイアをブッコロでしょう、そこでマリスが獣を装って襲撃するという手段に出ます。
"ウルフフォーム"で銀狼になって襲撃するんですね。
だったらイサリやナーセルも変身するという手もありますね、ナーセルならサーベルタイガーにも変身できそうだし。
まぁ"シェイプチェンジ"で眷属に変身しても能力は備わらないようなので、その辺微妙ですが。
マリスはたった一人で救出する為にタレントをフルに使います。
まず"コールシルバーウルフ"で銀狼をもう1匹召喚、更に本人は"リジェネレーション"を使って回復しっぱなしです。
このイスカリアの森林ならD6匹の銀狼が召喚される筈ですが、出てきたのは1匹だけでした。
ダイス運が悪いのか、はたまた都合が悪かったのか(苦笑)
結果としてはマリスは3人相手に勝利します。
無傷ではありませんが、"リジェネレーション"もかかっていればちょっとやそっとでは死にません。
彼女が7レベルなら毎ラウンド7点ずつ回復します、そしてシルバーウルフの装甲値は5点です。
マリスは上手い事タイマン勝負に持ち込んでましたし、"リジェネレーション"の加護もあって死には至りませんでした。
ダメージがD6点のダガー程度なら2回攻撃でもなんとか持つでしょう。
相手が並みの戦士ならほとんど無傷で済んだんでしょうが、生憎と並の戦士ではなかったらしい。
なんとなく"シャープファング"で仕留めた様な気もしますが、もしそうだとしたら彼女8レベルですよ。
全てが終わった後、女二人が初めて腹を割って話したような気がします。
二人ともレイルズが好きで、マリスはレイルズと一緒に死ぬ覚悟までしている、でもサイアはそんな二人に幸せになってもらいたい。
サイア「お願いだから幸せになって。神王と戦おうなんて考えずに」
自分の命をかけてまで他の為に戦うマリスをサイアは案じているんですね、そしてそのマリスと一緒に行こうとしているレイルズも。
自分の幸せを考えて逃げるのも一つの手段だと思う。
でもマリスやレイルズはそれが出来ない人間です、自分の代わりに誰かを犠牲にできない損な性分。
しかしそんなだから二人は惹かれあう結果になったんですよね。
ようやく舞台が整ってきたわけですが、まだ難関が残っています。
レイルズに復讐を誓ったグレイルはこれ見よがしに一行の後を付けています。
グレイルは始まりの地の前で決着をつけるつもりです、それは次の章のお話ですがね。
何度か敗れて、グレイルはなんか一皮向けたような雰囲気ですよ、吹っ切れたと言うか。
そっちの方が厄介なんですけどね、復讐心で心と目が曇った状態の方があしらい易いし。
もう一つ神王の存在ですが、どうやらピロテースやボークス達が成功しつつあるようですね、あるいはした。
レイルズ「・・・・・神王は倒されるのか?」
イサリ(アルケナ)「然り。運命の輪は閉じた。神王は眠りにつく。深い深い眠りへと・・・・・・」
アルケナが直々にお告げを下すとは、これも一種の"フューチャー・サイト"なんだろうか。
とにかくこれで最大の憂いは絶たれました、一時は死ぬ覚悟までして神王と戦うつもりだったレイルズも拍子抜けですね。
バッソーとかも一緒に戦おうとしてくれていたのにね、まぁ無事で済むに越した事はないんですけど。
いよいよ近づきつつある会合の時、遠き神代の時代から続いてきた周期の終焉の時が迫っています。
★
全4巻にも及ぶ「漂流伝説クリスタニア」もいよいよクライマックスです。
周期は何の為に、結界は何の為に、神獣とその教えは何の為にあるのか、クリスタニアはこれからどうなっていくのか?
