「新ロードス島戦記5 終末の邪教(上)」作:水野良 出版社:角川書店

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★はじめに

いよいよクライマックスが近い「新ロードス島戦記」。

前作「ロードス島戦記」ではカーラを倒し灰色の呪縛から解き放たれました。

そして今作「新ロードス島戦記」ではカーディス教団をどうにかするのがクリアフラグとなるでしょう。 


「クリスタニア」によればロードスは後に呪われた島から解放された島へ呼び名が変わるそうです。

それは灰色の呪縛から解放された事を意味しますが、実の所もう一つのものからの解放も意味するのではないでしょうか。

それこそは破壊の女神の呪縛です。暗黒の島マーモこそは破壊の女神カーディスの骸が横たわる場所、故にその力も強い。


ロードス創世の二大神、大地母神マーファと破壊の女神カーディスは対を成す神格です。

カーディスが今際の際に大地を呪い、マーファがその大地を大陸から分断し、呪われた島ロードスが生まれたといいます。

肉体を失ってからも、この二大神は戦いを続けていると言われています。

世が泰平の時はマーファが、荒ぶる時はカーディスが優勢だと考えられてもいます


「戦記」ではロードスの地で昔から暗躍してきたロードス二大裏ボスの"灰色の魔女"と"亡者の女王"の内、前者を倒したのです。

このロードスが真に解放された島になるためには"亡者の女王"カーディス教団に打ち勝つ必要があると私は思います。

終末の力は暗黒の島マーモで禍々しく渦巻いています。スパークと仲間達が、終末をもたらすモノ達に挑むのがこれからの物語です。


しかし話は簡単にはいきません。"亡者の女王"は転生し、相反するマーファの聖女として今を生きているのです。

彼女はマーファの聖女ニースにして"亡者の女王"ナニール、そして"亡者の女王"ナニールにしてマーファの聖女ニースです。

「戦記」ではマーファとカーディスという対を成す二柱の女神の魂に触れた彼女ですが、今また岐路に立たされています。

両者は絶対不可分の関係にあります、それでもニースは今生を最後の人生にしようとしているのです


彼女は賢者スレインとマーファの司祭レイリアの娘ニースとして、愛するスパークと共に破壊の女神の教団と戦います

結論から言うと勝ちます、しかしそれがどういう形と犠牲をもってしての勝利なのか、そして本当に勝利といえるのか?

この戦いこそは、シリーズ累計1000万部を越え、文庫も20冊を突破したロードス島シリーズのクライマックスといえるでしょう。


第T章 闇の森の妖魔

★1〜3

海峡を封鎖していた魔船は攻略し、マーモ帝国の要であったヴェイルは捕縛しました。

しかし、ネータ率いる暗黒騎士達の叛乱を鎮圧し、闇の森の砦に篭るカーディス教団が新たな敵として立ち塞がります。

これまでは公国VS帝国という形式で、カーディス教団は影の第三勢力とでも言うべき存在でした。

ところがその影の存在が、ついに表舞台に現れ、その牙を剥き出したのです。既にマーファ神殿は落とされましたしね


早く闇の森の砦を落とし、カーディス信者達を根絶やしにしたいところですが、事はそう簡単にはいきません。

砦を落すには公国の全勢力を注がないといけません。しかし、最近統率を失ったゴブリンが各地で暴れているのです。

神出鬼没で犠牲を省みない妖魔どもを押さえるには、地方領主達を現地に留めておかないといけません。


既にゴブリン達妖魔は支配者であるはずの黒エルフすら抑えられないほど増長してます。

冒頭ではゴブリン達に殺される黒エルフまで出ているんですよ、これは異常です。

普通なら、ゴブリンにとっては黒エルフを恐るべき支配者で、反旗を翻すなんて正気の沙汰ではありません。

が、中途半端に知恵をつけたゴブどもは、上手く公国の騎士を倒せた事で、大人しく従ったままではいなくなってきたのです。


体力不足の黒エルフです。ゴブリンなら、犠牲を厭わず数で押し切る事も可能でしょう。

そうして黒エルフの統治から離れたゴブどもは、以前と違って奪いたいだけ奪い、殺したいだけ殺し、結局は討伐されるのです。

以前なら黒エルフの命令通りに引き上げたものですが、もうそうはいかないのです。例え後で皆殺しになろうと、目先の掠奪が大事

非常に厄介な状態ですね。黒エルフの支配下にあればある程度動きは読めますが、欲望のままに動く今の方が危険です。


ゴブ達は自覚なしに、カーディス教団の追い風になってるんですね。

ゴブが各地で暴れていたら、カーディス教団に兵を差し向ける事が出来ない


ゴブリンやコボルドといった妖魔は凄まじい繁殖力を持っています。

その旺盛な繁殖力は莫大な数の雑兵となり、新旧マーモ帝国の戦力となってきたのです。

それは海の向こうのベルディア帝国でも同じです。かの地では300年以上、妖魔はクリスタニア侵略戦争の尖兵でした。


その繁殖力は諸刃の剣で、狭いマーモ帝国やベルディア半島では食糧不足を生む原因でもあります。

だからこそ、マーモやベルディアは侵略を続けてきたのです。妖魔を抱えている限り、戦力には困らないけど食い扶持には困る

最早卵が先か鶏が先かですね。戦争の為に妖魔を養ってきたのか、妖魔を養う為に戦争をするのか………(苦笑)


「暗黒伝説クリスタニア」ではベルディア帝国は、そのしがらみを断ち切ろうと妖魔達と手を切ったのです

ゼーネア率いるマーモの黒エルフ達にも、妖魔の問題はやはり深刻です。

ベルディア帝国に習えとは言いません、数が少ない彼らには妖魔は貴重な戦力ですから。

でも、増長したゴブどもを飼っていくなら、最早戦で使い減らすしかない所まで来ているんじゃないですかね。

大量の食料を配給したところで、今更以前のような愚鈍で従順なゴブに戻るかは疑問ですし。


リーフ「妖魔たちを味方にできないかなぁ。現にマーモ帝国はそうしていたわけでしょ?」

それは現実問題無理ですが、発想は悪くない。妖魔はこのマーモの自然です

全滅させるなんて不可能なんだから、折り合いの付け方を模索しようという発想はいいですよ。

とはいえ、妖魔は古来から人間・妖精の敵ですからね。ロードス本島の諸国やファリス教団、エルフやドワーフが承諾するかな?


スパークが以前言っていたように、闇から目を背けず、呑まれずがこのマーモの統治には不可欠です。

目を背けない事は簡単です。ではどうやって呑まれない様にするか?。それには具体案が必要となるのです。

公国が妖魔の存在を許そうとも、相手はそれを理解してくれないという問題があります。だって、妖魔だし。

ならば、ゴブたち妖魔を飼いならせる相手を間に挟めばいい。つまり、黒エルフとの同盟です

それだってやはり色んな所から反対されるでしょう。しかし、それを除けば現実的な解決策です。


話は変わりますが、スパークがついに決断を下しました。

スパーク「君(ニース)が俺の許嫁であることを、人々に知らせようと思う

ニース「もしも、わたしが亡者の女王として覚醒したら、あなたの手で滅ぼしてくださいますか?」

スパーク「ああ、世界のあらゆる神と、炎の部族の守護神イフリートに誓って……」

やっぱりニースなんですね。リーフはアッサリと身を引いちゃったから、もうこじれようがありません。

あと、フォーセリアにおいては炎の魔神はイフリートではなくエフリートです。


この「リーフ→スパークXニース」の三角関係は、リウイの「ミレル→リウイXアイラ」の関係に似ていると思いました。

でも実際は結構違いますよね、リーフは簡単に身を引いちゃうし。ミレルだったらこんなに簡単に引きません(笑)

リウイとアイラだって、スパークとニースのに比べると、許嫁とは思えない関係だし。リウイの方から指輪を贈ったのにねぇ。


でも、スパークが自然体で接する事が出来る異性はやはりリーフだけです

リーフはスパークが選んだ相手がニースだと分かっています。でも同時に、スパークが自分を必要としている事も分かっています。

そんな優柔不断な相手なのに、こうして傍にいてあげてるんです。なんていい娘なんでしょう。


あとヴェイルなんですが、どうやら「暗黒の島の領主」でブルネイが閉じ込められていたあの部屋に幽閉されてるそうです。

この部屋は外からは容易に開けられますが、中からは脱出は不可能です。どうやら"テレポート"も効かないようだし。

ということは、この部屋には"アンチ・マジック"か"ルーン・アイソレーション"がかかってるんでしょうね。

敵から発見されるのを防ぐ為にはそういった設備もいるでしょう。普通の部屋なら、"シ−スルー"を使われたらまるっとお見通しです(笑)


ヴェイルの扱いはかなりいいです。まぁ勝利宣言のダシとして処刑される運命なんですけどね。

なのにも関わらず、ヴェイルはスパークの勝利に敬意を抱き、醜態を見せません。

ライナのガンも余裕で流し、逆に殺気をお返しするぐらいです。まだまだ腑抜けていません、バグナードが誅殺しにくると分かっていてもね


でもカーディス教団と戦うのならば、全面的に協力する気です。彼にとっては、カーディス教団は愛する人の仇ですから。

ここにいるのは権力の座を巡って争った結果生まれた、勝者と敗者です。しかし、相手の存在を全否定するような間柄でもないんですね。

流石に本物は違いますね。知っている事は全部話すし、命乞いもしない。だけど、ネータとの夢は死ぬまで、いや死んでも忘れない


あとヴェイルはバグナードがバンパイアのお爺ちゃんになった事も話します。流石のニースも驚いてましたよ。

でも大丈夫、もはやバグナードは定命の者達を見物するだけです。復讐とかはしませんよ。

これからは「頭にノのつく自由業」をエンジョイすべく、魔術やら騒乱やらに関心事を持ちながら存在していく事でしょう。

まぁ終末が来るとなったらどうなるか分かりませんけどね。カーディスによってノーライフとなった場合、次の世界に転生出来るのかな?


