「英雄伝説クリスタニア 赤き剣の戦士」著:河添省吾 原作:水野良 出版社:メディアファクトリー
★1
「神王伝説クリスタニア」で一人混沌界から弾かれたレードンのその後が語られます。
胡蝶の部族の聖地『夢幻の洞窟』で目を覚ましたレードンは一人クリスタニアを放浪しました。
猛虎の部族と戦い辛くも勝利しながら心身共に深く傷つき、命運尽きたかに思えた時獣の牙の傭兵に助けられました。
獣の牙に拾われるまで2年、更にそれから2年を傭兵として過ごし、現在となります。
このクリスタニアに登り、仲間達と別れ、アデリシアを失ってから4年も経ったのです。
アデリシアをまだ思い出せるという事は彼女はまだ存在しているのですね。
傭兵に拾われた時、レードンは疲れ果てていました。
クリスタニアを守りたい、その気持ちに従ってオーヴィル達と別れてまで神王との対決に挑みました。
しかし、自分がどんなにそう願ってもその願いは叶わない、一人では何も出来ない。
それがレードンを疲れさせていたのです。
神王との戦いに望む時のあの燃え上がるような闘志は何処に言ったのやら。
しかし諦めてはいないようです、猛々しき者よ、覇王の道を歩むべしという言葉の意味も考えつつ、
父の残した力なくして望みはかなわない、しかし力に怯えて本当の望みを失ってはならないという言葉も反芻しています。
レードンは自分が本当に為すべき事は何かと問い返しながら2年間獣の牙で戦い続けてきたのです。
ベルディアの侵攻はますます苛烈でフェネスの支配地である森林にまでその手は及んでいます。
このクリスタニアに来てから4年、なかなか崖っぷちの情勢です。
★2
レードンは自分の素性を全て明かしながらも獣の牙で戦う事を許されました。
それはレードン自身の実力と新しき民がフーズイーの加護を得ているからという理由だったそうです。
まぁ実際フーズィーは民にタレントを授けたりしないし、新しき民はフーズィーの存在すら知らないんですけどね。
それでもフーズィーが認めたのなら新しき民はその従者といってもいいんじゃないか、という理屈が通ったらしい。
本当を言うと、庶民はともかく王族との接触は少なからずあったと思います。
レードンのような王族にはクリスタニア共通語が伝わってたし、
過去の王族の中にはタレントを使う者がいたという記述すらあります。(多分)
ワールドガイドではフーズィーの従者がダナーンの王族となってますし、真実の響きを感じます。
新しき民がフーズィーという存在を認知するのはいつなんでしょうね、「漂流伝説」以降かな?
獣の牙といってもネルの集落に生き残りの傭兵が集まっている状態らしい。
以前の獣の牙のような立派な砦はなく、ほとんどゲリラのアジトです。
まぁ、最早そうでもしないと戦えないほど事態は逼迫してるんですけど。
★3
本編では双面の部族のファレットという老傭兵が猛虎の部族を誘い出し、レードン達が仕留めるという作戦が取られていました、
以前のように正面から叩き潰すという単純な作戦に頼らなくなった分、彼らも必死なんでしょうね。
今回もレードンの周りには色々な傭兵がいます、その中でも特に目立ったのを2人紹介しましょう。
先ずは双面の部族のソーサラー/ビーストマスターのファレットです。
最初は猛虎の部族に殺される哀れな老兵かとおもったんですが、彼はかなり熟練した傭兵ですよ。
双面の部族といえば神獣の民の裏切り者ですが、ファレットは心強い味方です。
双面の部族は"双尾の狐"スマーシュに仕えています。
守護対象は虚偽、商業、両面性で"チャ・ザの不実なる従僕"なんて呼び名もあります。
スマーシュは言葉の二面性を理解し、真実を語りながらなお虚偽を伝える方法を見出しました。
それ故その従者である双面の部族は実に言葉が巧みなのです。
獣の牙を設立するきっかけになったのも双面の部族ですし、
物々交換が主なクリスタニアで商業というものに関心があるのも大きな特徴です。
彼らは商人や詐欺師としての天賦の才があるのです。
ファレットもその例に漏れず、本当に口達者で色々な所でレードンの助けとなる言葉を投げかけてきます。
レードンと長いこと一緒に旅をするようになるのですが、ナーセルとは違った意味で頼りになります。
レードンはファレットなしに「英雄伝説」の戦いを乗り越える事は出来なかったと思います。
今回の伝説におけるレギュラーで、注目すべきキャラですね。
もう一人はロルカ、沈黙の部族のウォリアー/ビーストマスターです。
沈黙の部族は"沈黙の鸚鵡"タルキィーに仕える部族です。
守護対象は言葉、精神で"神獣の使者"、"禁断を知るもの"と呼ばれています。
タルキィーはこのフォーセリアを崩す禁断の言葉を知っています。
なにしろこの世界は神々が言葉によってマナを編みこんだ世界ですからね、その逆も可能なのです。
そして沈黙の部族は言葉が必ずしも正確に使われるとは限らないという考えの為言葉を封じています。
同族とは声なき声で意思疎通し、外部とは眷属のサイレントパロットを通じて会話します。
