「クリスタニア傭兵伝説序章」著:水野良 他 出版社:メディアファクトリー
★1
「暗黒伝説」の事件で神獣の民と暗黒の民は同盟を結び、ベルディアにも獣の牙が出来ました。
解放された混沌や猛虎の部族、ベルディア住民の不安要素は数多くあります。
そして、何も混沌や猛虎の部族だけが脅威ではないのです。
300年以上もの戦いで出来た両民族の間の溝は決して浅くはない。
加えて神獣の民の諸部族・集落の間にもそうした溝はあるのです。
周期と結界が失せた今のクリスタニアでは、誰もが新しい道を模索しています。
獣の牙はそうした各共同体の利害を調整しつつも治安を維持し、住民達を分け隔てなく守らねばなりません。
民族・部族・集落の枠を超えた傭兵団「獣の牙」というのは、実に様々な期待を背負っているのです。
その団長になったリュースの責任も大きい、まだまだ傭兵も物資も不足しています。
それでもやらねばならないのです、彼は混沌解放や同盟を承認した承認者なのだから。
自分の承認したものには責任を取る、それが承認者の誇りです。
この「傭兵伝説」というのはリュース達が主役として出ずっぱりになる訳ではありません。
最初の内はその配下の傭兵達が様々な任務に挑んでいくことになります。
それぞれの話は独立した短編のように思えて、実は一つの大きな事件の断片なのです。
傭兵達の活躍がやがて一本の流れに収束していく、それはリプレイのスタイルの影響を強く受けています。
新しいクリスタニアに生きる傭兵達の生き様と戦いは真の敵に挑む為の礎となります。
★2〜4
さて、今回は「序章」ということで本編の土台です。「封印伝説序章」と同じですね。
そういえば水野先生は新ロードスでも「新ロードス島戦記序章」を出していますよね。あと外伝や終章的な作品も出しますよね。
水野先生は小説を書くとき、まず世界と物語を作ると仰ってました。それからキャラをそれに当て嵌めていくとも。
そうなると番外編でそのキャラを補完するのはある意味では必然の賜物なのではないですかね。
リウイなんて、キャラを遊ばせる為に書いた第一部が10巻にもなりましたしね(笑)
「封印伝説序章」の「若き承認者」のリュースと今回のリュースで何が変わったか?
承認者としての気概や自分の置かれている状況、色々数えられますが成長したのは間違いないと思います。
実力的にもかなりのもの(推定6レベル)になっていますし、内面的にもかなり立派になりました。
それを表すという事もこの「序章」は担っていると思います。あと現在のベルディア情勢ですかね。
今回の話は新生ベルディア王国の王都ドートンに訪れているリュースとリヴリアから始まります。
どうやら国名を変えたようですね、暗黒の民。「大ベルディア帝国」が「新生ベルディア王国」ですよ。
ということは帝政は廃止しちゃったんですかね?マーモ時代からずっと帝国だったのに、とうとう王国になりましたよ。
聞いた話では国王は一つの国の君主であり、皇帝は複数の国/民族の君主なんだそうです。
実際にはそう単純なものでもなさそうですが、まぁ大体こんな所でしょう。
支配していた沈黙の部族や悟りの部族も独立したし、妖魔とも袂を別ったしで大分国の中身が変わりました。
今のベルディアは暗黒の民による単一民族国家ですし、帝国というのは領土的野心を思わせて聞こえがよくない。
それならベルディア王国の方が適当なのかもしれませんね。
ここではドートンに関して「人口はおよそ3万人。周辺の村落の人口まで合わせれば10万人にも及ぶ」となっています。
更に「その数は暗黒の民の五分の一ほどになる」と続くんですが、それじゃあ暗黒の民の人口は50万人にもなるんですかね?
それとも都市の人口を5倍して15万?
50万だとしたら、ワールドガイドではベルディア地方の総人口が40万人なのに随分と隔たりがあります。
このワールドガイドのデータが20年前のものと考えても、20年やそこらでそんなに増えるもんですかね?