一応ノーライフは暗黒魔法を10レベルで使うので、"リーンカネーション"を使えるように思えますよね。

でも使えません。ノーライフは古代語魔法によって誕生するので、闇の神の寵愛は必要ではないんです。

だから、バグナードは生前のダークプリースト3でファイター1のまま(らしい)です。間違っても"コール・ゴッド"なんて使えません(笑)

流石のバグナードも、終末を超えられないとあったら、カーディス教団の齎す終末を阻止しそうですが。


そしてヴェイルとニースの推測で、レイエスが転生者フィオニスであろうと予想がつきます。

これで完全に敵はカーディス教団という意識が働きますね。スパークにとっては、フィオニスはニースの元彼ですか(笑)

スパーク「今夜は、オレの部屋に泊まってくれないか?

さり気なく急発展してますが、その辺の事は詳しく書かれてません。まぁ、もう夫婦のようなものだし(苦笑)


★4・5

こちらはマーモ帝国………いや、カーディス教団の巣窟となった闇の森の砦です。

既に砦には暗黒騎士や闇司祭の姿はなく、義勇軍という名のカーディス教徒が住み込んでいます。

数も2千に達しているらしいです。2千といえば、一国の正騎士団の数とそう変わりません。

いざ戦となったら士気は高いんでしょうが、錬度は低いでしょう。まぁ数は脅威ですけどね。


フィオニスはニース(ていうかナニール)がスパークと結婚するのも大して気にしてません。

元々ナニールは奔放な女性だったそうですから。フィオニス1人だけに身体を許していた訳でもないでしょうし、その逆もそうです。

現にフィオニスはネータを抱いてるしね。本命が変わらなければ浮気は無問題、スパークだったら考えられませんね(苦笑)

フィオニスが言うには、ニースがスパークを欲するのは本性とは真逆の事をしようとしてるからだそうです。

それは彼女の本性が変わらない事も示す…………違うとは言い切れないので痛いですね。


あと、ちょっとサーキスの性格が気になりました。彼は次の世界への転生は望んでいません。彼が望むのは完全なる虚無です。

フィオニスはカーディスに仕えながらも、次の世界への転生が目的です。しかし、サーキスが言うにはカーディスが求めるのは純粋な破壊です。

すなわち、終末の巨人も始原の巨人も滅びればいいと思っています。実は一番カーディスの教義に忠実なのかもしれませんね。

残念ながら?サーキスの願いは叶いません。流転こそはこの世界の究極の世界律、どんなに足掻こうが終末も始原もやって来ます

不完全で醜悪な世界など要らない、この世界に完全なる死を。彼は彼なりの理想を持っているんですね、フィオニスとは違う方向に。


フィオニスの元にゼーネアが謁見に来ますが、まだレイエスとして振舞います。

黒エルフはファラリスの眷族、カーディスとは相容れない存在です。いずれは袂を分かちますが、利用出来るだけしようという事です。

しかしゼーネアはおよそ500の同族を守る族長です。そのまま馬鹿正直に従う筈がありません。既に異変に気づいていますよ。

ゼーネアはゾンビの軍勢が何処かに潜んでいるかのようだ、と言っていました。それは単なる比喩なのか、それとも事実なのか。

確か暗黒騎士達は義勇軍のゾンビに敗れましたよね、そしてその遺体もゾンビになるのなら………事実を言い当ててる事になりそうです。


ゼーネアは腹心のカイレルと話し合います。これからどうしたらいいか?

帝国(実はカーディス教団)は自分達を使い捨てにしようとしてるし、妖魔は言う事を聞かないし、本島から来た人間・妖精は敵だし。

実は彼らも窮地に立たされているんですね。この暗黒の島にあって、彼らは闇の森に住んでいたいだけなのに、それが許されない。

カイレルはゼーネアを守りたいとか言ってるし、何時の間にやらここにも愛が生まれていました。

彼らにも生きる権利はある。善悪なんて、人間の都合だしね。存在そのものは罪にはならないのにね。


そしてカイレルは一か八かの賭けに出ます。公都に赴き、リーフを攫います。

勿論それはリーフの狂言、スパークとゼーネアの交渉の場を作ろうと敢えて同行したんですよ

リーフ、ゼーネア、カイレル……今回の文庫の表紙になるだけの事はありますね。

彼らは必死で自分達がすべき事、出来る事を行っているんですよ。


第U章 同盟

★1・2

リーフはスパークとダークエルフを話し合いのテーブルにつけようと、故意にカイレルに同行しました。

リーフが攫われたと聞いたスパークの怒りようときたら、もう髪が金色になって逆立ちそうな程でした(笑)

何だかんだと言いつつも、やっぱりリーフが大切なんですね。この荒れようは過去最高ではないでしょうか、血管切れそうです。

馬をつぶれそうな程疾走させ、闇の森へまっしぐらです。今なら楽に討ち取れそうですね。


スパーク「リーフに、もしものことがあれば、マーモ公国の総力をあげて、ダークエルフを皆殺しにしてやる

サラリと過激発言。今のスパークはきっと、怒りの精霊ヒューリーが絶好調に荒れ狂っている事でしょう。

スパーク「公王の友人を手にかけたりしたら、どういうことになるか思い知るがいい」

公王の友人ねぇ…………、ライナの言う通り友人ではないでしょう。最高に気が合う異性………それは伴侶として一つの理想ですね。


それでもスパークはニースと結婚するんですよね。既にニースはウィンドレストで王妃のように玉座の傍らにいますよ。

マーファの神官としてではなく、明らかにマーモ公王であるスパークのお妃様を自覚しています。でもスパークのリーフへの思いも自覚しています。

ニース「とうとう、自分の心に気づいてしまったのね……。スパークにとって、わたしは最愛の女性ではないのかもしれない」

そして、ニースにとってもスパークは最愛の男性ではない。では最愛の男性が誰かといえば………魂の伴侶とも言うべきフィオニスなんでしょうね。


以前ニースは夢の中でフィオニスと出会いましたね。その時、間違いなくニースの心は震えました。

かつてナニールとしての自分がフィオニスを愛したから、それから遠ざかろうとスパークを求めたと本人は分析しています。

それだけなら誰でもよかったんでしょうが、それでもニースはスパークを選びましたね。

まぁ他に手頃な相手がいなかったというのもありますが(苦笑)。最上級ではなくとも、ニースはスパークを愛してると思いますよ。

バグナードに攫われた時もそうでしたね、ニースはスパークに助けを求めた。何も伴侶が最愛の相手である必要もありません。


アルドなんてニースとスパークの結婚には大喜びでしたが、ニースとしては複雑なんですよね。

アルドが心から祝っているけど、スパークにとってもニースにとっても、何の憂いもない婚約関係ではないし。

私は以前は小ニースは大ニースに似てると思ってましたが、話が進むに連れて全然違うと思うようになってきました。


大ニースは"マーファの愛娘"の名の通り、素の状態でも大地母神の聖女としての神秘性や暖かさといった、説明しきれないものを持っていました。

でも小ニースは、結構無理してきたように思えます。今だってそうです、ナニールに怯え、スパークを求め、結構な所があります。

一つの扉として、"亡者の女王"として、ただの聖女とは言い切れない不純物を持っているようで。大ニースよりも大分人間臭い。

それでも小ニースは聖女なんですよ。ただ同時に"亡者の女王"でもある。ON・OFFなしのジキルとハイドというか、両面宿儺というか。


ニースは今や無人となった地下のマーファ神殿に降りる際、サーキスと遭遇しました。前も似たような事がありましたね。

帰りは魔法で一瞬だろうけど、行きはやはり徒歩でしょう。どうなってるんだウィンドレストの警備体制(笑)