これは恐らく1レベルタレントの"サイレントボイス"と"パロットスピーチ"かと思います。
前者はテレパシーのようなものですが、通じるのは身内の沈黙の民やサイレントパロットのみです。
後者はオウムに色々喋らせます、それはもうペラペラと。
ではビーストマスター以外はどうやって会話するのかという疑問が湧きますね。
まぁロルカは結構開いた考えを持っているので普通に会話してくれますけどね。
言葉を混沌とする沈黙の部族ですが、ロルカは正しく使えば大丈夫という信念を持っています。
そのせいかロルカは不正確なことを言わないよう随分と気にしているようですね。
会話一つとっても断言はなるべくせず、推測や可能性を述べることが多い気がする。
ロルカはレードンには好意的で、親しい友人でもあります。
本来沈黙の部族というのはベルディアにいるので、猛虎の部族や暗黒の民に与する事が多いのです。
そんな中こうして戦ってくれるのもロルカという男の先進的な考え方が伺えます。
ロルカは後にレードンを逃がすために壮絶な戦死を遂げます。
★4〜6
2年間を獣の牙で過ごしてきたレードンですが、それは突然終わりを迎えます。
各部族の長や生き残りの団長達は獣の牙の解散を決定したのです。
当然ながら傭兵達は納得しませんが、解散だけは決定しました。
傭兵達の嘆きと怒りと悲しみはそれはもう凄いものでした、人間こうも一つの事に執着できるのかというほど。
負けたわけではなしに解散なんて納得できないというのも分からないでもない。
しかし微かに存在した組織としてのまとまりさえ失った今、これ以上は犠牲者を増やすだけだという上の判断です。
一応来るべき決戦に備えた配慮だそうですが、それが今だとも思う。
獣の牙が失われれば部族・集落単位で抵抗してもとてもではないがベルディアの侵攻は阻めませんからね。
未来の事を言うと、かなり危なかったもののフェネスの森を蹂躙しきるまではいきませんでした。
「漂流伝説」の時代には獣の牙も復活し、ベルディア軍相手に奇跡とも言える防戦を見せます。
まぁそれも結局は敗れるんですが、ある事情でベルディアはそれ以上侵攻出来なくなって冷戦に移ります。
悲壮な雰囲気の中、レードンは諦めては駄目だと皆を奮い立たせます。
絶望は人の心を殺す、これはレードンがこれまでに学んだ事です。
例えどんなに劣勢でも諦めない限りは敗北ではありません。
絶望にだけは心を支配されないで欲しい、だからレードンは傭兵達に発破をかけたのです。
諦めはしないが解散は変わらないということで解散を知らない前線の傭兵達を呼び戻すことになります。
志願者の中には当然レードンやファレット、ロルカ他の実力派が揃っています。
このままでは横井さんのような傭兵が出かねませんからね、結構重要な役目です。
道中猛虎の部族との戦いを経て、レードンはひょんなことからマティスと再会を果たします。
マティスは元百人隊長の銀狼の部族の獣人です、アニメでは金髪のヤンキーでした(笑)
レードン達がクリスタニアに登ってきた時、何かと助けてくれた男ですよ、ウンガロ砦でね。
バルバスの力で恋人を失いながらもまだ戦い続けてたんですね、どうやら探していた傭兵の一員らしい。
マティスの願いは明白で周期を守る事です。
周期がある限り何度でも蘇り、また友と巡り会える。
だからマティスは戦うのです、先に逝った多くの兄弟達と恋人だったロフェルの為にも周期を失うわけにはいかないのです。
マティスは獣の牙の解散を知っていました。知っていてなお戦おうというのです。
しかしヤケになってはいません、極めて冷静ですがそれでも戦う事を放棄出来ないのです。
正直言うと「神王伝説」でマティスと分かれた時、もう二度と会えないと思ってました、レードンじゃないけどね。
マティスはレードンという外部を認め、親友と思いながらも周期を守る事に関しては鋼のような信念を持っています。
矛盾しているようですが、それがマティスという男の素直さなんじゃないかとも思います。
友は友だし周期も大切、外部があっては周期は不安定になりますが、それを分かっていてレードンと付き合ってるんだと思う。
マティスが周期を守るのは仲間と恋人の為ですからね、周期ではなく大切な存在の為に戦っているといえます。
そしてそれは自分自身の為でもあります、鬣の民だったら思わず承認しちゃいそうな固い誓いです。
他人の為でなく自分の為というと感じ悪いですけど、
それは大切な人を失うのは耐えられないという自分の意思を尊重しているまでです。
周期が無いなら生きていたくない、そこまで言うのなら最早マティスを止める事は出来ません。
例え友を失おうと恋人を失おうと自分の命を失おうと、マティスは周期を守りたい。
それは失ったものを再び得る事に繋がるから。
それこそがマティスの心が折れない理由のように思えます。
しかしこれから6年後、レードンがクリスタニアに来てから10年経った年に周期は失われます。
マティスやロフェルなど、この大周期(歴史の一循環)の間に逝った人々の魂はどうなったんでしょうね?
