「牧歌の国の魔法戦士」作:水野良 出版社:富士見書房

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第1章 聖王国の魔法戦士

★1〜2

ロードスから無事帰還したリウイ一行は、オランに報告と休養で数日間滞在した後、東の聖王国アノスにまで来ていました。

今までに"番兵(センチネル)"、"鎮めるもの(サプレッサー)"の2本を見つけた訳ですが、3本目はこのアノスと東のミラルゴの国境付近にあるらしいのです。

例のドラゴンレーダー魔法の石版によれば、その剣は"巨大なるもの(ギガンテス)"というそうです。大方の予想はつくネーミングですね。

アノスとミラルゴの国境にはあの有名な巨人像があります。魔法仕掛けのゴーレムらしいこの像に関連している可能性は高い。


なお、雑誌連載時に書いたものを今回は残しておきました。→旧版。これまで書いたのは全て消しちゃったんですけどね。

消したというか、それを加筆修正する形で書いて保存したので、わざわざ昔の姿で残す必要がなかったんですけどね。

しかし今回の「牧歌の国の魔法戦士」は(私が)9割以上書下ろしですので、雑誌連載時のそれも残そうと思いました。


東へ東へ来てアノスの首都である聖王都ファーズにまで来たわけですが、正午の鐘の音がけたたましく響いているので一行は辟易してました。

アノスはロードスで言うところのヴァリスです。ファリスが国教であり、聖なる土地聖なる都と何でもかんでも「聖なる」がつきます(笑)

ファリスにおいては勤勉は美徳なのですが、ファリスの象徴である太陽が天空高くに輝く正午だけは、皆仕事を中断してお祈りタイムです。


お昼のお預けを食らっている上に、アノスには縁薄い一行としては、今後の情報収集すら困難で前途多難です。

冒険者の店もマイリーも盛んではないし、アイラのコネもなければ、盗賊ギルドこと友愛団とは接触が困難。どうしたものか(苦笑)

アノスにおける盗賊ギルドが友愛団と呼ばれ、接触が難しいのはバブリーズ以来のお約束です。正統派であるとも限らないし。

ファリスの国で盗賊稼業を営むのはなかなかにリスキーですからね、見つかったらそれだけでおロープ頂戴でしょう(笑)

きっと深く深く潜っているのでしょう。あまりにも深すぎてバブリーズのパラサですら接触できないんですよ、ミレルでも見つけられるかな。


「ヴァンが鍛えた魔剣をどうやって見つけるか」、そんな事を話しているリウイ達に7人のグラスランナーが寄ってきました。

全く気配をさせずに接近し、好き勝手にリウイ達の食事を摘み食いしたり、ミレルの胸を触ったり、この鬱陶しさが何ともグラランですね。

そういえばリウイでは初登場かもしれませんね、グラスランナー。Q&Aによると大陸全土では人口比率は1%程度らしいから無理ないか。

もっとも、グラスランナーが大勢暮らすミラルゴではそこそこの率を占めてるでしょうけどね。10%や20%はいるかも……。


しかし危ない。もうちょっと場所を選んで話さないと、誰が聞いてるか分かりませんよ。ヴァンはともかくアトンの事はトップシークレットです。

グラスランナーがいかに噂好きで、それをバラ撒くのが得意か。グラスランナーのせいで大陸全土に終末情報が流れたら大事ですね。

それをきっかけにロードスのように終末信仰が流行り、それをもたらすアトンを擁護しようとする輩が出てきたら堪ったもんじゃありません。


しかしある程度は情報を流しといた方がいいのも確かです。リウイはヴァンの鍛えた魔剣を探している事だけを彼らに教えます。

グラスランナー達はミラルゴに帰る途中だったので、その道々噂をバラ撒いていきます。結果、なかなかいい仕事をしたのです。

グラスランナーによって流された情報は多少の改ざんを経て、古い武具を高く買う連中がいるという感じでミラルゴ方面へ流れます。


街道名でいえばグラランは「白い霧の街道」を東へ東へ行ったんでしょうね。その途中にも村は多く点在しています。

これはファーズ(アノス首都)⇔ヴァンカー(ミラルゴ港町)を結ぶ街道です。およそ30日かかる、結構長い街道なのです。

ちなみにファーズ⇔イストン(巨人像に近い街)のみを「真鍮の街道」と呼んだりします。こちらは9日程ですね。

ワールドガイドではこの「真鍮の街道」にかかる日数を交日としていますが、これは思いっきり誤植です。


結果としてファーズからミラルゴ方面へ向かうリウイ達は、行く先々で鑑定を求められる事になったのです。アイラの出番ですね。

アイラはマーチャント技能も高そうなので、《価格判定》?を駆使して次々に鑑定していきます。最早「何でも鑑定団」状態(笑)

《価格判定》は通常その商人の専門分野しか扱えないのですが、アイラは結構守備範囲が広いんでしょうかね。

なお、盗賊や賢者の《宝物鑑定》は宝石やマジックアイテムなどの宝物が守備範囲です。もしかしたらこっちで鑑定してるのかも。

アイラはマジックアイテムの鑑定も出来るのですが、これもマーチャント技能かセージ技能なんでしょうね。それとも別の一般技能か。

アイラのことだから、一般技能:コレクター(マジックアイテム)技能とか持ってそうですね。しかも物凄いレベル高そう。


一通り鑑定を終えてみてもやはりヴァンブレードは見つからず、一行はそのまま巨人像の近くにまで来ます。

巨人像は何時、誰が、何の為に作ったのか一切謎です。その大きさは巨人もかくやという程で、下半身は地中なのに人間の4倍の高さです。

ゴーレムだとか、石化した神の肉体だとかいう説もあり、多くの賢者が昔から調査を続けていますが未だに謎。観光名所としても有名です。

新王国暦515年にラヴェルナもこの巨人像の調査に来ています。結果魔力を帯びている事は分かり、ゴーレム説を有力視しています。


今回シャザーラの力により、この巨人像が"人形使い(ドールマスター)"ウェゼマーという付与魔術師の作品である事が分かりました。

それだけでもちょっとした発見ですって。一切の文献に記録が残っていないのだから、製作者が分かっただけでも賢者達は驚きますよ。

内心これがヴァンの作品で3本目とも関連があると思っていたリウイ達は手がかりを失いました。実は、関連はあるんですけどね……。


★3

巨人像の近くで野営をしていたリウイ達に、グリフ族という山岳部族が接触を取ってきたことで、一行は新たな手がかりを得ました。

彼らは尋ねました。「おまえたちは、魔法王の剣を捜し求める者か?」とね。どうやら手がかりが向こうからやって来たらしい(苦笑)