なお、スパークとニースは昨晩本当に身体を重ねたらしい。でも朝になったらリーフを探しに、スパークは飛び出して行っちゃったんですよね。

身体を重ねても心にはまだ僅かな距離がある、やはり二人はベスト・カップルという訳ではないのかもしれない………。


サーキスですけど、今回はこのマーファ神殿で起きた惨劇について語りに来たらしい。

あの時逝った転生者アドリーは、それによってニースが憤怒を覚え、ナニールに戻る事を期待していたんですよね。

ところがそれは見込み違いでした。フェリーナ司祭や多くの神官とドワーフ職人が死んで、ニースは悲しみこそすれ、ナニールには戻りませんでした。

しかし怒りを覚えないかといえば、そうではない。ニースはふつふつと怒りがこみ上げています。自制しようとはしてますけどね。


ニースは"亡者の女王"として覚醒する事を恐れ、それ故に正反対の存在であろうとマーモ公妃や聖女であろうとしていると自己分析しています。

サーキス「一度、御自分と向き合われてはいかがですかな?すべての答えは、あなたの中にあるのですから……」

勿論挑発ですが、一つだけいい事を言いました。「全ての答えは自分の中にある」、結局はそれしかないんでしょうね。

相手を否定し消滅を願う事はカーディスの管轄です。ナニールを恐れ、逃げてばかりではジリ貧ですよ。


ニース「わたしは今、あなたに怒りと憎しみを覚えている。
    その心のままに、あなたの命を奪えば、あるいは、私は亡者の女王として覚醒するかもしれない

今まで見せた事のない顔を見せています、本気で殺る気です。そしてニースは"フォース・イクスプロージョン"などを使おうとします。

ニースの魔力は12、抵抗出来なかったら7振って19点ほど来ますね。サーキスもレベルが高いでしょうが、2発食らうと生死判定かも

あまりの迫力にサーキスは心から恐怖してましたよ、こういう所が大ニースとはちょっと違うんですよね。


結局はサーキスは"リターン・ホーム"?でトンズラしますが、ニースはまだニースのままでした。ナニールには戻りませんでしたよ。

覚醒したらそれまで、遅いか早いかの違いですからね。そうなったらスパークが殺してくれるし、ニースも腹をくくったんです。

でも泣いていましたよ。自分と向き合うしかないと分かっていても、それではそうしましょうと割り切れるものではないでしょう。

自分が自分でなくなってしまうかもしれない。そもそも、今の自分は本当の自分ではないのかもしれない。

前世の記憶が現世の記憶と同居し、自分自身のゴーストすらも信じられない程追い詰められて………。


今のニースにはスパークが必要なんですね、最愛の人でなくとも。ニースとナニールは、最早切り離して考えるべきではないのかも。

私は最初の方では単純に別人格、それこそカードの表と裏のようなものだと思ってきましたが、多分それは違います。

今の彼女はナニールとしての記憶も持っています、でもニースとしての記憶も持っています。隔離された人格ではないんですね。


私が冒頭でも言っているように、ニースとナニールは不可分です。今の彼女はニースでありながら、ナニールでもあるんでしょう。

この状態はニースとしての人格が主導権を握っているだけで、ふとした事でナニールの方が主導権を握るかもしれません。

今でこそスパークを必要としているけど、覚醒してナニールになったら今の仲間ですら虫けらのように思えるようになるのかも………。


今の彼女がニースで在る為にはどうすればいいのか、分かりません。

ニースとナニール、どちらか自然に在る筈の方に流れていくだけなのかも。

しかしそれは、ニースである今の彼女自身の希望とはそぐわないかも知れない……。


★3・4

スパークの方ですが、リーフの献身もあって、どうにかスパークとゼーネアは話し合いの場に漕ぎ付けました。

スパークが自分を必死に探していると知った時のリーフの喜びようといったら、もう……(苦笑)

ライナはリーフを支持していましたが、その気持ちが分かる気がする。結構お似合いだもの、二人は。


スパークの性格を考えると、真相を知った時怒りそうですよね。「どれだけ心配したと思ってるんだ!」とかいう感じで。

しかしライナは心得たものです。スパークよりも先にリーフを叱りました。

というのも、「男という生き物は、好きな女が他人から強く言われると、条件反射のように庇うもの」なんだそうです(笑)

リーフ「ごめんなさい」

スパーク「あまり彼女を責めないでやってくれ

なるほど、効果覿面(笑)。見事なフォローですね、流石は経験豊富なライナです。その調子でリーフとの仲を応援して欲しい。


まぁそれはいいとして、スパークは希望通り黒エルフの族長ゼーネアと交渉が出来た訳です。

その結果、公国は闇エルフに闇の森での自治権を認めました。そして、闇エルフは公国との不戦を誓いました

つまり両者の間に同盟が結ばれたんですね。これで各地で跳梁跋扈するゴブリンもどうにかなるでしょう。

もちろんダークエルフは公国の領土内においては、公国の法に従いますよ。存在そのものは罪でなくとも、法を破ると罪になるのです。


そして、その証として、リーフは闇の森で、ゼーネアはウィンディスで暮らす事になりました

言い出したのはリーフです。彼女が、自分からそれを申し出たんです。それは………スパークの為に

人間からもエルフからも忌み嫌われるハーフエルフの彼女ですが、スパークの不器用な愛に応えようとしたんですね。

そして、それを聞いたときのスパークの苦しみようを見てると、やっぱりこっちの方がいいカップルだったのかも知れないと思いました。

もしもスパークがニースよりも早く、リーフへの想いに気づいていたら、違った事になってたかもしれません。


リーフは本当に化けたと思います。「戦記」ではそうでもなかったけど、「新」になってからは回を追うごとに好きなキャラになっていきました。

孤独を抱えていて、それでも好きな相手の為に健気に、何かをしようと頑張っている。

こんなにいい娘なのに、スパークはニースを選んだんですね。それはそれでいいけど、何もそれだけが道ではなかったんですよ。

水野先生の執筆活動は見つけていくことだと何処かで聞きましたが、それは読者の方も同じなのかもしれませんね。

初めから出来上がっている物語を追っていくのではなく、読むにつれてリアルタイムに物語が作られていくのを感じ取れる(気がする)。


★5

やがてスパークは公国と繋がりのある各教団・種族との話し合いの場を設けました。

参加者はマーファを除く六大神の教団とエルフ・ドワーフ・闇エルフの代表者です。

六大神と言った通り、ファラリス教団の代表者も参加してますよ。クローゼンという壮年の男です。

マーモは闇エルフとの同盟に続き、ファラリス教の解禁も決定したのです。


そうなると当然ながらファリス教団の方からクレームが来るわけです。予想してたとはいえ、やはり辛い。

ちなみに出席しているのは御馴染みのアリシア司祭です。当然ながらゼーネアとクローゼンへの嫌悪感を隠しません。

しかしスパークの態度は断固としたものでした。マーモにはマーモの法がある、罪人は公国の法に背いた者のみ


確かにファリスの(ていうかヴァリスの)法に従えば、黒エルフもファラリス教も忌むべき存在です。

でもここはヴァリス王国ではなくマーモ公国です。両者がルールに従う限り、罰する事も誅する事もしませんよ


アリシア「マーモ公が苦労なさってきたのは、わたくしもよく知っています。だからこそ、それを自ら傷つけるような事はして欲しくないのです」

教義の事だけではなく、スパークの働きを賞賛する気持ちからも反対してるんですね。その点は嬉しいですよ、本当に。

確かにフォーセリアの殆どの地域ではファラリスも闇エルフも認められていません。

ロードス本島とは異なる方針で国を動かしていくと禍根が残りそうですね。ファンドリアは今のところ何とかなってますが。


もうちょっと融通が効くファリス信者というのは存在出来ないんでしょうかね、私は出来ると思うんですが。

アリシア司祭も、バブリーズのクレアみたいにスイフリーのような存在がいれば、どんどん染まっていく気がする(笑)

ファリスの求める秩序とやらの中に、法に従うファラリス信者と黒エルフは存在出来ないんですかね?

それらを許す法を悪法だと言って決して認めないほど、ファリスは狭量ではないと思います。ていうか、そうであって欲しい。


ちなみに他の教団とドワーフ・エルフは異論はないらしい。エルフですら、ですよ。

彼らはこの闇の森は、自分達の流儀では御しきれないと分かってますからね。闇の森には闇エルフ、適材適所ですよ。

何しろこのマーモにおいては闇の森の植生が自然なんです。本島の植生を強制するなんて不自然な事は、森の妖精として出来ないでしょう。

勿論エルフ達は闇エルフが協定を破れば戦うんでしょう。しかし公国としては、それはエルフを含む他の団体も同じですよ。


それはそうと、ラーダとチャ・ザの教団もマーモに進出してたんですね。何処かに書いてあったかな?