そのまま召されたか、仮に再び生を得たとしても全く同じ人間になるとは思えません。
マティスの願いはどうなったのか、それは神獣達の采配次第です。
マティス以外にもう一人、注目すべき人がいます。
それは真紅の民のノーファです、クラスはシャーマン/ビーストマスターらしい。
他でも書きましたが、真紅の部族は北クリスタニア最南ラブラドル地方に住み、"真紅の蟻帝"クロイセに仕える部族です。
彼女はこの地の情勢を知るために遥々ラブラドル地方からやってきました、まぁ特使とか調査員のようなものです。
ノーファはここではチョイ役ですが、レードンとはかなり長い付き合いになります。
あと彼女を取り巻く護衛のミュルミドンたちも気を引きますね。
ミュルミドンとはクロイセによって創造された亜人で、直立したアリの姿をしています。
手足の本数や造形は人間と変わりなく、TRPGではPCしても使えます。
ミュルミドンはワーカー、ソルジャー、ウィングの3種類がいて、それぞれ役割が違います。
ノーファが連れているのはソルジャーミュルミドンです。(多分)
戦う事が役目で自分の意思というものを持たないファイティング・コンピューターです。
機械のように正確な戦闘スタイルは初期のウォーズマンを連想させます(笑)
真紅の民にとっては役割が大切で、ノーファは戦士は死ぬ事が役割と言います。
ノーファの言う事はある意味では正しいけど、決してそれだけで済ませていいとも思いませんね。
彼ら真紅の部族についてはこの本の最後の章や「蟻帝伝説クリスタニア」で詳しく取り上げることになるでしょう。
★7〜9
マティスとの再会もそこそこに、この場にもベルディア軍が押し寄せてきました。
敵の中には暗黒騎士もいてなかなか厳しい。
暗黒騎士は基本的に甲冑を着てますからね、神獣の民の貧弱な装備は見劣りします。
更には彼らは正規の剣術を学び実戦で鍛えてますから、それも神獣の民にとっては戦い辛いんでしょうね。
この戦いでマティスやロルカを初めとする傭兵達が命を落します。
マティスの相手はあのガルディでしたよ。
猛虎の部族の筋肉馬鹿です、暗黒騎士の故ルインズに見下されていたあの男ですよ。
自分を見失って無理に攻めたレードンを切り伏せたりしてました。
マティスはほとんど相打ちでガルディを倒します、レードンを殺させないと必死に。
その時マティスはパーシャルしてましたが、牙のキマり具合がなんとも見事で"シャープファング"でも使ってるのかと思いました。
"シャープファング"とはフェネスの8レベルタレントで、相手を即死させるという強力なものです。
ダメージが通ったら相手は抵抗ロールを行い、失敗したら即死です。
別にパーシャルする必要はないんですが、ファングと言うからにはそっちの方がシックリきそうですね。
ロルカはレードンとファレットを逃がすために初めて偽りを述べました。
迫り来るサーベルタイガーを前に、ロルカはタレントポイントが尽きていながらも翼を生やして逃げるといいました。
ロルカ「俺は初めて偽りの言葉を使った。タルキィー、それを間違っていると思いますか・・・・・・」
これで間違っているとでも言うようなら私はタルキィーの人格を疑います。
ロルカは確かに相手を偽った、でもそれは仲間を逃がそうという決死の想いからです。
忌むべきは相手を陥れ、自らのみを利する嘘だと思う、あるいは害にしかならない嘘とかね。
言葉の二面性を知るファレットは、多分気づいていたと思いますよ。
ファレットって虚言感知のタレント"センスファルス"を使わずに嘘を見破りそうですし(苦笑)
それでも先に行ったのは決して薄情だからではないと私は思う。
こうして多くの犠牲を出しながらも、レードンは生き残りました。
レードンは獣の牙に協力してくれる人を集めるためにクリスタニアを旅する事にしました。
『戦う牙は己の中にある』というマティスの言葉も噛み締めながら。
牙を失わずに研ぎ続ける事が出来るなら、きっとどんな苦境にあっても戦う事は出来ますよ。
ファレットはそんなレードンと一緒に旅をすると言ってくれました。
それは友を失い、肉体以上に心の痛みに耐えるレードンには有難いことに違いない。
★1
レードンとファレットはバルバスと戦う同士を得るためにフォレースル地方にまでやってきました。
フォレースル地方とは北クリスタニアの中央部に位置する地方で"忘却の大地"と呼ばれています。
他の地方には様々な神獣に仕える民が暮らしていますが、この地方は毛色が違います。
この土地に暮らすのは古の民といい、彼らは神獣を奉じていないからです。
彼らはスループ王国というダナーンやベルディアのような騎士のいる封建社会を営んでいます。
王都は国名と同名でこの地方には小数ながらドワーフやエルフまで暮らしています。
私の興味を最も引くのは、彼らの信仰対象は神獣ではなく古の神々だということです。
古の神々とは何かというと、ロードスやSWファンには馴染み深い神々の事です。
つまりはファリスやマーファといった六大神にブラキのような従属神等です。
六大神と言った通り、暗黒神ファラリスも彼らの信仰対象の一つです。
ではダナーンの新しき民やベルディアの暗黒の民とも馴染めるのではないか、最初はそう思うでしょう。
しかし彼らが信仰しているのは肉体を失った神でなく、あくまでも古の神々なのです。
どう違うかと言うと、肉体があるか無いかです。
古の民は神々がかつてのような肉体を取り戻す事を望んでいるのです、ここが違う。
古の民にもきちんと教団があり、ダナーンやベルディアのように神聖魔法の使い手たる司祭がいます。
その神聖魔法は何処から来るかと言うと、もちろん現在の肉体を失った神々からです。
その点では普通の司祭と一緒ですね、ただ志が違うのです。
ワールドガイドでは古の神の信仰に対し、全ての神をまとめて祭っているとか教義はなくひたすら祈っているとか書いてます。
しかし、実際の小説やりプレイを読む限りそうとも断言出来ない。