数千年もの間幾度となく転生を繰り返してきた神獣の民にも、そんな疑問が湧く時代になりました。
そしてその迷いは神獣の民はおろか、神獣達にまで伝播してきたのです。
神獣王であるフェネスまでもが答えを見出せず、その従者に未来を委ねようとしています。
時代に未来、それは時があるからこそ自発するものです。
本来周期に閉ざされたクリスタニアにはそういったものは自然には生まれません、しかし現に今それは存在しているのです。
この時点で周期や結界といった従来のクリスタニアの世界律は崩れたと言わざるを得ませんでした。
本当は皆薄々感づいていました、それでも長い間自分達が拠り所にしてきた物を否定できなかった。
それは自分を取り巻くもの達からのプレッシャーであり、同時に自分の中に芽生えた強迫観念でもありました。
誰もが思うこれらの疑問にどんな形であれ答える時が来たのです。
クリスタニア最大の聖地である『始まりの地』でこの大周期の終わりの会合が行われる時が来ました。
全ての神獣とその従者の代表が集まるこの場所でクリスタニアは大きく変わります。
レイルズ一行は気づいてみれば9人パーティー、とんでもない大所帯になっています。
レイルズ・サイア・ビーン・バッソー・シャイロンとこの1年ほどの間行動を共にしてきた5人に加え、
銀髪の者であるマリス、"世界見の賢者"ナーセル、影の民のイサリ、ダナーン近衛騎士のノルヴァもいます。
魔術師と戦士が3人ずついるんですね、一応マリスはウォリアーらしいし。
ノルヴァはナイトだからウォリアーとは少し違うんですが、前衛を任せられるという点では一緒です。
この面子なら大抵の敵には負けないはず、まぁ軍隊を正面から相手にするのは勘弁でしょうが(苦笑)
道中孤高の部族の村を救うために、ベルディア軍に奇襲を仕掛けたりもしました。
ナーセルはサイアと一緒に"テレポート"で老師に会ってきたようです。
サイアは1年ぶり、ナーセルなんて10年ぶりですよ、ナーセル本人の感覚ではそれよりも遥かに短いんでしょうけどね。
結界が作用していないから帰ろうと思えば何時でも帰れます、ナーセルはもっと見聞を広めるつもりですけど。
孤高の民の長老は神獣の教えを心の支えとしてベルディアと戦う意思を保っているようでした。
信じるからこそ戦える、長老とて現在のクリスタニアに疑問を抱いていないわけではないんでしょうが、
それでも集落を守る義務があるし、なにより自分自身の為にもほいほいと否定できないんでしょうね。
心が折れてしまえばあとは脆いものです、あっという間にベルディアという波に浚われてしまうでしょう。
神獣達の創り出した秩序が神獣の民の救いになっているというのも紛れもない事実です。
しかし神獣はその民に全てを委ねようとしているのです、今神獣の民に必要な事は『神殺し』なのかもしれませんね。
『神殺し』とは言っても竜王の事じゃありませんよ。
この場合は自分にとっての絶対的なものを抹消する事で従属関係や庇護を求める弱さを否定し、
自我の強化や独自の価値観を獲得して、自分の世界を保とうとする行為のことです。
それ自体がある種の弱さなのかもしれませんが、前に進もうと言う意思でもあります。
具体的にどのような形で『神殺し』を行うかは人それぞれですが、一種の革命であることは共通すると思う。
神獣やその教えをクリスタニアから抹消するというわけではなく、それらへの依存心を一度壊すといった方がいいかな。
生きていく上では神獣の教えは必要ではない、しかし無意味でもない。
六大神その他の信仰と一緒ですよ、必須ではないけどあってもいい、神獣とはいえ神なのだからその教えの受け方も人それぞれ。
神様は自身が生きる上での一つの模範ではあるかもしれないけど、従属すべき相手ではない。
神獣に絶対的価値観を求めてはいけない、彼らとて人格神なのだから迷いもするし誤りもする。
最もいけないことは自分で考える事を放棄して神に脳みそを全部預けることです。