「ロードス島シリーズ」においては、チャ・ザもラーダもメインキャラでは登場してないんですよね。

ロードスだけでSWは知らないという読者にとってみたら、ピアノの黒い鍵盤並に未知の領域でしょう(笑)


こうしてマーモ公国は新たな体制に進出した訳です。ある意味では、これが本当の建国なのかもしれませんね。

そしてスパークはカーディス教団の存在を列席者に知らせました。これで公国はその討伐に乗り出せる訳です。


第V章 終末の門

★1

このフォーセリアには、神を基準に大きく分けて3つの勢力があると思います。すなわち光・闇・中立です、

ファラリス教徒と闇エルフは闇の神々に属する勢力であり、どちらかというと光の神々に属する勢力であるスパーク達とは争いになる事が常です。

しかしそれは単純に属性の違いであって、世界構築においてはいずれも不可欠の存在です。今回のように、手を組むこともあるでしょう。

そういう意味ではクリスタニアの中立の神々に属する勢力である神獣の民も同様です。信仰対象が違うだけですよ。


これらは世界創造という点ではどれも必要なものです。ミルリーフや名もなき狂気の神だってそうです。

コインの(光/闇)と(闇/光)と側面(中立)のような関係ですよ。

スラッシュで区切られているように、どちらが表でどちらが裏かなんてのは、価値観の相違によってどうとでもなります。

光と闇は不可分の特性だから、どちらかが絶対でどちらかが淘汰されるべき、という訳でもありません。両方必要です。

だから光と闇、ファリスとファラリスは結局は譲り合わないといけません


フォーセリアにおける「混沌」というものは、決して悪しきものではありません。ていうか、この場では善悪なんて観念は捨ててください

混沌とは「原初の力」、全てのものはそこから発しています。フォーセリアにおける「創造」とは混沌から秩序を選び出していく作業なのです。

混沌から秩序を拾い出す事が「創造」ならば、秩序を混沌へ還す事は「破壊」ではないでしょうか?

混沌は変化の可能性、創造にも破壊にも必要です。退化と破壊の可能性を恐れるあまり、進化の可能性をも放棄するのは臆病というものです。


ここで気をつけておきたいのは、ファラリスと混沌は似て異なるものだということです。

ファラリスとは「自由」、混沌とは「可能性」です。そして、混沌とは完全な自由度なのです。イコールではありません。

水野先生の構想では、ファリス⇔ファラリス、秩序⇔自由、そして創造⇔破壊という対立関係のようです。

創造といえばマーファですから、この女神は破壊の女神であるカーディスと対を成す神格にならざるを得ないのですね。


ファリス(光・秩序)もファラリス(闇・自由)もフェネス(中立・周期)も、これらに属する他の神々も、

何度も言いますが、世界創造には必要な存在です。これらは始原の巨人から生まれたので、役割が違うだけで同胞といえます。

しかし、カーディスは始原の巨人と対をなす終末の巨人に属するものです。


神々は皆、自分の司る概念を広めようとしているようですが、それらは築くことであって壊す事ではない。

しかし、カーディスはまさに破壊なのです。終末からやって来ただけに他の神々とは相容れない存在です。

だからこそ、ファラリスは神々の戦いを起こしてまでカーディスの破壊を止めたのですよ(後述)。


もっとも、それは今の世界を基準に考えた場合です。

カーディスは今の世界を破壊する、同時に次の世界を創造するのです。破壊と創造は等価ですから。

今の世界に生きるものとして、今の世界の破壊を防ぐのは正当なのです。しかし次の世界の存在としては、今の世界を破壊する事こそが正当

物事は相対的に考えるべきですが、自らの立ち位置は決めるべきでもあります。認める事と拒絶する事は両立できますよ

大切なのは、善悪で物事を考えない事。そして、正当ならばそれを行使する事。例え相手が正当だとしてもね。

それは格好悪い事かもしれないし、無様なのかもしれない。しかし恥じる事でもない。やるべき事をすれば、それでいいんですよ。


相手が「終末のもの」であるカーディスならば、普段は争う光と闇の神々の末裔たちも手を組む余地はあるのですね。

極端な話、ファラリスの創造した魔神ですらカーディスが相手となれば、それと戦う事はあっても仲良くなる事はない筈です。

そんなカーディス教団はこのフォーセリア世界の住人の共通の敵です。共通の敵だからこそ、団結が必要なのです。

そういう敵と戦うためには、今回のマーモ公国のような許容範囲の広い組織がまとめる事が大切なのです。

クリスタニアにおいてはあらゆる民の混成軍である獣の牙に期待が集まるのと一緒ですね。


ファラリスや闇エルフなんて問題は、カーディスにくらべたらちっちぇーものです。

そういう事はカーディス教団を滅ぼしてから、やりたい人が適当に決着をつければいい。

ファリスとファラリスの戦いは単純に価値観の相違ですから。宗教や思想の争いと大差ありませんよ。

しかしカーディスが相手となれば、生きるか死ぬかの生存競争ですからね。敗北して終末がやってきたら洒落になりませんよ。


★2〜6

さて、スパークの元に集まっている軍勢は五千を越えるそうです。先の邪神戦争並のスケールです。

公国の騎士団はもちろんエルフ・ドワーフ・黒エルフ・六大神の神官戦士たち。この暗黒の島だからこそ揃う軍勢です。

ただしマーファ教団はカーディス教団の鉄砲玉のせいで全滅したのでこの場には居ません。

さらには闇エルフの指示により、ゴブリンまで投入できるというのだから驚きですよね。これぞマーモです。


ファリスとファラリスの神官戦士が一緒なんて異例ですよ。

もちろん快く思っているはずがないんですが、今は場合が場合なので大人しいです。

黒いファラリス教徒たちと、白いファリス教徒たち。結構綺麗だと思うんですけどね。

流石にクリスタニアのフォレースルのように共存するのは難しいでしょうけど。


ちなみに、ファラリス教団は例の大神殿を修復して布教活動に余念がないらしい。

クローゼンは結構頭が良さそうなので、無茶はしないと思いますよ。案外にこやかに布教活動してるんじゃないですかね。

この状態を維持する為にも、犯罪は犯さない事を祈るばかりです。法に触れるような事をしたらやっぱり裁かれるし。

クリスタニアの古の民みたいに自制心を持ち合わせた自由神として広がればなによりなんですが。

欲望に忠実である事と、熱心である事は微妙に違いますよ、パクられるか否かに繋がります。


色々不安はあるけど、スパークは彼らに出撃の号令を下しました。

決戦場所である闇の森の砦には公国の軍勢にも劣らないほどのカーディス信者が集まってたりします。

カーディス教徒をはじめとする「終末のもの」に帰属するものは、今の世を捨て、次の世界への転生が約束されています。

それこそが終末信仰の魅力であり、下っ端信者の求心源なのです。

もっとも実際に転生できるのは高位の闇司祭だけでしょうから、彼らは無駄死なんですけどね。


死の恐怖からの脱出、確かに魅力的ではありますけど、実現はしないし。

スパーク「オレはこの人生だけで手一杯だし、満足できるだけのことはしてみせるさ」

これぐらいで丁度いいのかもしれませんね、なまじ色々考えるから恐怖に駆られるんですよ。

こう言うとスパークが馬鹿のように思えますが、彼は常に一生懸命なだけですよ。だから転生なんて考えてる暇すらない(笑)


さて、戦いですが実に凄まじかったものの勝利を収めました。

例の森の中の砦(ヴェイルとネータが会っていた所ね)での戦いは、多くの犠牲を出しながらも勝ったんです。

カーディス教徒は死を恐れませんからね。死を恐れない狂信者は戦うだけの魔法生物のように厄介でした。


ゴブリンは何日も前からトンネルを掘って、かく乱作戦を実行しました。質より量の妖魔ですが、味方だと不思議なものです。

あと、ドワーフ達の死を厭わない攻城兵器の使用シーンもありました。殆どは戦死しましたが、それだけに印象的でした。

フレーベがいなかったのが残念ですが、いたら1人で突破出来た気がするからやっぱりいいかな(笑)


ニースも今回は参戦しました、ていうか強いです(苦笑)