リウイ達はヴァンの武具を探しているという情報こそ流しましたが、ファーラムの剣については一言も喋っていません

なのにも関わらず、彼らはその名を口にしたのです。きっとグラランの情報を聞いてやって来たんですね。何でもやってみるものです。


リウイ達は彼らに案内されて、グリフ族の集落にお邪魔する事にしました。独自の言葉もあるらしいし、外界とは隔離された集落らしい。。

どうやらアノスとミラルゴの国境の西にあるらしいので、グロザルム山脈の中でしょう。両国を分かつアドリー河の支流も流れています。

農耕と河からの漁、及び狩猟によって食べ物を得ているらしい。必要なものは殆ど自給自足、お金が要らなさそうな集落です。


集落に案内されたリウイ達は、そこで長老達に混じって座る神子マウラと出会いました。年は12〜13ぐらい、ミレルよりも幼い少女ですね。

年頃に似合わず落ち着いていて、感情がないかの如く淡々と話します。黒髪の和風チック巫女キャラか……新しい境地を開拓しましたね(笑)


「魔法王の剣求めし者ふたたび現われしとき、いにしえの守護者を目覚めさせよ」

これがグリフ族に伝わる伝承です。彼らはこの土地で伝承を守って500年も暮らしているのです。

リウイは正にファーラムの剣を求めているのでドンピシャなのですが、敢えてそれを明かしません。

ただ高貴な人物から依頼を受けて剣を探しているという事にして、自分達が探しているのはヴァンの武具とだけ告げます。

つまり、ファーラムの剣をピンポイントで探している訳ではないという事にしたのですね。伝承と無関係ではないが、当事者ではない。

あながち嘘でもありませんね、ただ肝心な事を話していないだけ。"センス・ライ"にも引っかからないかもしれない(笑)


取りあえずこの付近にあるらしいヴァンブレードの在り処だけを聞いて、その場所に案内してもらいます。

必要ならば持ち帰ってもいいとまで言ってくれますが、それができればと挑戦的とも取れる事も零していました。

案内されてみると、剣は大量の石英で覆われた窪地に埋まっている事が分かります。ここ掘れワンワンですね(笑)

アイラがさり気なく"ファイア・ボール"を使おうとしてました。豪快さんめ、いつの間にそんな豪快になったんだアイラ。

だったら"シースルー"でも使ってくれればいいのに。半径30mをまるっとお見通しになります。


まぁ"シースルー"する前に剣は見つかりましたけどね。しかしいくら石英を除けても一向に全体像は見えません。

それもその筈、"巨大なるもの(ギガンテス)"は巨人像が持つ超巨大な魔剣だったのです!

ヴァンはウェゼマー作の巨人像の武器として、この魔剣を作ったんでしょうね。しかしあまりにもデカ過ぎる。


なにしろ、刀身の幅だけでリウイの身長を上回るのです。リウイが190ぐらいとしたら、軽く2m以上。どんだけデカイんだ。

史実上の両手持ちの剣(グレートソード)は、その長さが1.2〜2mはあったと言います。幅はよく分かりませんが、恐らくは10〜20cm。

単純に幅が10cmぐらいと考えると、"巨大なるもの(ギガンテス)"は20倍以上になりますね。はい、この時点で凄い数値が出そうで怖いですね(笑)

すると全長は24〜40m以上。重さは実際の最低重量1.5sの20の三乗で12t以上!!。材質と実際の大きさでもっとかも。


これを持ち帰るのは無理っぽいですね、"テレポート"だって何倍に拡大すればいいのやら。精神点100点の魔神王でもぶっ倒れそうです。

大量にストーン・サーバントを作って、"ディメンション・ゲート"を使ってオランまで引きずる……どれだけ魔晶石要るのか(笑)

"ディメンション・ゲート"は半径2.5mの円形なので、多分通ると思う。でも……現実的に無理でしょ。遺失魔法だし。

こんなもの動かせるのは、それこそ神様や竜王、あるいは巨人像だけでしょうね。グリフ族が止めるまでもなく持ち帰れません。

いや、そもそもこの剣をどうやってここまで持ってきたのか。そっちの方が気になる。やっぱり巨人像かな。


マウラは神子として、もし伝承に伝えられる"その時"が来たのならば、この剣と巨人像で終末の魔物と戦わねばなりません

もちろんそれは"魔精霊"アトンです。恐らくは、彼らグリフ族はそういう使命を授かって500年以上ここにいるんでしょう。

そうなると何故当時巨人像を使わなかったのか?という疑問が湧きますが、それは後々分かる事です。

守護神=巨人像に祈る事で、ファーラムの剣は無用になるという伝承が正しいのならば、巨人像でもアトンは倒せる筈ですね。


第2章 神子の決意

★1〜4

外部とは隔離されていると思われていたグリフ族でしたが、最近は大分外との交流というものが生まれていました。

3年前にリザードマンの襲撃を受け、それを皮切りに隊商が交易に訪れるようになりました。外から色々な物が入ってきているのです。

そうなると部族の中からは、外との交流をもっと深めようという革新派と、あくまでも昔の生活を守ろうという保守派が出てくるのです。

グリフ族の場合は前者は若者達後者は老人達です。こういった対立は、何処にでもあるものなのですね……(しみじみ)。


その若者の中でもリーダー的存在なのは、シウバという男です。元はマウラと同じ神子だったそうですが、修行をドロップアウトしたとか。

そしてミラルゴの有力部族アッジ族に身を寄せ、その族長である"双角"ディーノというミラルゴ有数の戦士と知り合ったのです。


ディーノはその二つ名の通りに黒野牛の角を飾ったバッファローマン的兜を被り、全身をアシュラム様のように黒一色で統一しています。

鎧はなんとミスリル製のチェインメイル。なかなか豪華なものを持っています。しかも、これまで黒く塗られているのです。

その武勇はミラルゴ随一で、彼は黒い旋風のように戦場を駆け抜けます。また、世界情勢にも明るく、次のミラルゴ王も狙っています

その為、グリフ族の持つ巨人像その他の力に関心を抱いています。出来るなら欲しいでしょう。しかしそれが適わないならば……。


現在の大陸情勢を見ると、ミラルゴは北のロドーリルの脅威に晒されようとしています。プリシスが抜かれると次はミラルゴかオランです。

また、南部の湿原地帯に生息するリザードマンの脅威もあります。事実、グリフ族はそれで被害を出していますしね。

こういったものからミラルゴやグリフ族を守れるのはディーノだけだと、シウバもディーノ本人も思っているのです。

そこでディーノはシウバに、部族をまとめてミラルゴ連合に加わって貰いたいと吹き込んでるのですね。


シウバはディーノに心酔し、グリフ族をもっと栄えさせようとしきりに外との交流を深めようとします。多くの若者はそれに賛同しました。

シウバ達はリウイが集落に現れた事を知ると集会場に入ってきて、老人達と一悶着起こしました。

リウイ達はヴァンの剣を探しているだけで魔法王の剣を探している訳ではない。伝承に固執して部族の未来を閉ざしていると言いたげ。


老人達は老人達で、あくまでも伝承を実行する時が近づいていると頑として譲りません。頑固な所は両方一緒です(苦笑)