会合の直前、レイルズは宿敵グレイルとの決闘に勝利しました。
グレイルはどうやら族長の地位を追われたようですね、それでもバルバスの支配の法を肯定し、
猛虎の民としてバルバスの下で戦うことを望んでレイルズとマリスに復讐しようとしていました。
猛虎の部族にとっては復讐というのは神聖な行為です、自分が先に進むためにしがらみを断ち切る行いです。
決闘そのものは実に堂々としたものでした、正真正銘一対一でタレントなんて一切使ってませんでした。
ここにきてレイルズは実に漢らしかったです、マリスという存在を背に庇いながらも決闘には微塵も退かない。
そりゃあ9対1で戦えば負けやしないでしょうが、サイアとかビーンがピンポイントで狙われかねないし。
イサリなんてグレイルに殺されるビジョンが見えないとなったら積極的にボコにする気だし、結構調子いい(笑)
でもレイルズは一人で挑んできた相手に団体戦を挑むのが浅ましく思えたんでしょうね、私はそういうの好きですよ。
自分の左腕を切断され、相打ち気味ながらもギリギリで勝利しました。
切断された腕はシャイロンが"リフレッシュ"で接合、ブラックジャックかお前は(笑)
再生には"リジェネレーション"が必要でしょうが、接合するだけなら"リフレッシュ"でもいいんだろうか?
それにしてもグレイルの死に様は印象深い、最後の最後で神王に支配の限界を指摘し、輪廻の輪から自由になったのです。
この土壇場になってグレイルは武人として散りました、忘れられないインパクト(パパイア鈴木)を残しつつ。
グレイルがいなくなったことで、猛虎の部族には人物がいなくなりました。
神王の下でベルディアをまとめるのはディラントになるはずですね、神王になにもなかったら。
神王バルバスはアシュラム様と再び魂の戦いに入り、その事で暗黒の民と猛虎の民は敵対関係となります。
これからベルディアは内乱に入り、暴走あるいは迷走を始めます。
さて、始まりの地に行くためには色々と条件があります。
まず神獣が認めた者であるという事、それと風の峰と言われる尾根を通る必要もあります。
フォルティノは"始まりの地の守護者"と言われるだけにこういった事を整備してそうですね。
グリフォンや生きた風なる謎の存在も始まりの地の守護をしているらしいし。
生きた風は結局なんだったんだろう、風の精霊とは違うんでしょうかね。
SW短編集に「契約の代償」というのがありましたが、それには命ある魔力という存在が出てきました。
魔力に命を持たせる事が出来るなら、風の精霊力そのものに持たせる事も可能のはずです。
なにしろ精霊力も魔力(マナ)の一種なのだから。
万物の根源が魔力(マナ)ならば、物質はマナで出来てるんだろうし、精霊力だって同じでしょう。
物質のマナが属するのが物質界、力のマナが属するのが精霊界、その仲を取り持つのが妖精界。
命ある魔力だって実体がないのだから、精霊力の一種を素体にした可能性が高い。
あるいはリプレイのように風の精霊王ジンが一枚噛んでいるのかもしれません。
本来なら風の峰を通れるのは神獣が認めたものだけだから、マリスしか通れないんですよね。
でもレイルズも神獣に選ばれたので晴れて会合に出席できるようになりました。
選んだ神獣はもちろん"純白の大白鳥"フーズィーです、ようやく出てきましたね。
まぁ新しき民はフーズィーが居住を認めたわけだし、そのフーズィーに選ばれたのなら大白鳥の代表だと思っていいのかも。
とはいえフーズィーはレイルズに自分の代弁をさせる気はないでしょうけどね、むしろレイルズこそがフーズィーの答えです。
かつて周期から離反してまで民を救おうとし、結果その民が絶えてしまいながらも探し続けた答えが目の前にいたのだから。
これで始まりの地にはお2人様ご案内ですね、他の7人は孤高の部族の村でお留守番。
そういえば神獣の大きさってどうなってるんでしょうね?