閑話休題、我らが主人公のリュースはこのドートンで刃物を持った暴漢(女)に襲われました。
暴漢「死ね!」
リュース「なんでだ!」
その疑問は間違ってはいない・・・・間違っちゃいないけど、何かがズレている(笑)
まぁ混沌解放の承認者ですしね、恨みの一つや二つ当然買ってるでしょう。
解放された混沌に身内を殺された人の気持ちを考えれば、リュースを恨むのは当然の感情ですからね。
幸いにも怪我は負いませんでしたが、殺意は本物でした。
彼女の名はレナ、愛する男を混沌に殺されたことでリュースに復讐を誓ったのです。
レナは獣の牙の傭兵としてリュースに近づいたり、リヴリアの脅しにも屈せず復讐を諦めなかったと意思は本物でした。
取り合えずリヴリアの脅しに屈しないのは天晴れですね、いい根性してます(苦笑)
レナは賭け試合でリュースと戦う機会を得るのですが、当然敗れます。
そしてリヴリアをはじめとする幹部たちの前でリュースにその意思を承認されたのです。
自分への復讐を誓う相手を承認するなんて、リュースもいい根性してますね。
しかしそれがリュースなりの承認者としてのケジメなのです。
「言葉になったり行為に及んだというだけで、リュースには価値があるように思えてしまう」
リュースらしいといえばらしいですよね、相手の言葉や行動を否定するとその人の全てを否定した気分になるというのもね。
そして自分が承認したものには責任を取るのがリュースの流儀です。
承認の結果で人が死に恨まれたとしても、その復讐を果たさせて死ぬのではなく、その憎悪を受け続けるつもりなのです。
賭け試合では一瞬死を選びそうな雰囲気を見せて不安になりましたが、どうやら大丈夫だったようです。
ちなみにレナの復讐を承認した際、ちゃんとタレントを使っていました(苦笑)
相手に加護を与えながらも自分は死なないようにするなんて徹底してますね。
訳が分からない行為に見えますが、これもまた承認に値する在り方ではないでしょうか。
承認者は他人を承認するだけでなく、自分自身が承認に値するようにしなければならないのかもしれない。
多分この時使ったタレントは2レベルの"アドミッション"だと思います。
「黄金伝説」でも触れましたが、承認すべき行為を行う者のロールに一回だけ+20の修正を加えます。
クリスタニアのシステム上、例え自分が攻撃に成功しても相手が回避に成功すれば結局は意味ないんですけどね(苦笑)
「黄金伝説」で思い出しましたが、リュースが「彼女(レナ)なら、黄金郷にだって行けるだろう」と言ってました。
一連の話し振りからすると、リュースは黄金郷の正体を完全に知ってますね。
黄金郷が鬣の部族の間でどの程度認知されているのか、本当に気になりますね。
いくら記憶を消すといっても案内人である鬣の民は真相を知ってる訳だし、どんなに口止めしてもどこからか話は漏れるものです。
黄金郷の機密はどうやって保持しているのか、部外者には教えてくれないんでしょうね。
さて、リヴリア以外の仲間達も健在でしたよ。
シロフォノは傭兵の受け入れに忙しそうだし、ティオシーも砦の建造の指揮に精を出してました。
シロフォノ「彼が団長のリュース。色んな噂が耳に入っているでしょうが、そんなに悪い人ではありません。安心してくれていいですよ」
暗にちょっと悪い人だと言いたげですよシロフォノさん(苦笑)
やっぱりシロフォノはちょっと黒いぐらいで丁度いいですね、シロフォノというかクロフォノです(笑)
アロートは物資の調達でイスカリアにまで出張だったようです。
イスカリア獣の牙の団長は"認めずの承認者"として有名です、誰かさんと真逆ですね。
そこでアロートは銀狼の部族の長老のターニルから話を通してもらったそうです、絡め手というやつですね。
流石は調停者、いい読みです。まぁ調停とはちょっと違う気もしなくはないですが(苦笑)
ていうかターニルはちゃんと長に収まってるんですね(ギャグじゃないよ)。
しかも長老って・・・・。「漂流伝説」から12年ほど経ってますが、ターニルってそんな歳じゃなかったと思いますよ。
確かに小説のターニルはリプレイよりも老けてましたが、精々40代だと思う。
あとバッソーも来てましたよ、ダナーンからのお目付け役ですね。
ターニル同様にあれから12歳ほど歳をとったと思いますが、相変わらずのようです。
働いている振りをして怠けたりね、宮仕えの身になっても飄々としたものです。