もっとも、巨人像を動かしたら動かしたで、静かに暮らすことは不可能になりますがね。その時はやはり、変わらねばならないでしょう。

どちらの言い分も理解できなくはありません。豊かさを求めるのは当然だし、500年もの使命を簡単に捨てられないのも事実です。

結局は両者は喧嘩別れします。リウイが真相を話せば、老人達は大喜びするでしょうね。速いところ言ってあげた方がいいのでは。


結局リウイ達は暫くの間集落に滞在する事にします。これだけ濃い面子ですが、あっという間に溶け込んじゃいました。

ジーニは狩人として尊敬を集めてるし、メリッサも神聖魔法を使って怪我人を治しています。アイラも交易活動に余念がありません。

ミレルはアッジ族に侵入したり、シウバとディーノと会談を覗いたりと、結構役に立っていました。リウイが褒めてくれて大喜びです(笑)

そうなるとやはりアイラと一触即発の雰囲気になるのですね。片や短剣を取り出し、片や眼鏡を光らせ。実に面白いライバル関係です。


ミレルの情報収集で色々気になる情報が舞い込んできます。ロドーリルの事、ディーノの事、リザードマンの事。

それはグリフ族がミラルゴの政争に巻き込まれつつある事を予感させます。もう今までのようには暮らしていけないかも。

リウイ「だが、オレがいちばん気になっているのは……、あの少女……マウラのことなんだ

……そういう事いってると、誰かさんが眼鏡を光らせますよ。まぁそういう意味じゃないんですけどね。(笑)


丁度その時、マウラがリウイを尋ねてきます。「いろいろとお話したいことがあります」とね。

アイラ「あなた、手が早すぎる……

ミレル「てめぇを殺して、あたしも……

「あなた」って、アイラってばいつの間にか新妻気取りですよ。まぁミレルに対しては本妻気取りですが(苦笑)

ミレルって思い詰めるタイプなんですね、一途な分そういう傾向が強いのか。浮気して刺されるなよリウイ(冗談になってない)。


マウラのお話とは、やはり伝承の事でした。彼女は何となく察していたのですよ、"その時"が近づいていると

マウラ「わたしに勇気をくださいませんか?

それはきっと、世界を終末に追い込む魔物("魔精霊"アトン)と戦う勇気なんでしょうね。

彼女は神子として"その時"の為だけに修行を積んできました。そしていざ"その時"が近づいている事を告げるようにリウイが現れた。

マウラが言うには、リウイは遠くを見ているそうです。この冒険を楽しむとか言っていても、やはりその存在は気になるのでしょうか。


リウイは全てを話しました。10年後に、その魔物が世界を滅ぼす事を。すなわち、"その時"が来たのだと。

きっと彼女は心を痛めていたんでしょう。その危険な戦いに身を投じなければいけない事に、内心不安だったんでしょう。

リウイが彼女の顔に拳を打ち込んだ(寸止め)時は微動だにしませんでしたが、だからといって恐怖を感じないわけではありませんでした。

勇気なんてものは、その時になってみないとあるかないか分からないものです。彼女は、リウイに助けを求めているのかもしれません。


こっそり出歯亀をしていたミレル達も、きっとマウラに協力してくれるでしょう。志を共にする人はもっといますよ。

そしてリウイはマウラに手を差し伸べました。この瞬間に、マウラは同じ目的を持つ仲間を得たのです


第3章 小さな巨人像

★1

リウイ達はアトンと戦う決意を固めたマウラを鍛える事にしました。巨人像を操縦してアトンと戦う為に、まず剣の稽古をつけます。

その際使用するのは、小さな巨人像でした。人間とそう変わらない程度の巨人像の小型版ですね。以後「小巨人像」と呼びます。

この小巨人像は、集中するマウラの思う通りに動きます。しかも、感覚は共有です。まるで使い魔ですね。案外似たような原理なのかも。


やはりウェゼマーの作品なんでしょうが、特に呪文やコマンドワードを使った様子はない。どうやら複数体所持しているようですね。

しかし、この小巨人像を動かすにはそれなりの訓練を要するらしい。少なくとも、シウバが逃げ出すぐらいに(笑)