少なくともスループの街には六大神の神殿が個別に存在してるし、それぞれ教義もちゃんとある。
全ての神をまとめて尊ぶのはその通りかもしれないけど、全てを混同しているわけでもない。
勿論フォレースルの外部の教団とは微妙に教義が違います、その最たる例がファラリスです。
ファラリスといえば悪名高く、その信者もPCの敵に回る事がほとんどなので邪神と誤解されがちですね。
ロードスやアレクラストでの信者は汝の為したいように為すがよいの名文句通り、社会不適合な悪人ばかりです。
実際ファラリスというのは自由であることを求めるだけで、別に罪人を擁護しているわけではありません。
ただ人間の方が倫理や社会に適さない形でしか信仰できないだけなのです、私はそう思っています。
この辺は他の作品でも私はよく言っているので細かいことは飛ばします。
でもファラリスは邪神ではないということだけは承知すべきだと思う、独善的な善悪二元論に囚われたくなくば。
しかし古の民は全然違うのですよ。
確かに欲望を肯定している、そしてだからこそ理性的であれとも説いています
好きにしろとは言っていますが、責任を放棄しろとまでは言ってないことになってるんですよ。
その為、このスループでは教義の性格こそ違うもののファリスとファラリスが共存しているのです。
ファリス・ファラリス・フェネス、この三柱の神は神々の戦いにおいて光・闇・中立の各陣営を率いました。
ファリスとフェネスは兄弟神と呼ばれますが、実際は神々は始原の巨人から生まれたわけだから皆兄弟といってもいいと思う。
「漂流伝説」にファリスとファラリスも兄弟だと書いたありました。
ちなみに私はこの三柱の神を神様馬が合わねぇ三兄弟と呼んでいます(笑)
ファラリス同様に六大神は全てが微妙に違います。
ファリスは太陽神で法は重視せず、平等を強調しています。
マーファはやっぱり大地母神、基本的には変わらないけど自衛を含むあらゆる戦を否定しています。
マイリーもやはり戦神で本当の戦のみを守護していて、人生は戦いだとは説いていない。
ラーダは知恵の守護神で知識神としての神格はメルキシュがいるせいか省かれてます、主に知的な活動の守護です。
チャ・ザも変わらず幸運の神ですが商業の神格は無い、協調や交流で幸せを得ると説きたいらしい。
ファラリスは夜を司る神、前述どおり理性と自由の両立を説いています、支配・被支配の関係には否定的。
まぁこんなところですか、微妙に解釈が異なりますね。
一つ確認しておきたいのは教団の掲げる教義とは人間が決めた事だということです。
神の教えが異なっているのではなく、それに対する人の心構えが違うのです。
ファラリスはやはり自由神ですが、教団は理性というものを持ち出すことで社会に適応させている節があります。
それでも神聖魔法(あるいは暗黒と言うべきか?)を授けてくれるのならそれは神様としては問題ないんでしょう。
恐らくは大陸やロードスのソレと共通している部分は神様自身が譲れない一線か、あるいはそれに通じる所があるんでしょう。
異なっている部分は神様としては特に規定はしてないんじゃないでしょうかね。
神様の求める教えと教団の定めた教えは必ずしも一致しない、でも完全に不一致するわけでもない。
忘れてはいけない事は、大切なのは教義ではなくあくまでも神への祈りであることです。
畏敬の念を払うべき存在を意識し、それに祈り、自らの礎や道標とすることではないでしょうか。
神聖魔法を授けてくれるか否かというのは実に微妙です、神様次第。
ただ授けたからには神様は何かを感じたんだろうし、授けないからといってその信者を見捨てたわけでは無いと思う。
神様というのは畏れ敬い自らの糧とすべきであって従属すべきではない。
なにも神様を全否定しろとはいいません、でも脳みそを全て預けていいとも思いません。
神の教えを受けたとして、何を吸収し何を置いていくかを最終的に決めるのはその人間だということを忘れてはいけない。
神が本位なのではなく、あくまでも人間が本位なのです。
それでもなお神や教団に尽くしたいというのならそれはそれで良いことです、自分で判断する事を怠ってはいけませんけどね。
ところで、彼ら古の民って何処から来たんでしょうかね?
ワールドガイドでは神獣を認められないから古の神というものを持ち出したとなっていますけど。
神獣の民の創造主は神獣、では大陸やロードスとは離れたこの土地に神獣の民同様に住んできた古の民は何処から来たのか。
元は神獣の民だったけど離反したとか、中立神が降臨する前からこの地に住んでいたとか。
神々が人を創ってから神々の戦いが終結するまで、当時の人間というのはどのように分布していたのかによりますね。
中立神が来るまでクリスタニア完全な手付かずの大地だったという方が不自然ですし。
そうなると神獣の民というのもそうなのかもしれませんね、神獣の誕生にあわせて分散したとか。
★2〜4
この章のゲストキャラはスループ王国の女性騎士セルヴィオです。
彼女は王族の血を引く家系の出で、高司祭である兄を次の王にし、民を南クリスタニアに導く事を理想としています。
その為、劇中では部下を率いて杖の森へ赴き、発動体に使う古木を王都に持ち帰る任務についていました。
そして度重なる襲撃に遭い疲弊していた所でレードンに出会ったのです。
杖の森というのはフォレースル北部にある森で、強い魔力を持った樫とやらがあるらしい。
その真偽はともかく、別に素材に魔力がなくても"クリエイト・デバイス"さえかければ立派な発動体は出来ますよ。
クリスタニアでは基本的に発動体は杖ですが、指輪のような発動体もちゃんと存在しています。
ルールブックには書いて無いけどSWのようにしかるべき素材なら杖でなくても発動体になると考えた方がいいと思う。
現在スループには内乱の兆しがありましてね、セルヴィオは兄ならばそれを未然に防げると信じているのです。
どうやらスループ王国の王位は世襲では無いようですね、ヴァリスのように教団が決めるらしい。