リプレイではバッソーもPCとして参加してたんですよね、まぁ密偵としてはあまり働いてませんけど(苦笑)
ようやく体制が整ってきた獣の牙ベルディア砦ですが、近い内に大事件に巻き込まれます。
同盟を結んだ暗黒の民と共に、強大な敵と戦うことになります。
今度は一介の傭兵としてではなく、大勢の部下を抱える団長としてリュースは奮戦します。
9番目の伝説「傭兵伝説」は、序章とはいえ↓の話からもう始まっているようなものです。
何故ならば、「傭兵伝説」は多くの傭兵達の物語でもあるのですから。
★1・3
多くの傭兵達を描く「傭兵伝説」。その最初のお話は実に血生臭く、凄惨な任務でした。
真紅の部族の女傭兵ルビアとその仲間達は暗黒の民の村を護衛する任務に就きました。
敵はサーベルタイガー、"密林の猛虎"バルバスの眷属です。
しかしそれは犯人の偽装に過ぎなかったのです、サーベルタイガーの正体はタレントを使った獣人だったのです。
今回の話の主人公ルビアは真紅の部族です、歳は16歳。そして真紅の部族といえば「役割」です。
「英雄伝説」と「蟻帝伝説」で彼らについては色々触れましたが、今また考えてみたいですね。
かつてノーファは言いました「戦士は死ぬのが役割」だとね。ルビアもまた、同じ事を言っていました。
彼女は「役割」や「組織」というものに対して厳しく考えています。
何しろ、獣の牙の指令系統を改めるようにリュースに訴えるぐらいですし。それについては前々から指摘されてますね。
レイルズなんて「獣の牙が組織的戦術を身につければ、今の何倍も強くなる」と言ってたぐらいです。
確かにその通りなんでしょうね。だからこそ、彼らは「漂流伝説」で圧倒的多数のベルディア相手に戦えたのです。
しかしそれは、リュースが傭兵達を完全に掌握する必要があります。
リュースは決して命令はしない。依頼を傭兵達に振り分ける事は合っても、服従させ強制する事はない。
自分の考えを持ち、人の意思を承認する事はあっても強制はしないのです。レードンとはそこが違う。
何故ならば、リュースは"承認者"だからです。クリスタニアの民達の想いを大切にするから、自分の想いを押し付ける事が出来ないのです。
それは"承認者"としてはいいかもしれませんが、組織の長としてはいささか頼りない事は否めませんがね。
多くの人間の上に立ち、それらを指揮し目的を達する。共同体というのは時に個人を黙殺する事もあるシビアな面も持ちます。
かつてはあの"自由騎士"パーンも、国王という役柄が時に人を切り捨てる事を知り、国王になる事を辞したりもしました。
人は多様だからこそ想いはそれぞれで、その人間が集まる組織がそれ以上に多様になるのは必然です。
だからこそ、指導者はその多様さをあるラインまで制限するために命令するのです。
一様にしてしまってもマズイと思う。人も共同体も一様な特殊化の果てにあるのは緩やかな死だけです。
多様さ、変化の要素(すなわち混沌)がないものはそれ以上の進歩が望めませんし、一種類のウィルスで全滅しかねません。人も共同体もね。
レードンはある意味ではリュースよりも指導者に向いているんでしょうね。
自分の理想を追求するためには如何なる犠牲も恐れない。一方リュースは全ての理想や想いを承認する。
別にどちらが正しいという訳でもありません。かつてナーセルが言っていたように、人の理想は万人とは共有できないのですから。
レードンとリュースがそれぞれ抱くポリシーもまた、万人とは共有できない理想なのです。
でもその理想へ邁進する意志の強さという点では、二人はよく似ています。
今回の主役であるルビアがリュースに訴えたのは、あくまでも真紅の民の理想に過ぎません。
ある面ではソレは正しい。組織を運営し、多くの部下の命を背負う者は一度よく考えるべき事です。
でも、今の変化し続けるクリスタニアでそれを強行するのは現実的ではないのです。
過去のものとなった理想にばかり縋り付いていても仕方がない。
そういう点ではリュースは賢明です。変化を受け入れ、多くの人々の意思を承認する。
ただ今の状態が「獣の牙」の完成形である筈がありません、何しろまだまだ変化の渦中なのですから。
「獣の牙」は民を守る為にまだまだ変化しなければなりません。
その変化の一部には真紅の部族の考えも必要になるように思えますから。
★2・4
ルビアは3人の仲間たちと暗黒の民の村にやってきました。
一応リュースから話は持ちかけられましたが、命令はされてません。