かつてナニールはレイピアを愛用したらしいけど、あえてそれを使って自分を試す事も兼ねて戦いました。

見ている方は覚醒するんじゃないかと冷や冷やしましたが、幸いニースのままですよ。

ワールドガイドではニースのファイターレベルは3なんですが、なんか5ぐらい軽くありそうな戦いぶりでしたよ。

ナニールは武器の扱いも達者だったらしいんで、当然かな。ちなみに鎧はミスリルのチェインメイル。


何処から持ってきたのかと思ったら、大ニースのお下がり説などを指摘してもらいました。

大ニースは魔神戦争の時に、石の王国で見つけたミスリルチェインをフレーベに直してもらって、魔神王戦で装備してたんですよ。

ちなみに大ニースの筋力は14で、小ニースは9。もしも大ニースの筋力にピッタリだったとしたら、大き過ぎですね。

そもそもチェインメイルは必要筋力が10からなので、高品質でない限りニースには合いませんよね。余りにも差があると修正が大きいし。


フィオニス達転生者は下っ端に足止めをさせておいてさっさと移動してしまいました。

とはいっても逃げたわけではなく、本当の奥の手を出そうとしているかのようでした。


フィオニス「ここに教徒を集め、マーモ公国の全戦力を釘付けにできた

サーキス「終末を否定する彼らには、黄昏の時がいかなるものか想像もしないでしょう」

フィオニス「生贄の用意は?」

サーキス「転生者バートルが動いています」

という具合に、何かとんでもないことを企んでいます。


黄昏ですか、私には馴染み深い言葉ですよ。

私の好きな「.hack」では黄昏というのが実に重要な言葉でしたし。

TWILIGHTには二つの意味があります、黄昏と薄明(黎明)です。


黄昏だと日没前になるし、ワーグナーはラグナロク神々の黄昏と訳してたりするせいか縁起は良くない。

でも薄明だと日の出前の薄明かりをも意味するのです、この際揚げ足でもいいからげんを担いでおきたい。

しかし安心してはいけません、夜明け前が最も暗いという格言もあるのです、そう上手く事が運ぶわけがありません。

カーディス教団の仕出かそうとしてることが黄昏に繋がるのか薄明に繋がるのかは分かりません。

薄明でも大変そうですが、黄昏に比べたらまだなんとかなりそうです。


★7

闇の森の砦の攻防戦は、マーモ公国の勝利に終わりました。しかし、本当の戦いはこれからだったのです。

ファリス教団のアリシア司祭は、カーディスの力によって転生したバンパイア・バートルに拉致されてたりします。


ファラリスのケース同様にカーディスの寵愛を受けてバンパイアへ転生した者がいてもおかしくない。

なにしろカーディスは不死生物を司る神でもあるのですから。そういえば、バグナードはカーディスの力でノーライフに転生しましたよね。

彼は転生者を名乗ってますが、それは奇跡で生まれ変わってきたのではなく、不死人への転生を果たしたという意味なのではないでしょうか。


バートルは運び込まれた戦死者の死体を装い、アリシア司祭を視線の魔力でチャームしたのです。

しかし不可解、バンパイアの視線には確かに魔力がありますが、それは恐怖による麻痺であって魅了ではない。

相手を木偶人形のように操れる視線なんて、ただの麻痺よりも強力ですよ。


これがきっかけで、アリシア司祭は皆の前から永遠に姿を消す事になります。アリシア司祭は一応スパークへの理解もあったので、惜しい限りです。

これじゃあスパークがアリシア司祭を戦場のドサクサに紛れて葬ったようじゃないですか。

そうでなくとも責任を問われるだろうし、後から来た別の司祭はアリシア司祭のような理解者になってはくれないかもしれない。

ただでさえファラリスや闇エルフの件で、ヴァリスとの関係は先行きが不安なのにね。

一応エトはファリスの布教活動だけを命じているので、表立っては攻めてこないでしょうけどね。つくづく、ヴァリス王がエトで良かった。


カーディス教団の狙いは戦力補充の為に更に「終末のもの」を呼び寄せることです。

王城ウィンドレストの地下には石化したカーディスの骸がありましたよね。

バグナードはここで二つの鍵と一つの扉によってカーディスを呼び、ノーライフキングへの転生を果たしたのです。

しかしこの場にはもう一つとんでもないものがあったのです。


それは終末へ通じるゲートです、ここを通ってカーディスは未来からやって来たのです。

渦状に空間がよじれ、紫色の瘴気なども垂れ流しています。禍々しい事この上ない、封印の民だったら"パージ"しそう。

ここを通れば時を越えて終末へ行けるらしいけど試すのは覚悟が要ります(苦笑)

これを利用してフィオニス達は、新たな「終末のもの」を召喚する気なのです。


とはいえ直接このゲートを使うわけではありません、このゲートは敬虔なファリス信者を釣るための餌です。

姿を消したアリシア司祭はここへ連れて来られているのです。目の前にはバンパイア・バートルがいたりします。

目に見えるほどの負の生命の精霊力を纏い、宙に浮いています。流石はバンパイアのお父さんですね。


「名乗れ!今こそ大英雄」ではヘッポコーズに倒されましたが、強力なアンデットである事に変わりはありません。

この化け物を相手に、アリシア司祭は1人で闘わねばならないのです。あまりにも分が悪いです。

最初は紳士的だったバートルも、アリシア司祭が自分をカーディス復活の扉と言った瞬間、急にキレます

バートル「てめぇなんかが、カーディス復活の扉になるわけねぇだろう!!

何故かキレやすい最近の若者口調です、「てぇぇぇめぇぇぇは死ね!」とか言い出しそうです(笑)


バートルは素手でアリシア司祭を我武者羅に攻撃します。

バンパイアの攻撃がヒットすると、精神力を持っていかれるものですが、その様子はありませんでした。

しかしアリシア司祭も負けてはいません、渾身の"バニッシュ"でバートルを消滅させます!!

"バニッシュ"といえば8レベルのファリスの特殊神聖魔法、アリシア司祭ってレベル高かったんですね。

ちなみにバンパイアの精神抵抗は20(13)ですから、この抵抗を破ったのも大したものです。


これだけで驚いてちゃいけません。アリシア司祭はフィオニス達転生者に囲まれ、もはや命運は尽きたと思えるような状況に追い込まれます。

そこでアリシア司祭は目の前に空いた終末へのゲートを閉じようとしました。

かくしてアリシア司祭は、"コール・ゴッド"でファリスをその身に降ろし、ゲートを封じます!!

"コール・ゴッド"ですよ、10レベルの神聖魔法ですよ、彼女がそんなものを使えるほどの信仰心をもっていたとは………。


あとファリスの声というのも、フォーセリア作品では初めて記述されたんじゃないですかね。

ちなみに「汝、我に何を望むか?」でした。これだけとは、ファリスは出演料高いんですかね、何処かの芸能人みたい(笑)


ファリス教団は、フラウスも言っていましたが、とにかく腐敗が激しかったものです。

しかしジェナートやエトの改革により、神学一辺倒ではなく、神の声を聞き神聖魔法を行使できる者も増えてるらしい。

彼女もその一人という訳ですね。"コール・ゴッド"使ってるし、かなり高位の司祭なんでしょう。


仮にレイリアとタメを張る8レベルの超英雄キャラだと解釈しても、凄い事に変わりはありません。

超英雄ポイントを使えば、よりレベルの高い魔法も使えるんです。フラウスも7レベルなのに"バニッシュ"してたし。

8レベルというのは、"バニッシュ"を使っていたので適当に決めただけで、必要性はありません。

超英雄ポイントの量によっては、大ニースのように神を降ろしても魂は砕けずに済むんですけど……彼女は残念ながら砕けてしまいました。


しかし、アリシア司祭が魂を砕いてまでゲートを封じた事は更なる事態の悪化を呼びます。

もう一つゲートが出現し、新たな「終末のもの」が召喚されたのです。

アリシア司祭の覚悟は、最悪の方向に繋がってしまいました。命がけの行為がまったく報われていません。


何故こんな事になるのか、それはこのフォーセリアの摂理が作用しています。

水野先生が考えるフォーセリアとは必滅の運命にあります、遅かれ早かれ必ず滅びるのです。

そして終末の巨人は新たな世界の始原の巨人となり、次の神々が生まれ、世界が創造されるのです。破壊と創造は等価なのです。

結局はそれが自然な営みであり、それを外れる事はあってはならないのです。


後に光と闇と中立に分かれた神々が行った世界を永遠のものにしようという創造は"破壊の女神"カーディスを呼びます。

魔法王国カストゥールの強大な魔力による発展が魔精霊アトンを呼びます。

そして、神獣達による完全な世界クリスタニアの営みが魔神獣を呼び寄せたのです。

カストゥールについては、精霊都市フリーオンを創ろうとしたから魔精霊を呼んだという説もあります。


どれも世界を定常化しようという試みが大きな反動を生み、未来から「終末のもの」を呼び寄せる結果になったのです。

今回もそうです。至高神ファリスによる強大な奇跡の力が、終末を呼ぶ結果となったのです。

大きな定常の力はそれに見合う終末を呼ぶ、悩ましい限りです。


裏設定ではファラリスはそれに気づいたから神々の戦いを起こした事になってます。

不完全な物質界を人間達に委ね、定常化を進めようというファリスに戦いを挑んだのです。

結果として、中立神を除く神々は物質界に介入する術を失ってしまいますが、世界の大破壊は防げたのです

ファラリスに他意があったかどうかは分かりませんが、神々の戦いがなければとっくに世界は滅びてましたよ。


破壊を止めようとすればするほど終末が早まるなんて大きな自己矛盾ですよね。

「世界は永遠ではない、永遠であってはいけない」と水野先生は「クリスタニア完全ガイドブック」で仰ってました。

そしてそんな世界だからこそ次の世界に逃げようと終末信仰が流行るのだとも。

終末を迎えたら生者と死者の魂は何処に行くのだろうか、やはり混沌に還るのだろうか?