それでもヴァリスは原則騎士団から王を選んでました、エトが王位につくまでそれが当然でした。
ではスループはどうかというと、王位継承権の序列が存在するにも関わらず世襲ではない。
そしてセルヴィオの兄ネイカーという人物は神殿の高司祭、それが普通に王位につきうるらしい。
王位継承権自体は人物ではなく家につくようなので、王位継承権を持つ貴族の中から神殿が選ぶという形式なのかもしれない。
完全な世襲ではなく、血筋と神権で選ぶんですかね。
民を南へ云々というのは発展が望めない現在のスループに新しい可能性をもたらしたいからです。
何しろスループは四方が神獣の領域に囲まれてますからね、領土を広げようとするなら戦うしかない。
しかし南は南で"真紅の都"があって素通りは出来そうにありません。
この都はその名の通り真紅の部族の住まう都市で、"真紅の蟻帝"クロイセのお膝元でもあります。
南北クリスタニアはひょうたんの様な形をしており、この都はちょうどそのくびれに当たるので通るに通れないんですよ。
そんな理想を持ちながら、実際はセルヴィオの一人相撲に過ぎなかったのです。
兄のネイカーは王になることには乗り気ではないのです、その責任のあまりの大きさ故に。
そこで従兄弟のルゼファンはセルヴィオ配下の騎士ウォイスと共謀してセルヴィオを罠にはめたのです。
襲撃は全てルゼファンやウォイスの手の者たちだったのです。
そうとも知らず、セルヴィオは謀略を巡らせるルゼファンやウォイスに絶大な信頼を置いていたのです。
それを知った時のセルヴィオの嘆きようはそれはもう哀れでした。
しかし、彼女は完全に絶望したわけではありませんでした、レードンがいたから。
二人の出会いはレードンの方からの接触でした。
古の民の力を借りたいならば、襲撃者を撃退して少しでも信頼を得るのが得策ですからね。
まぁレードンの場合義を見てせざるは勇なきこととばかりに行きがかりでも助けそうですし、助けたのも偶然。
色々ありましたが、二人は最終的にそれなりに思いが通じ合います。
セルヴィオは女扱いされるのを極端に嫌ってますからね。女としてではなく、騎士として生きようとしているようです。
しかし、レードンと出会って共に旅をするうちに次第にそんな強張った心が溶けていくようでした、
そんな二人でしたが、結局は互いに理想を持っていたから道を分ちます。
それだけに留まらず、5年後にはレードンとセルヴィオは剣を交える事になります。
結果はレードンの勝利でした、レードンの"レット・ヒルト"はセルヴィオの胸を貫きました。
でもセルヴィオには後悔の念はありませんでしたね、それが彼女らしい生き方だったから・・・・・。
★5〜10
レードンとファレットは戦力低下が著しいセルヴィオ部隊と行動を共にするわけですが、
やはり神獣の民が相手だと警戒心を持つんですね、古の民って。
何故ならば、かつて神獣の民(結界の民)がスループを攻めた過去があるからです。
その際はスループの軍勢にドワーフやエルフの援軍もあって結界の民は撃退されています。
そのせいでしょうか、セルヴィオは神獣が幾柱もいることを知りませんでした。
交流が無いとはいえ、そんな基本的なことまで古の民は知らないんですね。
庶民よりも教養があるはずの騎士ですらこれでは、庶民の神獣の民に対する認識はどれほどなんでしょうか。
案外庶民の方が詳しいかもしれませんけどね、こういった世間の事情は騎士の方が疎いこともあるし。
今回の話でファレットは最低でも5レベルであることが分かりました。
何故ならば5レベルタレント"フォックスフォーム"を使っていたからです。
全ての神獣に共通する眷属へ変身するタレント"ビーストフォーム"、そのスマーシュ版です。
スマーシュの場合はツインテイルフォックスです、まさに双尾の狐ですね。
本物の眷属には視線に催眠効果があって、抵抗に失敗すると行動不可になる能力を持ってます。
しかし"フォックスフォーム"で変身した場合にはその能力は備わらないらしい。
スマーシュもどうせだったら双尾ではなくて九尾になればよかったのに、そっちの方が馴染みやすい(笑)
そういえば、スマーシュってアニメ版では一人逃げようとして神王に肉体を滅ぼされるんですよね。
ということはファレットはソーサラーも5になりますね、"ファイアボール"も使える(クリスタニアでは5レベル)。
何故かというと、クラス制を取り入れているクリスタニアRPGはSWと違って2つの技能が同時にレベルアップするからです。
例えソーサラー/ビーストマスターという強力な組み合わせでも、個別に上げる必要はないのです。
SWに慣れている人にはこの辺が楽でしょうね、キャラを作った時点で既にレールを敷いているのです。
となると、ウォイスも自然に能力が分かってきますね。
彼は最後の悪足掻きとばかりに"フォース・イクスプローション"を使ってましたから。
これはSWと同様に自分を中心に気を爆発させる迷惑極まりない魔法で、7レベルです。
ウォイスは多分プリースト(エンシェントゴッド)/ファイターなんでしょう。
クリスタニアではプリースト技能はファーストクラスなので、同じくファーストのウォリアーと同時習得は出来ません。
その救済策がセカンドクラスのファイターなのです、ウォリアーとどう違うかと言うと全く同じです。
神官戦士のようなキャラを作る際、この組み合わせが必須となるでしょう。
それじゃあウォイスって7レベルファイターなんですね、SWなら騎士隊長はおろか騎士団長も務まりそう。
ウォイスの言葉「ファーラリィース!」は密かに名言だと思う、語呂がいい(笑)
一つ気になるのが特殊神聖魔法の扱いです。
ファリスなら"センス・イービル"、マイリーなら"バトル・ゾング"といった具合にありますね。
クリスタニアRPGではきちんとエンシェント・ゴッドという分類があるのですが、
それじゃあファラリスを信仰するウォイスはファラリスの特殊神聖魔法は使えずに、
エンシェント・ゴッドの特殊神聖魔法だけしか使えないんでしょうかね?