最初は自分の動きを真似させる事から始まり、慣れてくると巨人像のみを動かせるらしい。シンクロ率が高くなると本人以上に動けるかも。

そしてこの小巨人像はオリジナルの方の巨人像を動かす際のコントローラーであり、またシミュレーターでもあるようです。

マウラはこの小巨人像と一緒に巨人像に乗り込み、操縦するのです。巨人像は遠隔操作型ではなく、搭乗型なんですね。


アトンと戦う際にマウラに求められるものは、並みの戦士並に剣を振る事を、巨人像に行わせる事です。

マウラは小巨人像を扱った戦闘の訓練を受けていたようですが、本人は戦士とは程遠い実力しか持っていません。

リウイが実際に素振りをさせてみたところ、よろけちゃってましたからね。ジーニ曰く、体作り含めて最低3年はかかるとか。


しかし実際戦うのは頑丈で怪力の巨人像です。アトンだって高度な白兵戦を演じる訳ではないから、普通に剣を振るえればそれで十分。

あとは巨人像と剣がアトンの精霊力を削り切れるかどうかですが、それはウェゼマーとヴァンの技術力の問題でしょう。

なお、小巨人像を動かすだけでもかなり精神的に疲労するようなので、アトン戦にも耐えられる程の精神的タフネスを身に着ける事


リウイは試しに小巨人像と剣を交えてみました。小巨人像そのものは頑丈ですが、次第にリウイの剣を受けきれなくなっていきました。

流石に"番兵"装備済みのリウイは強いですね。結果としてマウラは失神してしまいますが、直ぐに介抱したので大事には至りませんでした。

どうやら小巨人像は《通常武器無効》らしいですね。モンスターレベルにするとどの程度になるのかは微妙ですが、軽く5はありそうです。

使い魔のようにダメージがダイレクトに操縦者に行くのかは謎です。実際に倒れているから、可能性はないとは言えません。

怪我こそしていないだけで、実際には生命力を削られているのかもしれませんね。やはり使い魔がダメージを受けた時のように。


★2〜3

一連の稽古は衆人環視の前で行われました。これは、伝承に伝えられる"その時"が来た事を遠回しに伝える為です。

長老のドートからもマウラを鍛える事を頼み込まれました。長老達大喜びですね、とうとう"その時"が来たのだから。

グリフ族には300人程戦士がいますが、実戦を経験した人は少ないらしい。リザードマンの襲撃も小巨人像がいなかったらヤバかったらしい。


そしてもう一つ、それに対する反応を見る為でもありました。案の定、1人の女性から若い衆にその情報が伝わりました。

それをミレルが尾行し、シウバと若者達がどう出るか探ったのです。ミレルってば今回大活躍ですね。政争絡みにはやはり盗賊です。

"その時"が来たのなら集落に帰って神子を助ける。それがグリフ族の使命だと、若者達の心は動いていました。

何だかんだ言っても、彼らもグリフ族の使命を忘れた訳ではないんですね。その点では老人達とそう変わらないのかも。


しかしシウバは面白くありません。長老達がリウイに頼んで自分達を集落に縛り付けようとしてるのだと憤ります。

そしてリウイの所へ怒鳴り込みに行きます。修行はドロップアウトしたくせに、この辺はいい度胸してますね。

そんなシウバも、上空を旋回するクリシュを見ると動揺を隠せませんでした。若者達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出してしまいました。

それでもシウバだけはその場に踏み止まっていましたよ。若者達のまとめ役なだけに、紙一重の根性があるんでしょうか。


シウバはグリフ族がもっと豊かに暮らせるようにと思っています。その点は立派だけど、それに巨人像を使うのは流石にマズイ。

巨人像の力は一国を滅ぼす事だって可能です。確かにその脅威をちらつかせれば、そうおいそれとは手を出せないでしょう。

しかしそれに対抗しようとより大きな力を求めたり、あるいは巨人像を奪おうとしたりする者も出てくるでしょう。

巨人像という驚異的過ぎる力は、グリフ族を否応なく国際的な謀略に巻き込む事になります。


だからマウラは巨人像をアトンとぶつけようとしているのです。巨人像がなくなる事で、伝承は守られる、政争に巻き込まれなくなる

そしてリウイは、そんなマウラと一緒にアトンに会いに行くつもりです。マウラの戦いを見届ける為に。

勝てればよし。アトンを倒せれば手段なんてどうでもいいのです。負けたとしてもせめて命だけは助けようというのでしょう。


案の定、グリフ族の集落にディーノ率いるアッジ族の軍勢が押し寄せてきました。目的は勿論巨人像です。

ミラルゴ王を狙うディーノにとっては、ロドーリルやリザードマン以上に巨人像とグリフ族が脅威です。

味方に出来るのならとシウバを抱え込んでいたわけですが、それが上手くいかないのなら殺してしまえホトトギスという事ですね(笑)

リウイ曰く、「優れた英雄って奴は、裏返せば冷酷な殺戮者なのさ……」です。その手を血で染めずに英雄になる人は稀ですよ。

そういえばチャップリンの「殺人狂時代」に「一人殺せば殺人で、百万殺せば英雄か!」とかいう言葉があったような……。


第4章 漆黒の旋風

★1〜4

突然のアッジ族の1000近い大軍勢を前に、グリフ族の人達は迎撃体制を整えました。幸い集落は山岳にあるので攻め難く守り易い筈。

こうなってしまうと流石に若者達も武器を取って戦う用意はしていますが、動揺っぷりは結構なものです。

相手は草原で生きる騎馬民族ですから、やはり馬術と飛び道具が達者です。だだっ広く遮蔽物がない草原では必然ですね。

しかし集落に取り付く為には斜面を登らないといけないから、取り付かれる前に狩人達が矢を射れば結構削れそうです。


この事態にリウイは軍師としてその頭脳を回転させます。すんなり裏山に伏せていた伏兵を見抜きましたしね。

山岳地帯ですから、村の裏の標高の高い所から攻め降ろした方が軍馬の機動力を生かせそうですね。

リウイはちゃんと魔術師ギルドの軍学の講義を受けてたんですね。この分だと評価は「秀」かな(笑)


ザインでの時もそうでしたが、こういう状況になるとリウイって水を得た魚のように活きが良くなるんですよね。

ディーノはで強襲をかけて部族を滅ぼし神子を拉致というステキプランを立てていたのですが、この時点で台無しになっています。

リウイがいなかったら、その通りになっていたでしょうね。そしてミラルゴ王となり、ロドーリルとリザードマンを倒して英雄でしょう。

リウイがいたばかりに、それらの展望も台無しですよ。相変わらずいるだけで一国の運命を左右する男ですね(苦笑)


リウイは早速、クリシュとティカだけ連れてアッジ族の鼻先に飛びます。またド派手な事をしますね、目立ちすぎ。

ディーノは勇猛なだけでなく、頭も切れる方です。だからこそ、こうして話す事で戦闘を回避できると踏んだのです。

このシーンの挿絵を見ると、なんか主人公とは思えない禍々しさですね。ティカ以上にリウイの目がヤバイ(笑)

ティカは"パーシャル・ドラゴン"でノーブル・リザードマンの姿をしていたので、ディーノは彼らが同盟してるのかと戦々恐々。

流石に"世界情勢に明るい男"ことディーノはリウイの正体を一瞬で見破りました。情報通にはモロバレですね。


クリシュが飛来した事で勇猛なアッジ族の戦士達も混乱します。更には咆哮を使ったので馬も戦士も恐慌をきたします

しかしディーノとその愛馬は無事でした。……つまり、ディーノの愛馬>アッジ族の戦士ですか。この場合どっちに突っ込むべきか(笑)

クリシュは所詮幼竜です。多く見積もっても5レベルだから、咆哮の目標値は精々12。6ゾロ振らないと抵抗出来ないという程ではない。

となるとアッジ族の戦士達の方が不覚なんでしょうかね。あるいは、ディーノの愛馬が黒王号のように勇猛だったとか(そんな馬鹿な)。


リウイはディーノと交渉に来ただけです。近々巨人像はいなくなる。それを承知の上で戦って無駄に消耗するのか、とね。

ディーノはリウイを警戒しているようでした。まぁここ最近でザイン、エレミア、オランと同盟してますから。警戒するのも無理はないか。

しかしリウイには野心はありません。オーファンを大陸の盟主にするとか、そういう面倒な事は好まないのは分かりきっています。


ディーノ「しかし、今のオレには、鉄の女王ジューネよりも、巨人像よりも、オーファンの王子リウイ。おまえこそが危険だと思えるよ

いやいや、だからそれは買い被り過ぎですよ。確実に。能力はあるかどうかはともかく、意思がありません。しかしディーノは納得しません。

交渉の途中で、国王の軍勢がアッジ族の集落に押し寄せてきたという衝撃的な知らせが入って、ディーノは兵を引きました。

しかしこの交渉の内容は成功とは言えません。これじゃあ、リウイが野心を隠しているようですよ。まぁ戦闘にならなかっただけでも良しか。


ミラルゴ王クーナは知の人だといいますが、確かに兵が出払っている機を逃さずに王権を奪う野心のあるディーノを制しましたね。

上には上がいる。最も、国防を考えると政敵を潰す才だけでは不十分ですけどね。外敵に対してはやはり勇猛な戦士が必要です。

今回は何とかなりましたが、これが最後とは限りません。巨人像の秘密が漏れた以上、グリフ族がこれまで通りに暮らすのは困難です。

その辺をどうするかは、集落の人々の話し合いに委ねられます。こればかりはリウイが口を挟む事ではありませんからね。


マウラは旅立つ事を決意しました。グリフ族の未来の為にも、巨人像を伝承の彼方へ送り届けるのです。

もちろんリウイもついて行きますよ。もっとも、その前にミラルゴ王に会いに行きますがね、2人で

色々説明する面倒を省いたわけですが、お陰でミレル達がとっても気まずい立場に置かれますね(苦笑)