でも彼女は組織の一員である意識が強く、このフォーマンセルに参加しました。
彼らは調査を進め、敵がサーベルタイガーだと判明したのです。そして、彼女は次々と仲間を失っていく事になるのです。
仲間だけでなく村人も次々にサーベルタイガーに惨殺されていきます。
新米傭兵の孤高の部族のレンジャーのデリアルは、調査中に殺されてしまいました。
同じく新米の銀狼の部族のビーストマスターであるオルファは増援を呼びに行きますが、途中でやはり殺されます。
相手の強さを考えれば、彼の判断は正解でした。彼らはそれほど強力な部隊ではなかったのですから。
そもそも相手がサーベルタイガーだということも予想外でしたしね。
しかし彼は、いまわの際に"ワーニングハウル"を使って砦に異常を知らせる事が出来たのです。
そして最後に残ったファルクという孤高の部族のレンジャー/ビーストマスターもまた、サーベルタイガーに殺されてしまうのです。
実はこのパーティー、全員レンジャーなんですよ。デリアル以外はみんな獣人だけどあまりレベルは高くない。
魔法使いがいなければ戦士もいない、当初の予定では敵は獣でしたからそれで十分だったんですけどね。
神獣の眷属は一律7レベル、彼らだけで太刀打ちするにはあまりにも強すぎる敵です(中身は獣人だけど)。
さて、ルビアは「戦士は死ぬのが役割」だと言っていましたよね、ノーファみたいに。
ノーファがそう言ったのは「英雄伝説」でレードンとはじめて会った時でしたっけ。
ファルク「理屈ではそうかもしれない。でも共に戦った仲間が死んだ。オレにはそれが役割だと割り切る事は出来ない」
実の所ルビアだってそうだと思いますよ。ただ自分のポリシーに支えられているだけで、普通はそうです。
ノーファだって自分の護衛だったソルジャーミュルミドンが死んだ時は辛そうだったし。
そしてそのファルクが死んだ時、ルビアは泣いていました。
ファルク「俺が死んだら、少しは哀しんでほしいもんだ」
「戦士は死ぬのが役割」、それはある意味では事実です。しかしそれはある種の理想に過ぎません。
ただ役割を果たすだけの存在ほど哀しいものはない、特に赤い血の通ったヤツはね。
★5〜10
このサーベルタイガーは実は"タイガーフォーム"を使っている猛虎の部族の獣人だったりするわけです。
その事実になかなか気づかず多くの犠牲が出ましたが、だんだん化けの皮が剥がれてきます。
猛虎の民に従わずに単独行動をし、得物を狩る猟師の様に村人を追い詰めたり。この辺はまだサーベルタイガーらしいです。
一応眷属は高度な知性を有しますから、これぐらいのことは出来るでしょう。
しかし、斧の一撃を受けても無傷だったり、急に空中に現れたりといった能力はサーベルタイガーにありません。
更には咆哮によって相手に恐怖を植え付けたりね。それこそはこのサーベルタイガーが獣人だという証拠です。
順に"インバルネラビリティ"、"リープ"、"タイガーロア"ですね。つくづく猛虎の部族のタレントは便利ですよね。
いずれも5レベル以下なので、眷属に変身できる獣人ならば可能です。
この獣人は実は女性で、暗黒の民への復讐の為に動いています。
神獣の民と同盟を結び、ドートンでの攻城戦で自分達を倒し、部族の勢力を大きく減少させられた復讐です。
サーベルタイガーの姿となって村人や傭兵を一人一人食い殺す、それが復讐です。
ちょっとキチガイじみてますね、かなり質の悪い方向に頭が冴えてるし。
この女を相手にするわけですが、レベル差は結構ありますよ。
何しろルビアは推定2〜3レベルのレンジャー/ビーストマスターなんですから。
一方相手は低く見積もっても5レベルのビーストマスター、まともに戦って勝てる相手じゃないです。
低く見積もってもというか、確実に5レベル以上ありますよ。5レベルならタレントポイントは15点。
2度眷属に変身(10点)し、4点消費の"リープ"と"インバルネラビリティ"を最低1回ずつ使ってました。
これだけで18点、しかも"タイガーロア"も使ってたから最低19点も使ってます。
18点なら6レベルで済みましたが、19点使っている以上は7レベルはありますよ。
他にタレントを使ってたりしたらもっとです、凄い強敵だったんですね。
2〜3レベルというのは、ルビアが"アントウィング"が使えないけど"アントカラバス"が使える所から推測されます。
前者は4レベルで後者は2レベルです。中間に当たる3レベルタレントが微妙なので特定できないんです。