ウォイスはファラリスの特殊神聖魔法として分類されている"メンタルアタック"か"マインド・ブラスト"を使ってるんですよ。
それじゃあ古の神の司祭はエンシェント・ゴッドに加え、特定の神の特殊神聖魔法を使えるとしていいんでしょうかね?
あるいはウォイスは普通のファラリス信者で理性を尊ぶ古バージョンのファラリス信者ではないのかもしれない。
レードンは囚われの身となったセルヴィオを助け、ウォイスを討ちます。
そしてレードンはセルヴィオと別れるのですが、セルヴィオのする事はまだ沢山あります。
内乱を抑え、犠牲を少しでも減らし、謀略を巡らせるルゼファンのような輩をどうにかしないといけません。
別れる前、レードンとセルヴィオは屈託無い会話を楽しみました、それがとても印象的。
レードンがエルフ語を喋れるというちょっとした設定も明らかになったし。
セルヴィオはレードンと一緒の道を歩きたいと強く願いました、でもそれは叶わない事なのです。
レードンにはレードンのやる事がある、セルヴィオはそれは感じ取っていましたからね、彼女は彼女の道を行くのです。
それはレードンがこれから歩む道に負けず厳しい道となるでしょう。
そして、その道が再び交わる時はレードンとの戦いの時です。
人が理想を貫こうとする時、必ず誰かと衝突するものです、それはある意味必然と言ってもいい。
ルゼファンがセルヴィオをハメたのは後には力を掌握し、専横を働く貴族を根絶やしにするという理想があったからです。
目的の為に手段を選ばないのは考え物ですが、手段を選ぶあまり目的を見失うのも考え物です。
結局は正しく最善の道なんて分からない、ただ自分がその道を信じて邁進するしかない、例えそれが破滅に繋がっていようと。
私は性根や行動の善悪だけで物事を判断しません、それよりもその人がそれを望む心のありように興味があるのです。
例え悪徳と謗られようと、その人が抱く決意や想いに感じる所が一欠片でもあるのなら、
私はその点に関しては敬意を払うし好感すら覚えうるのです。
無論それでその行為が許されるとは思いません、然るべき罰や償いを背負うのが道理だとも思うからです。
なんにせよ、どうやら古の民の協力は得られないということでレードン達は更に南を目指します。
目指すは砂塵に浮かぶ"真紅の都"、そこにはレードンと真紅の部族にとっての大いなる転換が待っています。
★1
レードンとファレットはとうとう北クリスタニ最南のラブラドル地方にまでやってきました、なんか犬っぽい名前です。
この土地はほとんどが岩砂漠で生活するにはこの上なく不便。
それ故に人はこの土地を"神獣に見捨てられた土地"と呼びます。
しかし見捨てない神獣もいたのです、その神獣こそが"真紅の蟻帝"クロイセです。
守護対象は社会・組織、"見捨てられた大地を守護する者"の名は伊達ではなく。
この不毛の土地で暮らす為に閉鎖された生活を従者である真紅の部族に説いています。
閉鎖された大地クリスタニアにおいて更に閉鎖された生活をするだけに、
彼らは他の神獣の民に見られないほど役割というものを重視します。
この枯れた土地で生活するためには少しの異分子でも崩壊に繋がります。
旅人が一頭の獣を狩ろうものなら、その分だけ民が餓死することになるらしい。
つまりは余剰の恵を期待できないから役割をこなし、余計なものを受け入れないのです。
その為に南クリスタニアからの流浪民とやらも"真紅の都"からは門前払いを食らいました。
"真紅の都"は真紅の部族の都、その周囲には巨大な蟻塚という城壁がそびえています。
その堅固さはそこらの王城の城壁よりも凄いらしい、でも"トンネル"を使えば穴が開くと思う。
土いじりに関しては真紅の民やミュルミドンの技術はドワーフをも上回るらしい。
この辺はリプレイ「蟻帝伝説クリスタニア」を見ると分かりやすい。
そして、今この"真紅の都"は北からの侵攻に晒されているのです。
北からの侵攻、それは他ならぬスループ王国の騎士団ですよ。
前章で登場したセルヴィオ達古の民は南を目指してこの都を攻めているのです。
お互い事情があり、正当性があるからどちらが正しいとかいう問題ではありません。
スループの軍勢は"真紅の都"よりも北の集落を次々に飲み込んでいます。
何しろ一国の騎士団ですからね、大した戦力も無い集落では防ぎようが無い。
しかし、クロイセの下す神託は『侵略者を阻止せよ』といった所です。
あくまでもそれを繰り返すだけ、都へ退却することを指示しないのです。
そしてそんな集落のひとつに、以前レードンがイスカリアで会ったノーファもいたのです。
ノーファの胸には蟻のマークが刻んであって、どうやらそれが彼らのシンボルらしい。
言っちゃなんですがダサイ、カラーページにも載ってますがまんま蟻の顔です、多分クロイセ。
ということは真紅の部族はクロイセの顔がついた服や鎧を着てるんですね、何かのキャンペーンみたい(苦笑)
もう少し意匠化してあったらまだしも、蟻さん印の革鎧なんてシュール。
★2〜4
そんな集落に寄ったのが真紅の部族の子供を助けたレードンとファレットでした。
なんかケンシロウみたいですね、砂漠で倒れていた子供に神様扱い。
排他的な真紅の民ですが、それで少しは態度が軟化するかと思ったのが甘かった。
集落に入れないばかりかソルジャーミュルミドンの監視付きです、しかも4体(苦笑)
ノーファがいなかったら本当にそのまま追い返されていたかもしれません。
そのノーファ達はクロイセの神託に従い、この集落を死守するつもりです。
文字通り死守でしょうね、どう考えても勝てるわけ無い、戦力が違いすぎる。
それでもやらねばならない、何故ならば彼女達は他に従うべき言葉を知らないから。
ノーファと一緒にいた5人のミュルミドンたちですが、どうやら1人戦死したらしい。
それでも前述通り「戦士は死ぬのが役割」と言うばかり。
感情はこもってませんでしたが、彼女の本来の心からしてそれはやせ我慢というやつです。