第5章 部族会議

★1〜3

草原の国ミラルゴは数十の遊牧民から成る連合国家で、重要な事は各部族の代表者が集う部族会議で決定されます。

ケンタウロスやグラスランナーも立派な草原の民です。"金色の毛"パダというケンタウロスの魔術師に至っては大臣職に就いてます。

国王の主な仕事は対外的な政策であり、国内の諸部族の問題はその部族で解決します。部族間の争いにも国王が介入する事は普通ない。

部族間の争いとは言ってもそう凄惨なものではなくて、互いの代表者が戦うだけで、一方が一方を殲滅したりはしません。

そして、外部の脅威に対しては「竜の盟約」や「タイデルの盟約」のように、一致団結して戦うのです。草原の民は割と大らかなのです。


現在の国王クーナ(38歳)はジャーバ族の族長であり、智謀に優れた王です。彼が王位に就いたのはある意味偶然でした。

先代の国王が崩御した際、3つの有力部族の長達が互いに次期国王の座を巡って戦にまでなりかけました。

そこで王位に就いたのがクーナの父親であったニモアでした。老齢の彼は直ぐに死ぬだろうという理由で、族長達は引いたのです。

しかし即位式の前に急死し、賓客達も来ていたので止めるわけにもいかず、ニモアの息子であったクーナを王位につけたのです。


病弱であったクーナですからやはり直ぐに死ぬだろうと考えられていましたが、国王の激務もこなして10年以上も在位しています。

かなり弱々しく顔色も悪くて小柄、今にも死にそうなクーナですが、王として善政を敷いていて、誰も異論を唱える事が出来ないほどです。

当時王位を争った3人の族長の内2人は既に代替わりしています。偶然と本人の資質もあって、クーナは優秀な王になっているのです。


ディーノもその統治には全く遺漏はありませんが、外敵に対抗できるのは武人である自分だけだと考えているので王位を狙っているのです。

内憂はほとんどない(ていうかクーナからするとディーノが内憂)。ロドーリルとリザードマンという2つの外患こそが問題なのです。

アッジ族は有力な部族ですが、クーナは下手するとまだ何十年も王位に就き続けます。下手したらディーノにはその機会は永遠に来ないかも

ディーノがアッジ族の族長となったのは5年前、前の族長会議には出席していません。何とも間の悪い男なのです。

だからディーノはその運命を覆そうとグリフ族に目をつけたわけですが、それすらクーナには見破られていたのですね。


実を言うと、アノスでリウイ達が出会ったグラスランナ−達はクーナのスカウト(密偵)のようなものでした。

クーナの命令に従ってリウイ達の目的を聞き出した彼らですが、それを広めたのはクーナにも想定外でした。流石はグララン(笑)

同時にクーナはディーノの動きにも気を配り、グリフ族も気にかけていました。そしてそのグリフ族がリウイ達に接触したのは思わぬ収穫でした。


クーナはミラルゴ王として、ディーノの動向もさることながら、彼が求めているであろうグリフ族の力にも関心を持っています。

そういった事を探る為に、リウイ、ディーノ、グリフ族は彼の監視下にあり続けていたのです。やはりクーナは只者ではありませんね。

グラスランナー達はリウイ達の身辺も探っていました。なんとミレルやジーニですら気づかなかったのですね。


この部族会議の時点では守護神や人形といった最重要機密も知っているような感触でした。敢えて知らないフリをしているような(多分)。

クーナはリウイやマウラが口にしなかった「伝承」というキーワードを普通に使ってました。どうも知ってるように思えるんですよね。

最初の方では知らなかった筈ですが、きっとグラスランナー達が探ったのです。なかなか優秀なスカウトです(性格はともかく)。

もっとも、アトンの事までは流石に把握していないでしょう。グリフ族は伝承に従って例の巨人像を動かせる、という程度だと思います。


クーナはグラスランナー達にリウイとマウラを迎えに行かせ、ディーノを単身部族会議に出頭させました。

現時点でアッジ族はクーナ率いるミラルゴ連合軍に包囲されているので、是非もなくディーノは従うしかありません。

クーナが何故ディーノを諌めるだけでこれほどの大軍を動かしたかというと、リザードマン達を討つ為です。

しかし彼らの脅威に晒されているのは草原南部の部族だけ、北部をも巻き込む為にディーノの王位簒奪疑惑を利用して召集をかけたのです。


出頭したディーノを積極的に糾弾したのはブエロノ族の族長でした。王位を争った3人の族長の1人ですね。

アッジ族とブエロノ族は仲が悪い。居留地が離れているから戦にこそならないけど、会議では意見を違えるのが常です。

この機会にディーノを失脚させようというのでしょう。諸部族の族長の中でも最年長なだけに老獪な人物なんでしょうね。


クーナは話の切り出しとして、グリフ族を併合しようとした点を挙げ、国王に無断で外征を行ったという方向から攻めていきます。

外征を決定できるのは国王だけですからね。これに対してディーノは救援を求められたからだとかわします。まぁ嘘ですか(苦笑)