ちなみに3レベルタレントは"エモーションコントロール"と"パーシャルアント"です。
"アントカラバス"はアリの外骨格を身に纏って装甲を+2するタレントです、これは使ってました。
でも格上の相手と戦うなら普通パーシャルはしますよね、でもルビアはそれをしなかった。
もしかしてルビアって2レベルしかないんじゃないですかね。
相手は通常武器無効になる"インバルネラビリティ"を使ってましたしね。
それじゃあメインウエポンの手斧は無意味、でもパーシャルならダメージは通ります。
ルビアは重傷を負いながらも、村の狩人から預かっていた毒を相手の口にぶち込んで勝利します。
だから「決意の毒」なんですね、神獣の民の間でもタブーとされる毒を使ってまで勝利を掴み取る。
それは卑怯でも何でもないと思いますよ。確かに神獣の教えでは毒はタブーでした。
でも神獣の教えとは民を守るものであり、民に犠牲を強いるものではないのです。周期を放棄したのもその為でしょう。
まぁ年がら年中毒ばかり使ってるのはどうかと思いますが、生きるか死ぬかというこの状況では責められない選択です。
死にかけていたルビアは村にやって来たリュースによって命拾いします。
6レベルの"ラストチャンス"というタレントですね、もう一度生死判定を行わせるというタレントです。
戦闘中も行動宣言なしで使える特殊なタレントですよ。SWの"インスタント・キャンセレーション"と違って行動そのものも消費しない。
タレントポイントを余分に消費する事で成功確率を上昇させたりも出来ます。タレントには珍しい拡大も可能なんですね。
これを使ったという事は、ルビアは一度死んだんですね。でもこの世に戻ってくるに足る意思を持っていたから蘇生出来た。
このタレントもまた承認のタレントなんですよ、特殊だけどね。
今回の任務で変わりゆくクリスタニアを意識し、ルビアは一皮剥けました。
今のクリスタニアで自分に何が出来るか、それを求める心もまた承認に値します。
流石に団長が勝手に出てきてしまった事をルビアは責めますが。
リュース「オレは命令はしない。その代わり説教も聞かないぞ」
ちょっと我侭っぽいけど、それがまたリュースらしいんですよね(笑)
★2・3
今回の話の主人公は孤高の部族のバードマン、ヴァレンスです。
「封印伝説」のサーバルと同じく、フォルティノによって創造された翼を持つ亜人です。
アレクラストのフェザーフォルクとよく似ていますね、鳥人間だし。
バードマンはルールブックによれば翼の生えたエルフのような感じらしい。
ということは彼らも長耳なんでしょうかね、もしかしたらハーフエルフぐらいの長さかもしれませんが。
エルフ的だし空を飛ぶので基本的には細いと思う、サーバルは丸くて梟みたいだとよく言われますけどね(苦笑)
空を飛ぶ速さは「人間×2倍」ぐらいらしい、これはグリフィンやペガサスぐらいの速さです。
あと鳥目なので暗いところでは目が見えないという弱点があります。
翼を生やす獣人は鳥目で目が見えないと言われる事がありますが、それはバードマンだけですから。
リヴリアもそうです、彼女は確かに鳥っぽいけど鳥目ではないですよ。
そもそも鳥が全て鳥目と言う訳ではないです、中には外敵から身を守る為に夜間飛行する渡り鳥もいるぐらいですし。
でも"イーグルフォーム"と"レイヴンフォーム"で眷族になった場合は鳥目になるとなっています。
でも"スワンフォーム"や"パロットフォーム"ではそうではないんですよね。
ちなみに鳥系の眷族になると暗視がない事になっているんですよ。
例えばフォルティの眷属ホワイトヘッドイーグル、アルケナの眷属レイヴンなどですね。
タレントによる変身では鳥目なのに、純粋な眷族は暗視がないだけ。これはどういうことなのか?
あとバードマンの鳥目や鳥系眷族の夜目が利かないというのもどの程度のことを指してるのか?
普通の人間だってドワーフのような暗視はなくても、ある程度までなら暗くても目が見えます。
バードマンについてはわざわざ書かれている以上は、並みの人間以下なんでしょうね。多少の明かりがあっても全く見えない。
では眷族の暗視が無いというのはどうなんでしょう。ドワーフ並に目が見えないだけで、ある程度は見えるという意味なのか?
人間だって暗視なんて能力はありません、でも夜にはまったく目が見えないと言う訳ではない。
暗視が無い眷族というのは人間と同じと考えていいということでしょうかね?