ノーファや集落の人だって本当は色々あるんでしょう、でもクロイセの教えだからと無理に自分を殺している。
その様子はまるでタレントを使っているようでした。
クロイセの3レベルタレント"エモーションコントロール"です。
これは感情を押し殺す事により、あらゆる精神系の魔法やタレントを防ぐ事が出来るのです。
これは別にやせ我慢とかじゃありませんよ、あくまでもタレントです。
でもノーファや村人がこれを使ってたわけじゃないと思う(苦笑)
助けた子供だってクロイセに助けを求めていました。
それがその子の偽らざる心なんでしょう、あくまでもクロイセですが救いを求めているのです。
まぁ誰だってそうでしょう、苦しければ救いが欲しい。
しかしクロイセの教えは『いかなる逆境にも耐えよ』です。
ここで注意すべきは、確かに彼らは神獣の神託に従っている、それに逆らわない、
でもそれを行おうとする意志の強さは本物だということです。
正すべきは従う言葉というものを神獣ではなく、自分に求める事を知らないという点です。
真紅の部族はクロイセの教えを信じ、それを頑なに守っている。
それは別にいいんですよ、この土地で暮らすにはクロイセの教えは一理ある。
ただあくまでもその関係が一方通行で、民がクロイセに何かを求めた結果、クロイセがそれを認める事が無いのが問題なんです。
神獣の民というのは強力な公の精神を持つ代わりに、誰もが持つべき私の精神を押し殺しているんだと思う。
公とはファリス、私とはファラリスの性質だと考えると都合がいい。
両者は互いに否定しきれず、最後は認め合うしかない関係ですね。
別に個人の意思が無いということじゃありませんよ、自己本位になれないという意味です。
彼らは自分達で考え、自分達で動く。だけど自分を本位にはできず、周期や神獣といったものを中心にせずにはいられない。
また神獣もそれを良しとしているから始末が悪い。
マティスのように神獣の決め事を守るにしろ、教えだからと盲従しないで自分の想いを重ねていると全く違いますけどね。
集落を守って死ぬという行為にしろ、それがクロイセの教えではなく自分の望みでもあるとしたらイメージが違うでしょう。
生死に関わるような事は公でなく私に求める方が自然だと思う、逆もありますがそれとて本人が望んだ事なら救いはあります。
レードンはあくまでも戦おうという真紅の部族を見捨てる事は出来ず、共に戦う決意をします。
「人にとっていちばん大切なこととは、本当はいちばん近くにあって、誰にでもできること」、
というアデリシアの遺言言葉に適う判断です。
どんなに理屈をこねようが、レードンという男は目の前で死地に赴く人たちを放って置けるわけがない。
ファレットの「諦める事は何時でも出来るが、試みる事は今しか出来ない」という言葉はいいですね。
そうしてスループの騎士との戦いを試みた結果勝っちゃうんですよ。
流石は真紅の民、組織的な行動には強いこと強いこと、マニュアルさえあれば完璧にこなしますね。
こうして一度は完勝したんですが、本腰を入れて攻めてきた騎士達を阻む事はできず、集落を追われることになります、
ミュルミドンの戦士も一人減り、レードン達を含めたったの11人しかいません。
ノーファは言います「集落を取り戻さなければ私達は次の周期に何処で生きればいいのか」と。
マティスと一緒ですね、周期というものを支えとしているのです。
結論から言うと次の周期は来ないんですよ、だからここで死ねば本当に無駄死にです。
クロイセの教えや周期を大切に思う心は強制されたわけではなく紛れも無い本音です。
教えを守ろうという心は彼らの意思です、でもその意思を自分の命に向けて欲しい。
★5
レードンは生きるために大所帯を率いて"真紅の都"を目指す事になりました。
しかし、そこにはスループの騎士達が援軍の到着を待って野営をはっていたのです。
レードン達は援軍が来る前に都へ入ろうと強引な手段に出ます。
つまり、戦闘要員が囮になっている隙に残りの人たちを都へ入れようというのです。
その為にはノーファが空を飛んで都へ入り、内側から巨大な門を開けねばなりません。
問題は都の中の真紅の民達がそれを良しとするかです。
クロイセの教えを頑なに守る彼らでは例え同胞といえども見殺しにするでしょう。
それを説得するノーファの役目は重要、そして困難です。
レードンの言葉を聞き、神獣の教えの向こう側を見始めたノーファだからこその試練でしょう。
それに使うのは4レベルタレント"アントウィング"でしょう。
文字通り、蟻の翅を出して空を飛びます。
移動速度は人間の倍ほどなんですが、力が無いせいか他人を一緒に運ぶ事は出来ないんですよね。
せめて子供ぐらいは中に入れてやりたいと思ったんですが、難しいかな。
ノーファは罵声や石をその身に受けながらも扉を開こうと訴え続けました。
そして拒み、閉ざし、耐えるだけでは何も変わらないことを悟りました。
混沌とは可能性です、現在とは違う形に移ろい、変わる。
そして変化とは進化であり退化です、どちらになるかは分かりません。
だからこそ良い方に変わろうとするのが当事者の仕事です。
ましてこのクリスタニアは今周期という秩序が崩壊しかけ、変化の時を迎えているのです。
この"真紅の都"がいかに外界と隔絶しようとしても、外からの力を捌ききれるとは思えません。
彼らも変わらねばならない時が来ているのです、外部に攻められながら殻に閉じ篭っていては何も変わりません。
ついにはクロイセ自らが声をかけてきました。
クロイセはノーファの言葉を受け入れたのです、そしてこの都も外部からきた同胞を受け入れました。
ところで、この扉って魔術師が魔法で鍵をかけてたんですね。
これじゃあいくらノーファが開けようとしてもビクともしないはずです(苦笑)
"ロック"や"ハードロック"というのは閂(かんぬき)やつっかえ棒の類には効かなかった気がする。
クリスタニアではそう細かい事は決まって無いんですかね、あるいは閂を動かせる状態にするための鍵があったとか?