シウバはアッジ族の庇護を受けたがっていたし、将来的に可能性がないともいえないんですが、やはりあの時はグリフを滅ぼすつもりでしたし。


外征が他国と戦うことだとして、グリフの人口が1万にも満たないとはいえ、国外の部族を1つ殲滅するのは問題がないという訳でもない。

グリフ族は何処の国にも属していないので、滅ぼしたとしてもお咎めはないかもしれない。でも、人道に反するとアノス辺りから抗議が来そう。

それに、外部への武力行使を国王を通さずに行う事を許すのはやはりマズイですよ。対外政策は国王の範疇だから、権威が落ちる。

もっとも、本音を言えば、クーナがディーノを責めるのは巨人像を入手して王位を簒奪しようとしたという点なんですが。


ブエロノ族の族長がエキサイトしてきた頃、リウイとマウラが到着しました。あと一歩でディーノが族長の資格を剥奪されそうな所で。

ディーノがその場にいられるように、リウイ達の方でご丁寧にもクーナとディーノに会いたいという旨を伝えてきました。

クーナは驚いたような感じで2人を迎えましたが、勿論想定の範囲内です。むしろグリフの代表者が参列してくれるのは好都合。

リウイ、ディーノ、マウラ。彼らがこの場に揃ったのは全てクーナの意図したものです。政争に勝ち、外敵を排除する為に。


マウラは部族の未来だけを願い、アッジ族とは交流を深めていたと証言します。これでディーノの首は繋がりました。

そしてマウラはグリフ族がリザードマンの脅威に晒されているので助けて欲しいとクーナに懇願します。

これにはディーノや南の部族の族長達も頷きます。彼らとて犠牲が出ているから、何とかしたいのです。


そこでクーナは用意していた言葉を出します。幸いなことに軍がいるのでリザードマンを討とう、とね。

何が幸いか、全ては自分の意図した事ではないですか。微妙に白々しいので事情を知っていると苦笑してしまいそうです(笑)

彼本人は戦は苦手なので、ブエロノ族の族長を将軍とし、ディーノに先陣を任せます。王位を狙った事はこれで不問にするんでしょう。

これでディーノの運命も決まったのです。彼はクーナに恭順を誓い、今後はミラルゴの将軍として外敵と戦う事になるでしょう。

王位につかなくても、国を守る事は出来るのです。適材適所と言うか何と言うか、クーナの勝ちですね。これにて一件落着(笑)


グリフ族ですが、クーナはミラルゴ連合への参加を認めました。守護神を捨てる事を暗に示しながらもね。

聡明なマウラは全てを悟り、それを誓いました。これでグリフ族もミラルゴ連合の一員ですね。当面はアッジ族が保護するでしょう。

シウバはディーノの所で族長になるために色々勉強する事になるそうです。まぁ良かったんじゃないですかね。

若者が望んでいた外との交流が生まれ、老人達の望んでいた伝承の実行も行われます。グリフ族は救われたと考えていいのかな。

しかし捨てるのは守護神だけでなく、マウラ自身もです。彼女は守護神と一緒にアトンと戦い、もう二度と帰らないつもりです。


クーナは反論を許さない為か、体調不良を理由にさっさと退場します。実に見事な退場でした。

今まで武勇に優れた王様は何人も見てきましたが、こういう智謀に優れた王様もいるんですね。

リウイとディーノはミラルゴ連合の先陣として、リザードマン達と戦闘をする事になるのでした。


第6章 湿原の戦い

★1〜3

紆余曲折を経てリウイ達は草原の民VS湿原の民の戦闘に参加する事になりました。

グリフ族の集落に置きっぱにしてきたミレル達も、グラランに案内されてようやく追いつきました。やはり気まずい思いをしたらしい(苦笑)

リウイとマウラが一緒に消えちゃったんですからね。誘惑誘拐という考え方もないでもない。リウイ……ついにロリータ魔神に……(違う)。

グリフ族にはミラルゴから正式な使者が送られて、どうやらそれを受け入れたそうです。長老達もようやく肩の荷が下りましたね。


あとは湿原の民ことリザードマンと戦うだけですが、気になる事が1つあります。それは粘皮の者と蛙人族(フロッグマン)の存在です。

ディーノは湿原の民の事を鱗の者粘皮の者と呼んでいました。前者は竜人族(リザードマン)でしょう。では後者は?

それが多分蛙人族ことフロッグマンとかいう連中なんでしょうね。でも蛙の亜人なんてフォーセリアにいたんですね。初耳です。

きっとリザードマンと同じように水中適応なんでしょうね。何となくマーシュマンのように水の精霊魔法とか使えそうです。


先陣は汚名返上に燃えるディーノ率いるアッジ族が勤めるわけですが、何かリウイと打ち解けたみたいですね。轡を並べて談笑してるし。

ディーノは前々からリザードマンと戦う事を視野に入れていたので、既に作戦を考えています。連中を草原まで引きずり出す作戦を。


まずアリダー河に毒を流します。何でも河漁師の間ではポピュラーな手なんだそうです。結構乱暴な気がしますけどね。

何となく公害が発生しそうですが、毒で浮いた魚を食っても大丈夫だとか。でも湿原の民にはかなり不快でしょうから、怒りを買って当然。

アッジ族は筏に乗って河を下り、リザードマンの版図に来た所で手筈通り毒を流します。これでリザードマンを怒らせます。

そして昼過ぎに吹く強風に乗ってリザードマン達を草原にまで誘き寄せるのです。結構危険な役目ですね。


しかも、リザードマンには水竜の成竜種がついています。どうやら幼竜の頃から大切に育てたのが脱皮したらしい。

この成竜が間違いなく一番の強敵になるでしょう。成竜だから魔法を使わないし知能も高くないのが救いですかね。

何故に知能が高くない成竜がリザードマンの命令に従っているのかはよく分かりません。竜の心でも掴んだかな。

成竜も育ての親には従うものなのか。リザードマン語を話す成竜相手なら普通に会話も通用するだろうし。


リウイ達はディーノ達アッジ族の戦士と共にアリダー河を筏で下り、予定通りリザードマン達との戦闘になります。

ザッパンザッポン筏に上がってくるリザードマンをもぐら叩き形式でシバキ倒しつつ、彼らは必死で戦いました。

アッジ族は歴とした騎馬民族なので、こういう水軍のような事には不慣れでしょうが、よく戦い抜きました。

筏の上だけは草原という心構えですね。精霊魔法を使えるのがいたら、筏の上に拘らなくても良かったかも知れませんね。


勿論ジーニ達も大活躍ですよ。メリッサは"バトルソング"を歌いながら癒し、ジーニは男勝りの体力で獅子奮迅の戦いぶりです。

どうやらミレルも前線で戦ってるようです。リウイはアイラを守りながら魔法で援護。ここ一番の戦いで魔術を使うのは珍しいかも。

ティカとも合流してピクニックよろしく休憩している様子には、アッジ族の男達は呆れ顔でした(笑)

なお、"バトルソング"は集中の魔法ではないので攻撃を受けても消えませんが、他の自発的行動を取ると維持出来ません

だから歌いながら"キュアー・ウーンズ"というのは本来出来ない筈なんですよね。回避したり抵抗したりする分には無問題だけど。


リウイはというと、クリシュに乗って水竜と戦闘をします。本当に目立ちますね、否が応でも目立つ運命なのかこいつは(笑)