人は過去に故郷なく、現在に安住の地なく、未来に約束の地もない。

その生き様とこの世界は揺れ続けねば倒れる振り子、あるいは止まれば転ぶ一輪の車

新しい振り子や車を用意するのではなく、あくまでも揺れ続け、回り続けようというのが、終末と戦う者の心得だと思う。

執拗に定常させようとすれば、終末は早まるだけです。大切なのは、流転する事を許容する事です。


フォーセリアというメガサイクルの中で、自分という小さなサイクルを見出す事が、定命の者に与えられたせめてもの自由です。

未来に終末が待っているからといって、今に絶望して投げ出してしまうのは、私は承認できない。

どんなに無様でも儚くても、自力で輝いて燃え尽きる生き方が美しく格好良い


第W章 公国滅亡

★1

「終末のもの」は生贄を捧げた代償に、アリシア司祭が開けた穴から出てくるようです。

本編では全ての終末のもの召喚に"コール・ゴッド"を使ってるように書かれていますが、にわかには信じがたい事をしますね。

王都にはかなりの数の「終末のもの」がいましたが、生贄1に対して「終末のもの」も1体なんでしょうかね?

たかだか数日で、生贄一人一人に"コール・ゴッド"をしてこれほどの数を召喚するとなると、かなりの労力ですよね。


もしそうなら、一体何回カーディスが召喚されたのやら。魔晶石がなければ、精神力の問題もありますしね。

召喚されたり帰ったり、忙しいものですね。BGMは是非とも「マンボNO.5」でお願いします(笑)。

まぁある程度は"パワーリンク"で、召喚者以外のカーディス教徒が精神力を融通する事が出来るでしょう。


召喚者はやはりフィオニスなんでしょうかね。あともう1人自らを生贄に召喚していた転生者もいたらしいけど。

下手したらフィオニス以外にも"コール・ゴッド"出来るのがいるかもしれない。転生を続けてるだけに転生者は皆レベルが高そうです。

転生しているから全員10レベルかとも思えますが、その必要はないです。これは6レベルの"エターナル・リーンカーネーション"だから。


仮に"リーンカーネーション"だとしてもこれは他人にもかけられるから、当人が高レベル闇司祭でなくても転生そのものは可能です。

ただし永遠に転生を繰り返す"エターナル・リーンカーネーション"は、レベルが若干低い代わりに自分にしかかけられないんですよ。

永遠の輪廻の輪に飛び込むならば、自分自身がある程度レベルをあげないといけないんですね。そこまで甘くはできていないんです。


それにしても、"コール・ゴッド"といえば究極の神聖(暗黒)魔法の筈なのに、何か安売りされてるような気が……(笑)

大陸では"コール・ゴッド"なんて使われるのは極稀だと思いますよ。たまに話を聞きますけど、10レベル司祭自体稀有の存在です。。

アリシア司祭だってやってたし、これでは神様のバーゲンセールです。大陸出身の司祭が聞いたら価値観を揺さぶられそうですね。(笑)


あとサーキスも召喚してましたが、あれは暗黒魔法なのかな。終末のゲートに身を投げただけで、魔法を唱えたようには見えませんでした。

もしかしたら"コール・ゴッド"なんて使わなくとも、ゲートに生贄を放り込むだけで召喚できるのかもしれません。

そうだとしたら生贄を放り投げるだけで「終末のもの」の大量生産も可能ですね。ただし質は大した事はないでしょう。


"コール・ゴッド"等で神に願いを叶えてもらう時は術者の魂が代償になりますが、その代わりに叶う願いは強力無比です。

これは10レベルもの司祭が自分を犠牲にするからこそ、神がそれだけの力を振るえるんでしょう。

しかしファラリス等の闇の神の場合は術者以外を生贄にする事が出来ます。誰でもいいというわけではないようですがね。

この際達成値が30に届けば神は永久に物質界に留まりますが、そうでなければ精々1分程度しか留まれないらしい。

そして生贄によってこれにボーナスが入るらしい。神の奇跡もまた生贄に見合うものなのです。


となれば「終末のもの」も生贄によって強弱が決まるんでしょうね。これが噂の等価交換というやつです。

実際街にいた「終末のもの」は結構固体差がありましたし、高位の司祭とかを捧げない限り大したものは呼べないでしょう。

仮にゲートに生贄を放り投げるだけで召喚できるのだとしても、その辺の般ピーでは大した効果を望めないでしょう。

だからこそ、転生者が自らを犠牲に召喚するのは意味があるのです。そうして召喚されたのはやはり強力でしたよ。


呼び出された「終末のもの」は複数いるようで、公都ウィンディスと公城ウィンドレストを落します

強いですね、不意を打たれたとはいえ城詰めの騎士や兵士はほとんど全滅ですよ。

通常武器無効は当たり前、光の神の長であるファリスの力の反動で呼び出されただけにらしい。そして形状は様々。


そう聞くと「秘境伝説クリスタニア」の魔神獣の従者眷族を思い出します。

ナメクジ男のような亜人やクモサソリのような魔獣とかがそうです。あれらは神獣の従者や眷属の反存在とでもいえる姿をしていました。

魔神獣も魔精霊も終末を呼ぶ原因となったものの裏返しですから、なんとなく納得です。


カーディス信者はクリスタニアのロックイーター同様に、今の世界から離反した「終末のもの」の従者と呼んでいいでしょう。

では「終末のもの」とその従者眷族の明確な定義は何でしょうか。それがよく分からないんですよ。

今回召喚された連中はカーディスやアトン程の力はないんでしょうが、それでも「終末のもの」と呼ばれてました。


それもあって「終末のもの」という呼称と、関連語の定義と関係がますます分からなくなりました。

今回出てきた連中は、カーディスほどの力はないものの「終末のもの」と呼ばれてますよね。

アトンとかよりは貧弱ではありますが、終末を身に纏った存在である以上は「終末のもの」と呼ぶしかないからかもしれません。


カーディスやアトンは意図せずに召喚されましたが、今回の連中は意図的に召喚されたものですよね。

カーディスとかは意図しないからこそ、貯まりに貯まった定常の力に反発するように強大になったのかもしれません。

でも流石のフィオニス達も、カーディスクラスの「終末のもの」はそう簡単には召喚出来ないと思いますよ。

神々にも匹敵する「終末のもの」なんて、それこそ神々や神獣、カストゥール王国のような桁違いの定常の力がないと召喚されないと思います。


その「終末のもの」達の奇襲にあったウィンドレスト城は、それはもう魔神戦争の時のリュッセンのような状態でした。

リュッセンは魔神の大軍勢に滅ぼされたモスの小国の一つです。王城を蹂躙した魔神のおぞましさが、今のウィンドレストのイメージと被ります。

そんな騒乱の中、ヴェイルや囚人達は「終末のもの」を相手にする城詰めの近衛騎士に解放されました。

スパークなら必ずそう命令するから、という判断ですが、確かにそうだと思うのでいい判断だと思いますよ。

でも彼ら近衛騎士は最後まで戦い続けるつもりです。彼らは一応フレイム王国の騎士でしたが、今はマーモ公国の騎士なんですね……。


しかしヴェイルは状況も分からず放り出される訳にもいかず。近衛騎士を巻き込んで"テレポート"で城から脱出します。

ちなみに脱出先は、ヴェイルが以前経営していた農園です。酒造りもしてましたね。

近衛騎士は血を吐く思いでヴェイルと一緒にスパークの元へ向かいました。今更戻っても犬死だし、スパークにより詳細に報告した方がいい。

城で戦う仲間達を置き去りにした訳ですから、忠義に篤い彼のような騎士としては堪らなく辛かった事でしょう。


ヴェイルはその近衛騎士以上に過酷な立場にあるんですけどね。

バンパイアのお爺ちゃんに命を狙われ、愛する人を失い、死を待つだけの虜囚ですよ。

でもカーディス教団はネータの仇ですから、以前も言っていたように戦うつもりです。

それにスパークがこの事態にどう対処するのかというのも、ヴェイルは気になるようです。自分を負かした相手だしね。

理の人であったヴェイルですが、今は心の底からくる情で戦いに赴こうとしてるんですね……。


ヴェイル「さぁ、行くぞ。生き恥をさらしている我々だが、それでも命がある以上、果たさねばならないことはあるのだ

そう言って凹んでる近衛騎士を歩かせもします。ヴェイルが言うように、これじゃあどっちが虜囚なのか分かりません(笑)

彼もまた強い男ですよね。ずっと敵でしたけど、味方なら心強いというキャラです。

今後の「終末のもの」との戦いにおいては、最低8レベル魔術師の彼の魔術と知識は、間違いなく助けになるでしょう。


★2〜5

現存する公国側勢力は王都奪還の為に、王都ウェインディスに跳梁跋扈する「終末のもの」達の討伐に乗り出しました。

ちょっと曖昧だった終末のものですが、今回かなり詳しく書かれましたが、益々不可解な存在である事が明らかになりました(笑)