さて、ヴァレンスと仲間達は任務で猛虎の部族を倒し、砦に帰還していました。
しかし傷が原因で病にかかったことで一人の仲間を失い、更には猛虎の部族の少年の襲撃で自らの片翼をも失うことになりました。
それがきっかけで彼は、自らの翼を取り戻すためにとある任務に就くことになったのです。
その死んだ仲間というのは、ヴァレンスと同じ孤高の部族の戦士でした。
勇敢な戦士だったそうですが、死を前にしてその勇気も挫け、普段では考えられないような醜態を見せて逝ってしまうのです。
「獣の牙に助けを求めて来る奴らは、どうして自分で戦おうとしないんだろう」
「何故俺達だけが戦わなくちゃいけないんだ。どうしておれだけがこうやって死ななくちゃならないんだ!?」
そんな事を口走って錯乱しながら、彼は逝ったのです。普段は勇敢な戦士なのにも関わらずね。
彼は自分の最期を看取ってもらおうと、助けを呼ぼうとしたヴァレンスを引き止めたのです。
それは自分の挫けそうな心を保とうというせめてもの足掻きだったのかもしれません。
もしかしたら助かったかもしれない、それでも誰かが側にいないと嫌だった。そして無念さを残して死んでいった。
歴戦の傭兵ですらこういう事になる、彼らだって赤い血が流れ心がある人間なのだから。
直後、彼らが倒した猛虎の民の弟がヴァレンス達に襲撃をしかけてきました。
年端も行かない少年が4人もの傭兵達に復讐しようとしたのです、復讐とはいえ並みの勇気ではありません。
当然ながら少年は傭兵達に殺されてしまうのですが、ヴァレンスは彼の放った毒矢を受けてしまうのです。
一命は取り留めたものの、解毒の手段がなく片翼を切断。彼はバードマンであるにも関わらず飛べなくなってしまったのです。
勇敢な傭兵が死の間際に恐怖し、幼い少年が圧倒的に強い相手に復讐をする。
今回の話は飛べないバードマンヴァレンスの視点で、戦士が戦う理由を見ることになります。
ヴァレンスは孤高の部族、一応"監視者"という肩書きがありますしね。
ちなみにヴァレンスは獣人ではない、ただのウォリアーです。
それがプライドが高いヴァレンスのコンプレックスでもあります。
★1・4・5
翼を失った時のヴァレンスの取り乱しようは見ていて可哀そうになるぐらいでした。
大切なものは失ってみて初めて分かるとよく聞きますが、実際そういうことって多いですよね。
それは家族だったり友達だったりペットだったり、あるいは物や身体の一部だったりします。
もう昔のようには戻れない、二度とあの頃のようにはいかない、その圧倒的喪失感には絶望すら過ぎるでしょう。
しかし、翼を取り戻す方法はちゃんとあったりします。
それは"リジェネレーション"、身体機能の欠落を補う高位の神聖魔法です。
この魔法ってSWには普通にあるんですけど、「クリスタニアRPG」にはないんですよね。
SWでは7レベルだから、それぐらいの高位の司祭なら使えると考えていいでしょう。
再生・機能回復には1週間必要なので、その間はやっぱり飛べないんですけどね。
ヴァレンスに応対したのはシロフォノでした、無難ですね。リヴリアだったら凹まされそうだし(笑)
シロフォノはドートンの高司祭へヴァレンスを紹介することを約束しますが、条件があります。
それは暗黒の民の村の自警団を鍛え上げるというものでした。彼らは自力で村を守ろうと獣の牙に戦いの指導を依頼してきたのです。
奇しくも失ったばかりの戦友の言葉と関連しますね。彼は何故に般ピーは戦わないといって死んでいったわけですし。
そうしてその村に赴任しておよそ一月、まぁまぁの自警団が出来上がりました。
新しき民から聞いた方法をわざわざ採用したりとヴァレンスなりにやり遂げました。
彼らは思ったよりも優秀だったんですが、ヴァレンスには不満が残ります。
緊張感に欠けた自警団の若者達が実戦で役に立つのか?それが彼には疑問でした。
確かに村の若者達は実力に見合わない慢心を持ちながら、夕飯や嫁さんの方が気になる様子でした。
ヴァレンスはそんな緊張感を欠いた雰囲気に憤りを覚え、侮蔑すら覚えます。
ところが、村の近くに住み着いたゴブリンの群れと戦う際に、ヴァレンスの心は大きく変わります。
自警団の若者達は17名、それにヴァレンスを含めた18名がゴブリンおよそ40匹と戦うわけです。
正直な話、かなり部が悪いと思います。歴戦の傭兵ならともかく、一般人に毛の生えたような自警団が戦いきれるか?