水竜とクリシュですが、戦ってもやはりクリシュは勝てないでしょうね。レベル差にもよりますが、やはり分が悪いでしょう。

幼竜は1〜5レベル、成竜は6〜10レベルです。両者の間のレベル差は定かではありませんが、上手い具合に1レベル差という事はなさそうです。

水竜と火竜では火竜の方が攻撃的なのですが、やはり階級そのものが違うとちょっとね。クリシュはリウイを乗っけてるから全力では動けないし。


水竜といえば水竜エイブラを思い出しますが、14レベルの老竜であるエイブラの足元にも及ばない筈です。

でも体型はよく似ています。蛇のような長い胴体で一見シードラゴンに見えつつ、退化した翼があるのでやはり竜だと判別できます。

水竜は翼の問題から飛べないのが大きな特徴です。これを利用してクリシュは空を飛んで水竜を翻弄します(ガチでやったら殺られる)。

互いに竜なのでブレスは無意味なのですが、クリシュに乗ってるリウイはその限りではありません。直撃したらタダじゃ済まない。

驚いたのがその跳躍力でした。水族館のイルカよろしく水面からジャンプしたのです。水竜にはそんな攻撃方法もあったんですね。


アッジ族の戦士たちはよく戦っていましたが、圧倒的な数の差で苦戦していました。早く風が吹かないと最悪全滅です。

苛立ったリウイの「さっさと吹きやがれ!」という言葉に反応した訳ではないのでしょうが、その瞬間川上への突風が吹きました。

これでアッジ族はその役目を果たす事が出来たのです。怒りに燃えるリザードマン達と水竜は草原にまんまと誘き出されました。


そしてそこで、ミラルゴ連合軍の攻撃を受けて、彼らは大打撃を受けたのです。水竜も何と倒す事が出来ました!

竜の咆哮を考えると大軍で竜と戦うのは色々危険なんですが、何とかなったようですね。目標値は13〜17、何とかならなくもない。

いえね、戦士は勿論の事、馬の方が恐慌をきたしたら大混乱だと思いましてね。まして彼らは騎馬民族、暴れ馬の中戦うのは危険です。


これでミラルゴの脅威はあと北のロドーリルのみとなりました。それは次の「鋼の国の魔法戦士」に譲りますが。

これからはミラルゴを訪ねる際にグリフ族を絡める事が出来るんですね。ところで、守護神はともかく人形はどうしたのかな?

グリフ族とミラルゴはこれでもう大丈夫。いよいよ、巨人像を起動させる時が来ました。目指すは魔精霊のいる無の砂漠です!


第7章 伝承の彼方へ

★1

500年以上もの時を経て、ついに守護神こと巨人像が大地に立つ時が来ました!

上位古代語を唱える事でマウラと小巨人像は巨人像の中に瞬間移動し、"魔精霊"アトンのいる無の砂漠へと歩みます。


今まではそういう描写はありませんでしたが、後にマウラには古代語魔法の素養がある事が明らかになります。

巨人像を動かすのにソーサラー技能が必要なのか、あるいは起動のコマンドワードだけを覚えていればいいのかは謎です。

いずれにしろ、マウラはこの時点でソーサラー技能を持っているのは間違いなさそうです。後に分かる事ですがね。


無の砂漠は大陸中北部、ラムリアースの東、カーン砂漠のずっと北の辺りにあります。巨人像からは北西の方角です。

山脈部などを通る事は可能ですが、どうしても街道を横断しなければならない場所(堕ちた都市やミード湖の北部)もありますね。

街道名で言えば、「蛇の街道」「白刃の街道」「想い人の街道」といった辺りです。巨人像のあるイストンをグルリと囲んでますからね。


リウイ達も巨人像と一緒になるべく人里を避けて移動しますが、その巨大な体躯のせいでどうしても目立つので目撃者多数

巨人像が動いた。その衝撃的なニュースは大陸全土を駆け巡り、様々な憶測が囀られます。しかしその真相は分からず、伝説となるのです。

10年もすると、巨人像の存在そのものをよく知らない子供なんかもいるでしょう。そして昔そういうのがあったんだよ、と親に聞かされるのです。

多くの賢者や観光客の目玉だった巨人像は、こうして人前から永遠に姿を消しました。一部の関係者だけがその真実を知るだけです。


普段は極めてユルいリウイも、この圧倒的に迫力のある出来事には興奮しているようでした。

フォーセリアの住人にはこういうスーパーロボット的な光景は普通お目にかかれないしね。そりゃあ興奮しますよ。

ジーニなんて「わたしが、あの巨人像だったらと思うよ」だそうです。超巨大なジーニ…………カッコイイかも(笑)