今回のフーズィーはごく普通の大きさの大白鳥だったようですが、器の大きさそのままというわけでもないと思う。
アニメ版ではそうでしたが、他の場面では大怪獣サイズだったりするし、リプレイ版でのフェネスなんてもののけって感じ(笑)
まぁミルリーフの例もあるから大きさぐらいは自由自在なのかも。
始まりの地はまさに神の国といった風情で住居や飲食物もふんだんに用意されてました。
この場にいるのは皆各部族の代表だし、VIP的な待遇を受けてもおかしくはないかな。
部族の代表なだけに有名な族長や長老・若長がズラリと揃っていました。
多分ワールドガイドに載っている人物が多数を占めるんでしょうね。
全ての神獣が揃う筈のこの会合ですが、バルバスだけはアシュラム様と戦っているからいなかったりします。
あとウルスもいないんですよね、ウルスは今浄化の眠りに入ってますから。
多分クリスタニア創世以来ずっと公欠なんでしょうね、詳しくは「封印伝説クリスタニア」で。
真紅の部族の代表としてレードンも来ていました、真紅の皇帝になって5年ほど経ちますかね。
ようやく2人の主人公が出会えましたよ、ちなみにレードンはあと9年ほどはこのまま皇帝であり続けるでしょう。
皇帝になっても全然ダークサイドには落ちてませんね、むしろ以前よりもクールになったというか悟ったというか。
リプレイ版のレードンって独裁者みたいになってたけど、小説では一貫して魅力的な人柄になっています。
会合は中立神達の骸である巨大石像に囲まれつつ、神獣達勢揃いで行われました。
エレクトリカル・パレードよりも迫力ありそう、見る人によっては百鬼夜行もかくやという光景でしょうが(笑)
ここで神が正真正銘巨人であったことが証明されたわけです、SWでは謎とされて有耶無耶にされがちでしたけど。
現在の巨人達も神々の末裔といっていいと思う、もちろん格が違うでしょうが。
大きさとしては王城の見張り塔よりも高いらしいけど、その比較対象じゃよくわかりませんね(苦笑)
まぁ10メートルやそこらじゃきかないんでしょうね、サイクロプスが10メートル越えるらしいし。
「一つの周期は巡り」「新たな周期が始まる」「次なる周期は、如何に定めましょうや?」
「望みあれば述べよ」「我、それを承認せん」「是非、分かれれば」「我、調停せん」
「眠れる礎の者に、感謝を」「夢幻の泉の、守り人に労いを」「外なる混沌を排し」「内なる邪悪を滅すべし・・・・・」
という具合にフェネスに始まり、その他の神獣が次々に謳っていくんですね、神々の会合っぽい。
幾つかは誰の言葉だか想像出来るのもありますね、多分これをずっと繰り返してきたんでしょうね。
「8時だよ、全員集合〜!」と似たようなものです、あるいは「笑っていいとも」における「ウキウキWATCHING」です。
フェネスがタモリになるんだろうか?(笑)
ここでファリスとファラリスとフェネスは兄弟神であるとハッキリ書いてあります。
「英雄伝説」でも書きましたが、神様は始原の巨人から生まれたから皆兄弟といってもいいですよね。
それとは別に光・闇・中立の各陣営を率いた三柱の神が兄弟、それでいて神格の高さが抜きん出ていたらしい。
前にも書きましたが、私はこの3人を「神様馬が合わねぇ三兄弟」と読んでいます(笑)
いざ会合が始まれば面倒なことは抜きでじゃんじゃか話は進みます。
獣とはいえ神様ですしね、わざわざ言葉にしなくても心を隅々まで探って民の言いたい事もすぐに分かります。
言葉は不便なもので正確に意思を伝えられるとは限らない、というタルキィーの教えにも通じますね。
タルキィーは"神獣の使者"と呼ばれるように神獣間の意志の伝達も行っているらしい。
もしかしたらこの会合における意思のネットワークを敷いているのはタルキィーなのかも。
ちなみにリプレイ版でも神獣達は高密度な情報のやり取りで会合を行ってました。
レイルズの頭の中を読んだ神獣達は口々に言います、