当然ながら初陣の若者達は恐怖感を拭いきれません、そんな様子にヴァレンスはまたも侮蔑の視線を送ります。
ヴァレンス「臆病風に吹かれてまともに戦えぬまま死んでゆくのはお前らの勝手だ。だが、私の足を引っ張ってもらっては困る」
彼らには誇りがないから恐怖を覚えるのだと辛辣に言い放ちます。弱い者は認めない、この頃のヴァレンスはそんな感じでした。
しかし自警団の若者達にも誇りはあったのです。それはプライドとかじゃなくて、自分の命を掛けてでも守りたい大切なものです。
家族や仲間、そういったものを守る為に恐怖を覚えながらも戦う勇気を振り絞る。
確かに自警団の若者達は臆病で未熟かもしれない。しかし、それでも戦おうという姿がヴァレンスの心の琴線に触れたのです。
更にヴァレンス自身がこの戦いでこの上ない死の恐怖を味わいました。
ゴブリンロード(♀?)と戦う際に不覚をとりそうになり、片翼だけを無様に羽ばたかせて逃げようとしてましたし。
しかし自警団の若者がそんなヴァレンスを救ったのです、ヴァレンスが誇りのない弱者だと見下していた若者に。
そしてヴァレンスは知ったのです。真の恐怖とそれを味わいながらも振り絞る勇気の尊さを。
シロフォノはヴァレンスにこういってこの任務を任せたのです。「今の君に相応しい仕事だ」とね。
翼を失い傷ついたヴァレンスだからこそ普段は見えないものが見える。
この任務は自警団を組織するだけでなく、ヴァレンス自身に新たな視野を持たせるものでもあったのです。
今までのヴァレンスはある意味傲慢でした、その傲慢さがかなり氷解したのです。
こうしてヴァレンスは任務を終え、ドートンで翼を再生してもらったのです。
しかし今のヴァレンスには以前の狭量さはありません。
シロフォノの言うような翼があっても歩き、風景を楽しむような余裕というものも生まれたんでしょう。
一時は大切な物を多く失ったヴァレンスですが、それに劣らないほど価値のあるものも手に入れたのです。
シロフォノ「ひとつリュースと賭けをしてみようか。今度も私の期待に応えてくれたまえ」
賭けというのはヴァレンスが徒歩で帰ってくるか飛んで帰ってくるかというものです。
普通ならいいセリフなんでしょうけど、シロフォノが言うと何処となく黒いですね。
なんとなくリュースが負けるような気もしますし、シロフォノはやっぱり多少黒くなくちゃね(笑)
★1〜5
いよいよトリです。最後はクリスタニアの超保守派、大蛇の部族がメインとなります。
レードン達がこのクリスタニアに登ってきた時、真っ先に立ち塞がったのが彼らでしたね。
守護対象は無限、不変、四大精霊。それに加えて結界です。
結界は内部と外部を分かつもの。内なるものを守り、外なるものを締め出します。
周期の時代においては、ルーミスの張り巡らした結界がクリスタニアを覆っていたのは周知の事実です。
完全なる世界を目指していた神獣達には、結界というものがどうしても必要だったんでしょう。
しかし10余年前に周期は廃止され、結界も解かれてしまいました。
新しい生き方を模索する神獣の民達の中にあって、大蛇の民は非常に戸惑っています。
ある者は新しい生き方を探そうと獣の牙の傭兵となりました。
またある者はかつての周期の時代への回帰を願っています。そうした者達はクリスタニアからの離反すらも唱えています。
そして、結界を取り戻す為に大陸全土で暗躍する過激派などもいたりします。
果たして大蛇の民の新しい生き方とはなんなのか、その答えを一つの形として導き出したのが今回の主役ルマです。
彼女は"虹色の槍"という二つ名を持つ女傭兵で、最低5レベルのウォリアー/ビーストマスターです。
ルマは獣の牙に属し、新しい時代に順応しようとしています。部族の中では革新的な方です。
しかし最近は結界の民としてもっと相応しい生き方があるのではないか、と悩んだりもしています。
ルマはクリスタニアの各民族・部族が共存する村の護衛を勤める中で、同じ大蛇の民と遭遇します。
彼らは"ルーミスの狩人"という組織で、結界を取り戻す為に活動しています。
当初の目的に囚われて現実を見失った原理主義者とでもいうんでしょうかね。それ故に部族内きっての過激派でもあります。
彼らは結界を取り戻すために、少々不穏な手段もとります。新しき民と暗黒の民、そして獣の牙を敵に回す事も覚悟の上です。
今回は見せしめに多くの民族・部族が共存する村を真っ先に排除しようとしているのです。既に数人を手にかけています。
ルマはそんな彼らの理想を提示され、大いに迷いました。
結界があれば外敵を恐れることもない。安寧の時代を取り戻す為に外部からの侵入者を排除する。
そんな感じです。現在のクリスタニア情勢を考えると、そんな事していても部族が孤立化するだけではありますがね。
しかしルマには「部族の使命を忘れ、安易な現実に溺れているだけ」という言葉が突き刺さります。
かくして彼女は再び考える訳です。「自分は、大蛇の部族はこれからどう在ればいいのだろうか」と。
ルマについてきた影の民の呪術師デュリエルの予言もまた気になります。
彼は「漂流伝説」のイサリのように不吉な予言を彼女に言い渡しました、「全裸で水に浮いて死ぬぞ」と。