大陸を北西方向へ移動する事20日、リウイ達は無の砂漠に辿りつきました。一切の精霊力が働かないという過酷な砂漠です。

「魔法王国カストゥール」の方で書いたように、かつてはこの無の砂漠の中心部の地下には精霊都市フリーオンが存在しました。

カストゥール最後の王都として大いに栄えた魔法都市ですが、アトンを生み出す事になって、王国は滅び去ることになります。

中心部に存在するザ・ホールは、魔力の塔の崩壊を引き金にファーラムの剣が暴走し、周囲の精霊力を全て消失させる大爆発が起きた跡です。

通常の砂漠は風と炎の精霊力が強い筈ですが、ここにはそれすらありません。一切の生物が住む事が出来ない、終末の地です。


リウイ達は砂漠をゆっくりと横断するアトンと遭遇しました。その姿は一見大地の精霊王ベヒモスに似ています。

しかしそれは見せかけに過ぎません。アトンは複合精霊。数種類の精霊力を内包する混沌にして「終末のもの」なのです。

元々アトンはベヒモスを素体に誕生した複合精霊なので、ベヒモスの姿を取っていても不思議ではありません。

その力はベヒモスに止まりません。炎を纏い、風を裂き、闇を生み、水の流れも変えます。そして、精霊力を食らって成長するのです。


アトンはこの精霊力の存在しない無の砂漠だからこそ、ゆっくりとしか移動できないのです。マナ・ライの予想でおよそ10年かかるとか。

アトンは砂漠を横断する際、大きく咆哮し、外部から届く僅かな精霊力から精霊界の扉をこじ開け、下位精霊を召喚します。

主に四大の精霊達です。シルフ、ウンディーネ、ノーム、サラマンダー。それらを無の砂漠に撃ち込んで道を作るのです。

いかなる精霊力も存在しなかった筈の砂漠に精霊力が注がれ、砂は粘性を帯びたりして変質し、アトンが渡れる道となるのです。

精霊使いがいたとしたら、その凄惨な光景はきっとトラウマになるでしょう。言わばアトンは、精霊達の死骸を足蹴にしているのです。


こうしてアトンはゆっくりと、しかし確実に外の世界へ向かっています。到達したら最後、精霊力を食らい尽くし、世界中が無の砂漠になるのです。

この無の砂漠は、世界の終末の光景なのです。アトンを倒せなかった時は、青ざめた馬の疾駆するが如く、終末の恐怖が世界を駆けるのです。

阿鼻叫喚、慟哭の声、終末からの救いを求める人達が巷に溢れるのです。そして、逃れうる者は皆無です。良い人も、悪い人も、等しく無力です。

こういう光景を見せられると、何としてもアトンを倒さねばならないという衝動に駆られます。それがもっと集まった時、奇跡が起きるかも。


さて、マウラは巨人像をここまで連れてきた事で伝承を遂げたと思っていいでしょう。伝承の結末は誰にも分かりはしない

ここで彼女が巨人像を放棄して逃げ出しても、誰も責める事は出来はしません。むしろ、そうしてくれた方が安心できる。

しかしマウラはあくまでも戦うつもりです。伝承に囚われているからではなく、アトンが終末をもたらすから、です。


かくして伝説の巨人像VS"魔精霊"アトンという超巨大対決が実現しました。最早人間が手を出せるレベルを超えてます。

アトンはまず、炎の精霊王エフリートへと変異しました。複合精霊なだけにベヒモス以外の姿を取る事も可能なのですね。

精霊王のレベルは一律18レベルなのですが、アトンの変異したエフリートが普通のエフリートと同じだという保障はありません。

ベヒモスやアトンとは違う、アトンのオリジナルの形態というのはないんでしょうかね。クリスタニアの魔神獣みたいにごちゃ混ぜはありかも。


「終末のもの」は現在の世界の定常の力の反動によって生まれるので、それと同等の力を持つ傾向があるようです。「終末の邪教(上)」参照。

恐らくは、生まれたばかりのアトンはベヒモスと同じぐらいの力を持っていたのでしょう。しかしアトンは精霊力を食って成長します。

一度倒されてるし、誕生時との力の差はどの程度なのかも分かりませんが、精霊王を上回る力を備える事も十分可能だと思われます。

下手したら竜王や神々の力をもってしても対抗できないような、異常な力を持つ事になるかもしれません。

一つの地方分の精霊力を食らっただけでもかなりのプラスになると思いますし、最終的にはレベルで換算すると3桁とかになってるかも。


アトンの力がどの程度なのかとドキドキと見守っていましたが、巨人像はエフリート=アトンを倒す事が出来ました

挿絵で見るととんでもなく巨大に見えるエフリート=アトンを倒すとは、巨人像のレベルも計り知れないものがあります。

エフリート=アトンは超巨大な火球などをぶつけてきましたが、金属製の巨人像には対して効果を上げられません。

"巨大なるもの(ギガンテス)"には対精霊の魔力があるのか、アトンの精霊力をザクザク削って?ました。その点では"鎮めるもの(サプレッサー)"と同じ仕様かもしれない。


リウイはクリシュに跨り、"番兵(センチネル)"を装備してアトンに一撃を加えてみました。

どうやらノーダメージのようです。レベル差がありすぎて防御点を貫けないといった感じですね。まぁ薄々予想は出来てましたが。

やはりファーラムの剣がなければ人間の適う相手ではありませんね。ソウルクラッシュでもダメージがいくか疑問です。

ベルドがソウルクラッシュを装備すると追加ダメージ18点で、おおよそ24点ほどいきます。多少は削れるかな?

しかしああいう超人はもう存在しないし、やはり生身の人間では限界がある。大人しくファーラムの剣を探した方が賢いでしょう。


一瞬勝ったかと思ったら、アトンは風の精霊王ジンに変異しました。炎では勝てないと悟って風になったんでしょうかね。知性がある?

続いてジン=アトンを相手に巨人像は奮戦しますが、強力な風の精霊力は容赦なく巨人像のボディを風化させていきます。

どうやら巨人像のボディは《品質保持》《形状保持》の魔力はかかってないようですね。流石にデカ過ぎて無理があったのかな?

いや、巨人像は長い事放置されていても無傷だったから、やはりかかっていたのかな。本編でも魔法防御を蝕むと書いてあったし。

つまりこの戦いは、魔剣がアトンの精霊力を削り、アトンが巨人像の魔力防御を削る戦いなのかもしれませんね。

精霊力で魔力を削るか……。そういえば「終末の邪教(上)」に出てきた「終末のもの」は魔力を対消滅させる事が出来ましたっけ。


やがて巨人像は風化が激しく、ついには動かなくなります。マウラも砂漠へ放り出されます。巨人像は、カストゥールは敗れたのです。

恐らくはヴァンは巨人像では勝てないと悟って、ファーラムの剣の方をアトン対策にしたのではないかと、リウイは推測します。

巨人像と"巨大なるもの(ギガンテス)"は無の砂漠に放置し、リウイ達は素早く撤退を始めました。ファーラムの剣が唯一の希望である状態に戻りました。

これでアトンの精霊力を削ったのなら復活を遅れさせる事が出来そうですが、放置した巨人像から精霊力を補給できたらどうなるんだろう?


リウイ「かならず、見つけだしてやるぜ!そしてここに帰ってきてやる。貴様を滅ぼすためにな

そんな感じで捨て台詞を残し、アイラの"テレポート"で全員オランへ帰還します。また恐ろしく精神力を消費することを(苦笑)

10レベルでも"テレポート"には4点使います。体積拡大なしで7人と1匹を飛ばすということは、合計で32点!!

実際にはクリシュの大きさを考えると、拡大は必要でしょうね。するともっと消費します。シャザーラから貰ってるとしても使いすぎ。


マウラは激しく憔悴してましたが、やがて介抱に向かって健康を取り戻します。そして魔術師ギルドへ入門します。

既に古代語魔法をある程度修めているので見習いをすっ飛ばしていきなり正魔術師です。導師はなんとマナ・ライ!

マナ・ライが言うにはラヴェルナに匹敵する素質の持ち主だそうです。それってかなり凄い事だと思いますよ。

マナ・ライの直弟子ということは、バレンとは兄弟弟子ですか。最後の弟子であるマウラは、きっとリウイ達の心強い戦力となるでしょう。


リウイはすっかり感情豊かになったマウラに別れを告げ、北の国に向かいます。侵略戦争を続けるロドーリルに、です。

驚いた事にプリシスがロドーリルの前に陥落したそうなのです。虐殺や略奪が行われ、プリシスはロドーリルに占領されています。

だから実際に赴くのは占領下にあるプリシスになるでしょう。ルキアルが去っても結構頑張りましたが、駄目だったか………。

ワールドガイドが十数年も前に出たので、実際に十数年戦いが続いていたかのような錯覚を覚えますね(笑)


マウラの再登場の予感を感じつつ、リウイ達は"鉄の女王"ジューネのいる占領下のプリシスを目指します。

物語は「鋼の国の魔法戦士」へ続きます!



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