レイルズは周期を、秩序を、混沌を、支配を、結界を、戦いを否定していると。
これまた誰が言ったのか予想がつくものが多いですね。
そして最も衝撃的だったのはフーズィーの一言でした。
「汝は、神を否定している」
本当に文庫でもこんな風に大きな字になってるんですよ。
レイルズにとっての神は古代語魔法や精霊魔法のような便利なものなんですね。
あくまでも自分達がメインで神はその礎に過ぎない、奉仕する役に過ぎないと。
中立神は物質界を未完のまま人間に託したくはなかったのです。
だからクリスタニアを築こうとした、でも未完の世界であっても人は生きていく事が出来たのです。
神の予想すら超える強さを持っていたからロードスやアレクラストでは神は信仰対象であっても従属対象ではない。
既に人は自立していて、神の助けを必要とはしていないのです。
勿論神聖魔法のような形で力を貸す事はありますけどね、レイルズだってそのお陰で生きてるわけだし。
結局は完璧なものなんてありえない、完璧超人ではない神が創った世界もやはり完璧ではない。
それなのに完全なる世界なんてものを追いかけて民に犠牲を強いらざるをえないシステムを放置してきたのです。
そして神獣達は話し合い、その末に結論にたどり着きました。
こうして周期と結界を廃止し、クリスタニアは海の高さまで下がる事になります。
レイルズ「小さな完全よりも、偉大なる不完全をだ」
というのは革新っぽいですね、不完全で混沌が存在するからこそ可能性と変化があるのだから。
これでダナーンやベルディアとも地続きになりますね、ますますクリスタニアは混乱します。
獣の牙の必要性が一気に跳ね上がった気がします、もはや集落単位ではどうしようもない事だって多いでしょうし。
そしてマリスは銀狼の民を、レイルズは新しき民を導くようになるのです。
レイルズはマリスと想いが通じ合いました、それでも二人は夫婦にはならずにそれぞれの為すべき事を為します。
マリスは将来銀狼の部族の族長となります、レイルズはダナーンが害となる前に宰相を打倒してダナーン王となります。
レイルズはレードンのように自分の進むべき道を見つけ、それに邁進するまでに至ったのです。
ダナーンの王族であったレードンは真紅の部族に道を見出し、
そのレードンの父親の仇の息子であるレイルズはダナーンの地に道を見出したのです。
思えば数奇な運命ですね、ていうかハークの村は人材の宝庫ですか、まるでロードスのザクソンみたい(笑)
サイア・ビーン・バッソー・シャイロンはレイルズと一緒にダナーンに帰りました。
宰相を倒し、国を治めるようになるレイルズにとっては気心の知れた仲間として長い付き合いになるでしょう。
恐らくはノルヴァとイサリも一緒でしょうね、イサリはある程度用が済めば帰っちゃうかもしれないけど。
ノルヴァは英雄や勇者といった人物ではないけど騎士としては優秀なので、仕える相手さえ間違えなければ大丈夫だと思う。
ナーセルはレードンと一緒にラブラドル大地峡の真紅の都に行きました。
レードンにとっては10年ぶり、ナーセルにとっては数ヶ月ぶりの再会でしょう(苦笑)
2人は次の作品である「蟻帝伝説クリスタニア」でも大きく関わってきます。
はい、これにて「漂流伝説クリスタニア」は完結です。
この年がクリスタニアにおける紀元0年に当たるんでしょうね。
北の方ではとっくに新王国暦800年を越えてますね、ていうか新王国暦900年近いでしょう。
長い間クリスタニアの世界律であった周期は新たな世界律に道を譲りました。
移ろい行く時という名の世界律は次第に歴史となってクリスタニアの地に積もり行くでしょう。
神獣という名の月は優しく姿を変え民を見守り、歴史を振り返りながらも今に語りかける衛星となるでしょう。
これからクリスタニアをどうするか、それを決めるのは神獣ではなく人間なのです。
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