まずこの連中は共通して、灰色の瘴気を放っています。

この瘴気もよく分からないんですが、彼らの血であり肉であり生命力であり………、とにかく彼らを構成するものです。

どうやら終末のもの達はこの物質界に存在するだけで辛いらしく、常に灰色の瘴気を立ち昇らせています。

魔法や武器でダメージを受けたら更に強く瘴気を放つので、やはりこの瘴気は彼らの血のようなものでしょう。


ちなみにこの瘴気にはのような効果があり、人体に害があると同時に周囲を終末っぽく汚染します。

ニース曰く「存在するだけで消耗するから、瘴気によって環境を整えてる」んだそうです、多分その通りなんでしょうね。

更に、纏っている精霊力も正負の生命の精霊力や、植物の精霊力ではないらしい。

それどころかゼーネアが言うには初めて感じる精霊力なんだそうです。流石は「終末のもの」、今の世界の常識が通用しません。


彼らは存在そのものが世界に反しているんですね。だから魔法によって捕らわれてもその魔法を消し去る事が出来る。

万物はマナで出来ているのだから、世界に反する「終末のもの」の瘴気で対消滅しても不思議ではない。

つまりこの瘴気はアンチ・マナなんです、この世界に属する全てのモノに害があるのです。


スパーク達は少数で先行し、取り合えず一匹倒してみました。いつものメンバーに、ヴェイル・クローゼン・ゼーネアも一緒です。

エレーナとラーフェンは本隊を率いるウッディンの補佐です。豪華な助っ人達がいて助かりましたね。

最初に発見した「終末のもの」は、本当に訳の分からない姿をしていました。

大きさは馬の倍ほどで、灰色の身体は幾つもの節に分かれ、腹に生えた義足のような突起で移動するそうです。気持ち悪いです。


このミミズ系の「終末のもの」に幾つかの魔法を撃ち込むんですが、実に微妙な効果でした。

まずヴェイルの"ライトニング・バインド"、ゼーネアの"シェイド"、ニースの"フォース"を受けました。

バインドや"フォース"といったダメージ系の魔法を受けると瘴気を放っていたので、多分ダメージは受けているんでしょう。

ただバインドは立ち昇る瘴気のせいで消えてしまったので、拘束系の魔法は長保ちしそうにないですね。多分数ラウンドしか保たない。

"シェイド"を食らったらぶるぶると震えていたので、無効化という訳ではないと思います。でも、「終末のもの」にも精神点はあるんだろうか?


スパーク「すべてのものが武器になるということだ。たとえ、ただの水でも、土でもな」

上の方で「この世界に属する全てのモノに害がある」と書きましたが、その逆「この世界に属する全てのモノが害になる」でもあるんですね。

戦士達はゼーネアがシルフを使って瘴気を換気されたりしながら、この「終末のもの」を倒しました。

どろりと溶けて瘴気が猛然とあがったそうですから、やはりこの瘴気が「終末のもの」を構成するものなんですね。


倒せないわけじゃないんですよ、ただ厄介なだけ。こちらの装備も瘴気によって腐食するので、戦う以上は必ず両方タダじゃ済まないのです。

"エンチャント・ウエポン"とかじゃ当然腐食します。「品質保持」がかかっている魔法の武器なら大丈夫だと思いますけどね。

でも"ライトニング・バインド"を消し去ったりしてたし、魔剣にかかっている非解除の魔法ももしかしたら………。

一応スパークの魔剣は大丈夫そうでしたが、長い事影響を受けたら分かりませんよ。「品質保持」の魔力を消し去るかもしれないし。


こんな化け物ですから、公都の「終末のもの」の討伐には多くの犠牲者が出ました。

何しろ通常武器無効ですからね、魔法の支援がないと倒せません。かといって、公国には魔法使いは多くないし。

百の勇者は魔神を相手に壮絶な消耗戦を演じましたが、それと同じく酷い戦いになるでしょう。


中でも強力だったのが、とある高位のカーディス司祭が自らを生贄に"コール・ゴッド"をして呼び出した終末のものです。

ドラゴン型で、今回召喚された中では最強のものらしい。やはり生贄が「終末のもの」の強さを決めるんですね。きっと10レベルでしょう。

それはそうと、サーキスの言うように次の世界にも竜はいるんですね。竜は今の世界でも、神々と同時に始原の巨人から生まれた種族です。

竜は世界の根源に関わっているという事実は、不変なのかもしれませんね。


その「終末のもの」どもと戦ったのはウッディン達、公国騎士団の勇者たちでした。

彼らは犠牲を省みず、次々に「終末のもの」たちを討っていきます。

かつての百の勇者の石の王国掃討作戦のような犠牲を出しつつも、どうにか倒していくのです。


ウッディンは最初の方なんて叛乱を起こそうとしてましたが、今ではすっかり公国の騎士ですよ。

スパークと公国に愛着を持ち、城と都を蹂躙した「終末のもの」どもに果敢に挑みました。

それは凄い嬉しかったけど、死亡直前キーワード満載で見ていて辛かったです

「マーモ公国のために!」という号令を上げて戦うウッディンと彼の部下たちは、本当に立派でした。


例のドラゴン型の「終末のもの」と対峙したウッディンは、引く事はせずに戦いを挑みました。

玉座の間に巣くう終末の竜を見て、ウッディンは公国の象徴に怪物を放置できないと言いたげでした。

ウッディン「戦いもせず、その大きさだけで怖じ気ついたとあれば、スパーク公に合わせる顔がありませんからな」

彼だって分かってると思いますよ、スパークはそんな事を責めはしないと。でも、放っては置けない、戦わずに背を向けるわけにはいかないのです。


ルゼナンと似たような境地にあるのかもしれませんね、命そのものを手段として挑もうとしている

それは決して強制されたからではなく、自分自身の心が決めた事なのです。だからこそ、それは勇ましく、同時に悲しい

戦乱に彩られてきたロードス島には、過去にもそういった戦いをしてきた者は沢山いました。そして、ここにも1人。

ウッディン「あの怪物を倒し、ここに陛下をお迎えせねばならん」

もう完全に騎士団長の顔をしています、わざわざ陛下なんて言葉を使ってるし。


後の事はエレーナとラーフェンに託しました。しかし、こんなにも感情的になったエレーナは初めて見ました。

エレーナ「マナは万物の根源にして万能の力と言われますが、わたしは人の命はそれ以上のものだと思っています」

命を懸けて戦おうとしているウッディン達を見て、あのエレーナですらこんな顔を見せるんですよ。壮絶です。

ラーフェンも今回は自ら剣を取って戦いました。戦況を見極め、剣の腕も立ち、魔法のような薬草を量産する。

なんか、この働き振りがあの"栄光の勇者"を髣髴とさせるような気が……(苦笑)


そして「マーモ公国のために!」の号令と共に、マーモ公国の騎士団長は部下たちと共に、終末の竜に戦いを挑んだのです。


★5〜9

スパーク達は例のゲートとカーディスの骸がある、ウィンドレストの地下の(無人の)マーファ神殿にまで押し入りました。

途中に巣くっていた「終末のもの」はギャラックが1人で掃討しちゃいました。なんかリプレイを思い出すシチュエーションです。

残る転生者はフィオニス、サーキス、それとあと4名(だと思う)。この戦いでサーキスと名無しの転生者が1人逝きます。

戦いの後に、フィオニスに従っていた転生者は3人でしたからね。次の巻の話しになりますけど。


転生者を相手にする場合、殺してしまっては面倒な事になりますよね。また転生しちゃうし、ザ・鉄腕イタチゴッコです。

かつてのナニールのように、生け捕りにして封印してしまわない限り、安心できませんね。

いっそ"ディスインテグレート"でもぶつけて、魂ごと消滅させてしまいたい気分です。流石の転生者とはいえ、これなら助からない筈。


生け捕りにする為、ゼーネアの"サイレンス"と騎士達のクロスボウで狙撃しまくり作戦を決行しました。

しかしサーキスは弁慶状態になりながらも、ゲートに身を投じ、新たなる「終末のもの」を召喚しました

一応身を投げる時点では"サイレンス"の効果範囲から出てましたが、普通に叫んでただけで暗黒語は唱えてなかったと思います。


そうして召喚されたのは巨人でした。一瞬終末の巨人ではないかと気が遠くなりましたが、どうやら違うらしい。

しかしサーキスほどの高位の闇司祭が自らを生贄にした以上は、例の終末の竜に負けず劣らずの「終末のもの」だと思います。

灰色の斑の身体、顔には目や鼻はなく、口だけが開いています。その造形だけはドッペルゲンガーを彷彿とさせますね、あっちは黒いけど。

モンスターレベルも10を超えてそうだし、下手したらサイクロプスとかよりも強いかも。

大陸のトゥーデント半島の「優しき巨人」や「堕とされし巨人」の方が、魔法が使える分強そうですけどね。


この化け物を相手に、公国勢は工夫を凝らしつつ戦いを挑みました。

スパークは剣を巨人に刺しっぱなしにする、という大胆ながらも効果がありそうな戦法に出ました。

斬ったり突いたりするよりも、巨人にとっての異物であるこの世界の物質を埋め込んだほうが、効果がありそうです。

一応スパークの剣は大陸から渡ってきた魔剣らしいし、正攻法で戦うよりはいいと思いますよ。


同じようにゼーネアも、即席の魔晶石の矢を巨人に撃ち込みました

やはり魔晶石に蓄えられている魔力を相殺する為に、巨人は相応の消耗をするでしょう。

ちなみに、魔晶石はヴェイルが提供してくれました。手持ちの中では一番大きいのをくれたんですよ。

10点を越えてれば銀貨1万枚を越える値打ち物です。流石はブルジョア属性、太っ腹です(笑)