一方、レードン達の方はというとファレットが死にました。
ここまでレードンと一緒に旅をしてきたっていうのに、何かと口が上手くて好きなキャラだったのに。
思えばファレットってレードンとは親子ほども歳が離れているはずなんですよね。
ファレットは最期に語りました、故郷を侵略される痛みが分かる、だから真紅の民を助けたかったと。
双面の部族はベルディアに寝返りました、それはもう他の神獣の民からは酷い言われようだったでしょう。
しかし、生きる為の苦渋の決断だったというのは間違いないことです。
例え皆殺しにされようと義の為に裏切るななんて誰が言えるでしょう。
そうして裏切った先でもやはり謗られ、蔑ずまれ、嘲笑を受ける。
ファレット「獣の牙もクリスタニアもどうでもよかった。ただ、自分の居場所が欲しかったんだ」
初めてファレットの本音が聞けた気がする。
レードンについてきたのも、レードンはかけがえの無い友人だったし、居場所でもあったからなんですね。
もう同族の元へは帰れないだろうし、かといって他に頼る所もなかった。
でも、レードンと一緒に行けば、自分の居場所も見つけられるかもしれない。
一緒にいて楽しかったんだろうし、年の差を無視して親友ですね。
ファレット「レードン、叩き続けるんだ。門が開けば新しい景色が待っている。そこにはわしの居場所だってあるかもしれん」
私としてはこの辺の下りが堪らなく泣けてきます。
この「英雄伝説」の答えとも言える言葉ではないでしょうか。
どんなに高く硬い壁がそびえていようとも、想いの強さで扉を開けられたら可能性は広がる。
神獣の教えに固執し、自分を出す事ができなかったとしても変わることは出来る、きっと。
そして、ファレットは息を引き取りました。
次の周期は無い、ファレットの魂は何処にいくんでしょうか。
周期がなくなるまであと5年、もしかしたら再び生を受けられるかもしれない。
その時は、マティス同様に同一人物にはなりようがありませんが、きっと居場所はありますよ。
★6
レードンは都へ入り、クロイセと会う事を許されました。
そしてレードンは言ってやりました「神獣クロイセ、あなたは間違っている」と。
神を叱咤する、勇気のいる事でしょうがファレットの言葉を受けた今のレードンならば臆する事はありません。
クロイセは民の為に完全な世界を築こうとした、それは閉鎖された社会によって成り立つ。
しかし、その結果やはり民に犠牲を強いらざるを得ないのなら本末転倒ではないか。
民の中に芽生えた感情や心を潰してまで守る社会は過ちではないか。
クロイセはレードンに投げかけます、民をバルバスとの戦いに狩り出し犠牲を出すのはバルバスと同じではないかと。
「神王伝説」ではレードンは自分がバルバスやマリードと同じになるからと混沌から目を背けました。
しかし今は違います、レードンは民に呼びかけ、本人の意思で本人の行動を決めてもらおうとしてるのだから。
レードンは社会を考える公(ファリス)の精神だけでなく、自己本位な私(ファラリス)の精神を考慮しています。
レードンは自分が人間である事を強く意識しました。
だからこそ、自分の意思で決め、自分の意思で行動し、その結果を持って未来へ繋げようというのです。
過ちは正すし、罪は背負う、そして誰かが続いてくれれば本意でしょう。自分の中に芽生えた想いを大切にしつつね。
不器用ですが、人の子レードンがこの5年間で導き出した答えです。
そしてレードンはクロイセと真っ向から向き合い、願いました。
クロイセから全権を預かり、真紅の部族を導くことを。
それが"真紅の皇帝"誕生の瞬間でした。
これから15年間レードンは真紅の部族を導く事になります。
セルヴィオを殺め、スループを占領し、友ナーセルと殺し合いを演じてまである自分の想いを貫きました。
そしてそれが終わった後、レードンはナーセルと共に20年前に失った大切な人を取り戻す戦いに身を投じます。
その話は「蟻帝伝説クリスタニア」と「封印伝説クリスタニア」で。
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