"ルーミスの狩人"はあくまでもこの村を襲撃するつもりです、万が一予言が的中することもありえます。
とはいえ影の民の予言は不確実なのはイサリの時にも証明されています。そしてこの予言は外れますよ。
デュリエルは一見嫌な男ですが、実は結構イイヤツだと思いますよ。
そんなルマは派遣先の村について考えることで、答えを導き出します。
この村の村長は暗黒の民なんですが、民族や部族の垣根を越えて多くの人々が住み着いています。
村長の理想は、異なる出身であれ誰もが済む事の出来る大きな村です。
ある意味理想ですね、もしも叶うのならそれはそれでいいことです。
まぁ小さないさかいは避けられないでしょうが、それは大きな争いに発展しないための発散口のようなものです。
そして村長はこうも言いました、「堀や柵で村を覆うと、そこで村の発展が止まってしまいそうだ」と。
混沌は変化・創造・破壊のマテリアルです、現在のクリスタニアはまさにその混沌が蔓延しています。
その混沌をどう扱うかが問題なのであって、混沌そのものは決して邪悪ではない。
この物質界が混沌界という海に浮かぶ小島(秩序)なのと一緒ですよ。
フォーセリア、クリスタニア、村、規模は違えども秩序と混沌が入り乱れる事こそが自然なのです。
かといって結界というものが全くの不要というわけではない。
結界あるいは境界線というものは誰かが意図的に作ることもあれば、自然発生することもあります。
どんなものにも内部と外部が存在するものです。此岸と彼岸、正と属、表と裏。
そういった観念を持つ事もまた自然な事です。身近な生活の中にも結界や境界線は存在するものです。
日本の場合はフスマ一枚で閉鎖感を味わえますからね。フスマなんてなんの障害にもなってないのに、不思議と境界線になる。
"ルーミスの狩人"は結界が安心感を与えると言ってましたが、ある意味それは正しい。
それが魔法であれ物質であれ、内部の人たちを守護するという意味での結界は必要なのです。
ただそれは人々を守る為にあるものであり、不幸にする為にあってはならない。封印と一緒です。
デュリエル「オレ達獣の牙の傭兵に、村の柵や堀の代わりになれということだな」
これがルマに答えを導き出させました。即ち、大蛇の民は自らを結界として民を守ればいいとね。
ちょっと目から鱗が落ちましたよ。この結界は人の心がある、昔の結界のように外部のモノを問答無用で排除したりはしない。
思えば外部のモノを排除するからこそ、それを破ろうという暗黒の民や新しき民達の意思を強める事になったのです。
そして周期の時代は終焉を向かえ、結界も廃止された。拒むだけの結界はより強い外部からの侵入を呼ぶだけなのです。
大蛇の民に掛かる負担は多くなるでしょう。しかしその生き方をする限り、彼らには獣の牙という盟友が生まれることになります。
これは本当にいい考え方ですよ。ちょっと見方を変えるだけでこうも世界が変わるとは。
そうして答えを得たルマはデュリエルや村人達と共に、"ルーミスの狩人"を迎え撃ちます。
元々故郷を離れてこんな所まで来ただけに、村人達は荒事に慣れてるらしく錬度や士気も高めです。
そしてルマは敵のリーダーっぽいヤツを追い、リザードマンの伏兵を相手にしながら水没密林で戦う事になります。
「暗黒伝説」で出てきた大樹海の軽いヤツですね、ここで眷族変身して死ねば予言的中です。
ルマは予言を避ける方を選び、"パーシャルサーペント"で戦う事を選びました。
これで正解です。直後敵の"サーペントゲイズ"がかかりましたから、眷族になってたら死んでました。
"サーペントゲイズ"は相手を睨む限り麻痺し続ける事になります。"パラライズ"のようなものです。
もしも眷族レインボーサーペントになって水中戦をしていたとしたら、水中で麻痺する事になります。
レインボーサーペントが水上移動が出来るとはいえ、水中では溺死を待つだけです。多分水中では呼吸出来ませんし。
相手はルマが死ぬまで睨んでいればいいのだから、こんなに楽な事はありません。
しかしルマは勝利しました、相手が攻撃に転じて集中を解いた一瞬を狙って。
もしももう少し早く、ルマの見つけた答えを彼らに話していたらどうなっていたでしょうね。
あくまでも侵入者の排除を主張したか、あるいは・・・・・。
ルマ「あなたは昔を夢見た。だけど私は未来を夢見たいの・・・・」
彼らは原理主義者であると同時に懐古主義者でした。存在意義を未来にではなく過去にしか見出せなかった。
新しい道を未来に探そうとしなかった時点で、勝負はついていたのかもしれない。
こうしてデュリエルの予知は外れたかのように見えました。
しかしデュリエルはもう一つの未来を予知していたのです。
デュリエル「あのとき見たのは、お前の勝ち誇ったような、その笑顔さ」
いい締め方ですね、銭形のとっつぁんみたいです。「奴はとんでもないものを盗んでいきました。・・・貴方の心です」みたいな(笑)
さて、これで「クリスタニア傭兵伝説序章」はお終いです。
そして物語は謎が謎と謎を呼ぶ「傭兵伝説クリスタニア」へ続きます!
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