とはいえ、瘴気を浴びたりぶん殴られたりで、大勢の近衛騎士が死んでいきました。上の戦いと同じく。

スパークは王様ですから、死ぬ事は許されません。死んでいく臣下達を血を吐く思いで見ていました。

スパークの性格からして、昔だったら突っ込んでいってた気がします(笑)。でも、この切羽詰った状況ではそれすら出来ません。

うっかり死んだら最後、完全に負けですからね。守られる事に慣れてないのは、いい事なのか悪い事なのか。


この巨人を倒したのは、驚いた事に闇司祭クローゼンが召喚したでした。どうやら捕まえたカーディス信者を生贄に召喚したそうです。

蟲をけしかける暗黒魔法といえば"サモン・インセクト"を思い浮かべますが、これはそれとはちょっと違いそうですね。

恐らくは"コール・ゴッド"の廉価版ともいえる、"イモレイト"を使ったのでしょう。

勿論"コール・ゴッド"には及びませんが、それでもファラリスに願いを叶えて貰えます。


しかも生贄に使った人間は複数だったようですよ、それならこの夥しい量を呼び出すのも可能かもしれません。

ただ、実際に奇跡を起こしてもらうには、達成値にして20が必要なんですよね。これじゃあ儀式か拡大でもしないとそう出ませんよね。

生贄の適性によってはボーナスが入るらしいので、カーディス教徒なら1か2ぐらいは入りそうですけど、やはり簡単には出来ないでしょう。

クローゼンが何レベルかは分かりませんが、その日の内に召喚できたのは上出来だと思う。


かくして世にも珍しい、世界の為に命を散らす蟲VS終末の巨人モドキの戦いが始まります。

そして次々に襲い掛かる蟲の大群に、なんと巨人は倒れます。瘴気を浴びて蟲は全滅しましたけどね。

闇をもって終末を討つ、この場ではファラリスの力が助けになったのは紛れもない事実です。

しかしスパークは、やはりファラリスとは相容れないようです。まぁそれはそれで、別にいいんですけど。

ただファラリスの力なしには、この巨人を倒すにはもっと難儀しただろうし、騎士の犠牲も多く出たでしょう。それは否定できません。


クローゼン「死を美化することはないでしょうな。生も死も、創造も破壊も、戦も平和も
       すべては等価だとわたしは思っています。ただいずれを尊ぶかは人それぞれ。」

その通りなのかもしれませんね。だからこそ、人間の不完全な心は価値観の食い違いを生む事があるし、争いになる事もある。

自らを絶対だと信じて疑わない事は、危険な事ではないでしょうか。価値なんてものは、人が作り出したものではないでしょうか。

ファリスもファラリスもフェネスも、そしてカーディスすらも、その価値は心を持つものの捉え方次第ではないでしょうか。

カーディスだって、破壊を行うと同時に創造もしてるわけだし。今のフォーセリア世界の神だって、カーデイスと同じ事をしたかもしれません。

別に自分が絶対の正義や善人でなくともいいじゃないですか、そんな概念に縋ってばかりの純粋真っすぐ君なんてイザとなれば脆いものです。


しかしフィオニスは最後の手段を持っていました。それは、"コール・ゴッド"で以前の肉体を取り戻すというものです。

弱音を吐いた転生者を1人屠り、魔法使いたちの魔法をものともせずに奇跡を行使しました。一応ダークプリースト10(仮)だし、抵抗も高そう。

ここで初めて明かされた(と思う)んですが、どうやらフィオニスは昔は屈強の神官戦士だったようですよ。

昔というのは何時かというと、アラニア建国王カドモスが生きてた頃です。ちなみにアラニア建国は新王国暦101年です。

当時ナニールとフィオニスはかの地で暗躍し、カドモスとマーファの聖女によって倒されたのです。


そのカドモスと互角らしいから、かなりレベル高いですよ。恐らくはファイターレベルが8や9はあるでしょう、下手すれば10。

ニースが言うには、今のフィオニスに勝てるのはカシュー陛下かフレーベぐらいらしい。となるとベルドやファーンもそうですね。

超英雄ポイントを駆使したフル装備のパーンやアシュラム様でも勝てないと仮定すると、本当に10レベルぐらいになっちゃうかも。


この場でまともに戦える戦士は多分いません。そこでニースもまた、昔日の姿を取り戻そうとしました

ということは、"亡者の女王"ナニールもフィオニス同様にファイター技能も高かったんでしょうかね。

しかし流石にアルドが止めました。そんな事をしたら、今度こそは完全に引っくり返ってしまうかもしれません。

ニースの場合、"コール・ゴッド"を使うとなると自分の身体ですから、また超英雄ポイントを2点使っちゃいますしね。


リボーン・フィオニスは、アルド並みのガタイを持つ戦士でした、ちなみに下布一丁

蝶が蛹から脱皮するが如く、以前の姿を取り戻したんですね。何故か天秤座の聖闘士を思い出しました(脱皮―笑)

そのフィオニスの挑発を受け、スパークは決闘をする気満々でした。


スパーク「一騎討ちを挑まれて、逃げるわけにゆくものか。カシュー王もそうだっただろう?

ギャラック「カシュー陛下は、最強の剣闘士なんです。最強の戦士かどうかはともかく、一騎討ちであの御方に勝てる人間は世界にいません

それはよく聞く話ですよね。ベルドの方が実力は上だったけど、結局は勝っちゃいましたしね。

ギャラック「危険な相手には相応の準備もしますしね。
      ベルド皇帝との一騎討ちのときも弓の名手を潜ませてたんです。流れ矢ということになってますがね

…………サラっととんでもない事言いましたよ、あの矢ってやっぱり故意に撃ち込まれたものだったんですね(苦笑)


確かに卑劣な手段ですけど、今までに色々な業績を重ねてきたのもやはり事実ですしね。まぁそういうのもアリかと。

戦士としては誇れる事ではありませんが、一国の王としてはこれぐらいの狡猾さは要るのかも。

このセコさがカシューをして、今の地位に上り詰めらしたのかもしれない(笑)


しかも、あの矢って雑誌連載時にはナシェルが射た事になってるんですよね、文庫では消えてますけど。

更に、手元にあるザ・スニーカーの2001年10月号に載っている水野先生と山田先生の対談によると、

マンガ版「ファリスの聖女」では例の矢を射た人の物語にしようというアイデアもあったそうです。

それがナシェルのソレに繋がっているのかは、水野先生のみぞ知る。そういえば、マンガ版「灰色の魔女」ではカーラでしたっけ。

十数年の歳月を経て、ようやく公式設定が出てきましたよ。結構ショッキングですけど(笑)


結局スパークはフィオニスと戦うんですが、やっぱりマズかった。

流石にその力は凄いらしく、スパークを重傷を負い、ギャラックとライナは死にました。ニースはスパークを癒して精神力切れで気絶。

なんか「伝説」で、魔神将ゲルダムのグレイブで串刺しになったベルドを癒したフラウスを思い出しますね。


ギャラック「すまないな……」

ライナ「まったくよ。もっといい目を見せて欲しかったわ。
    だけど、それなりに楽しかったわよ、ギャラック。それに今度は、置いてゆかせないから

ギャラックにライナがこんな所で死んじゃうなんて……。ギャラックなんてこれが2回目ですよ、まるでロビンマスクです。

今までギムとかオルソンとか、メインキャラが死ぬ事は何度もありましたが、こんなにも絶望的な展開はあったでしょうか?

いやあったかもしれませんけど、完全敗北という事実が伴っている分インパクトがあるのかもしれません。

他の近衛騎士も次々に倒されていくし、例の巨人からは何故かゾンビが生まれてくるし、やはり敗北です。


ここにきてアルドはスパーク達を逃がそうと、優しさとなけなしの勇気を振り絞った策に出ました。

それは、ニースを人質にしてスパーク達を脱出させるというものでした。

泣きながら首を折ると脅迫するアルドは、あのフィオニスに要求を飲ませました。よくぞ決断したものです。

これがアルドの凄い所なんだな、と改めて実感しました。優しいだけじゃない。涙を流しながらも決断する意思は承認ものです。


脱出できたのはスパークとグリーバス、あとヴェイル、ゼーネア、クローゼンのみ。

スパークがかつて邪神戦争を共に乗り越えた仲間達の内、2人が死に、2人が人質となっています。

そしてロードス全土にマーモ公国滅亡の悲報が駆け巡ります。いよいよ、本島の王国が動き時がやって来ました。


一時は確かに掴んだと思っていたロードスの平和ですが、まだこの島は呪われた島だったんです。

凶事が再び、ロードスの大地を蝕もうとしています。不吉な暦の冬の時代が、また続こうとしています。

でも、ロードスの民は、スパークとその仲間達は、このままじゃあ終わりませんよ。

魔神やら戦やらを乗り越えてきた彼らが、こんな所で躓きっぱなしになる訳はないと、私は信じています。





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